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紙の本
ベーコン (集英社文庫)
著者 井上 荒野 (著)
初めてだった。男から、そんな目で見つめられたのは—。家族を置いて家を出た母が死んだ。葬式で母の恋人と出会った「私」は、男の視線につき動かされ、彼の家へ通い始める。男が作っ...
ベーコン (集英社文庫)
ベーコン
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商品説明
初めてだった。男から、そんな目で見つめられたのは—。家族を置いて家を出た母が死んだ。葬式で母の恋人と出会った「私」は、男の視線につき動かされ、彼の家へ通い始める。男が作ったベーコンを食べたとき、強い衝動に襲われ…表題作ほか、人の心の奥にひそむ濃密な愛と官能を、食べることに絡めて描いた短編集。単行本未収録の「トナカイサラミ」を含む、胸にせまる10の物語。【「BOOK」データベースの商品解説】
おいしいものに隠された、男と女の秘密
不倫相手との情事の前の昼食、不在がちな父親が作った水餃子――言葉にできない色濃い想いを、食べることに絡めて鮮やかに描き出す短編集。単行本未掲載の一編も特別収録。(解説/小山鉄郎)
【商品解説】
収録作品一覧
ほうとう | 7−33 | |
---|---|---|
クリスマスのミートパイ | 35−66 | |
アイリッシュ・シチュー | 67−90 |
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紙の本
食べやすいけど、濃厚な味わい
2010/03/20 14:10
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
井上荒野さんを初めて知った一冊であり、大好きな一冊。
ハードカバーで購入後、一篇が追加された文庫版も購入。
今回また改めて読み返してみて、いいなぁと思った。
食べ物にまつわる10の短編は、空気のようなふんわりとした
軽さを含んでいて読みやすいのに、噛めば噛むほど味が出るスルメ的な
味わいがある。
時間が経ってからまた読むと
ああ、こういう気持ちも書いてあったのか、と
気づかされるような・・・・・・。
語り手の多様さに驚かされる。
井上荒野さんは、どうしてこんなに色んな人たちを
書き分けられるのだろう。
働き盛りの30代の男性の視点、10代の少女の視点、
初老の女性の視点、妻の視点、愛人の視点、少年の視点。
一話ごとにバラエティに富んでいるのはもちろん、
一話ずつのその中でもきちんとその世代の気持ちが
書き込まれているのだ。
特によかったと思うものを挙げる。
「クリスマスのミートパイ」
出社拒否症の男性が語り手。妻のあっけらかんとしたキャラクターが
秀逸。癒しとか救いというのはこういうところに存在するのかも。
「大人のカツサンド」
少女の目から見た、大人たちの複雑な事情。家では両親の離婚話が進められており、10歳の真夕は叔父さんに一日預けられるのだが。叔父さんのもどかしい優しさと、もう色々わかってしまっている真夕の心が巧みに綴られていく。
「煮こごり」
評価を高くつける人が多い作品。
31年間、愛人関係を結んだ男がある日虎に食い殺された。
という冒頭だけでもかなりぶっ飛んでいるが、
このタイトルと内容のリンクに唸らされる。
そして表題作の「ベーコン」もまたタイトルの秀逸さが光る。
亡き母の愛人である沖さんに、会いに行き続ける「私」の揺れる気持ち。
結婚を前にした娘の、母への複雑な感情が描かれる。
沖さんのつくるベーコンを、私が一緒に食べるシーン。
熟成された濃厚な肉の香りとかりかりした香ばしさが
文章の奥から広がってくるようだった。
空気のような軽さと先に書いたが、このふんわり感は、
自分のことなのにどこか他人ごとのようにさらっと描くところに
あるのかもしれない。
ハッピーエンドとはまた違う感じだけど、登場人物たちは微かな光を
当てられて明日へ向かっていく。
まずは、美味しいものを食べて考えようよ、と。
食事は血肉をつくるけれど、一緒に食事した人からは
精神的な栄養をもらっているのかもしれないな。
電子書籍
全部包み込んで飲み込んで
2017/08/02 22:48
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
荒野さんはとってもかくかくした文章を書く。何というか女性特有のまろみをもった文章ではない。それなのに、ふとした言葉や一文に優しさやかわいらしさが潜んでいる。だから読んでいてとても心地いい。食べ物と大人と子供と愛のカタチといろんな要素が合わさって、まざりあってこの本はできあがっている。その食べ物を作った者、食べた物、気持ちも一緒に飲み込んでいる。消化(昇華)させるために。水餃子やトナカイサラミやベーコンは、どうやって昇華していったのかな。血と肉になるだけじゃなく、人生を続けさせ包み込み許すのが食事なのかも。