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商品説明
33歳のシングルマザーは何故、幼い命を手にかけたのか? 秋田県で起きた「連続児童殺害」事件。畠山鈴香の死刑判決待望論に挑み、「破滅」と「殺意」の真相に迫り、何が裁かれたのかを究明するルポルタージュ。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
鎌田 慧
- 略歴
- 〈鎌田慧〉1938年青森県生まれ。早稲田大学文学部卒業。新聞、雑誌記者などを経て、フリーのルポライターとして独立。著書に「いま、逆攻のとき」「心を沈めて耳を澄ます」「ひとり起つ」など。
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紙の本
何が問われるべきであったのか
2009/09/12 11:21
12人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書のタイトルをよく見て欲しい。「殺意」が括弧書きとなっている。
橋の上で殺人が起こった時、本当に彼女に「殺意」は存在したのか。
しかし、少なくとも当時多くの人は、彼女の殺意を信じ込まされていた。
秋田県と青森県の県境、ブナ原生林の残る白神山地の麓に位置する小さな町で起こった小学生児童二人の殺害事件で、被害者の一人の母親である畠山静香が殺人容疑で逮捕された。その時、多くの人が、彼女に対し、冷酷非道な殺人犯というイメージを持たされた。
彼女について、男関係が乱れているとか、日頃から子供の面倒をネグレクトしていたとか、週刊誌のゴシップ記事やテレビのワイドショーに端を発した面白半分の虚言が飛び交った。そしてそれは、日常会話の中で話題にするにはまさにぴったりのネタであり、当事者でもない日本中の人々が、つくられた容疑者の人格像を、今度はすこし真面目顔で評論家よろしくこき下ろした。多くの同様の事件でもやはりみられるように。
しかし、あの時、橋の上に子供と並んで立った畠山静香に本当に「殺意」はあったのか。
この事件では、日本中に死刑待望論といった嫌な空気が蔓延した。死刑になって当たり前と多くの人が考えた。
裁判所が無期懲役の判決を下した際には、マスコミだけでなく一般の多くの人々が口々に異論を唱えた。
本書は、そんな日本中を覆った薄暗い空気にあえて著者が挑戦するものである。
畠山静香を死刑にすべきとの異様なまでの当時の空気を覚えている一人として、つくづく日本のマスコミの貧弱さを憂う。
何が彼女を児童殺害に向かわせたのかを問い詰めた真の報道が少しでもあったか。当時彼女の置かれた状況と精神状態を少しでも推し量ろうとした真のジャーナリズムが存在したか。
シングルマザーが一人で子供を育てることの苦労と精神に思いを致し、このような事件を二度と起こさないために、本当に改革していかなければならないものは何かを突き詰め、本当に闘うべき相手に対して歯向かった報道機関は、残念ながら全く無かった。
貧困なマスコミに取り囲まれ、そこから垂れ流される貧弱な情報を日夜かぶせ続けられるわれわれの精神的退廃も悲しいかなである。
下劣なものに踊らされる最低の操り人形と化した貧相な一般大衆。
罪の無い子供二人の命を考えると、そこまで罵りたくなる。