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アルベルト・カンポ・バエザ光の建築
著者 アルベルト・カンポ・バエザ (著),三好 隆之 (訳)
一切の無駄がない、本質のみの空間をつくり出すスペインの建築家、アルベルト・カンポ・バエザの23作品を、スケッチ、図面、写真で紹介。インタビューとエッセイ「構築された概念/...
アルベルト・カンポ・バエザ光の建築
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商品説明
一切の無駄がない、本質のみの空間をつくり出すスペインの建築家、アルベルト・カンポ・バエザの23作品を、スケッチ、図面、写真で紹介。インタビューとエッセイ「構築された概念/建築について」も収録。【「TRC MARC」の商品解説】
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建築の普遍性を求めてーモダニズムを押し進めるアルベルト・カンポ・バエザの建築
2009/09/12 20:12
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:simplegg - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は,アルベルト・カンポ・バエザというスペインの建築家の作品集である.本書では,作品の写真,それについての本人の解説,また,彼自身の建築思想を文章にした論文,詩が収められている.写真だけでなく,文章も非常に読み応えがある.アルベルト・カンポ・バエザは,日本人にはあまり馴染みの無い建築家である.建築学科の友人も知らないと言っていた.ただ,本書の出版にあわせてか,先日までGALLERY・MAで展覧会が行われていた.
さて,カンポ・バエザは馴染みがないとしても,彼の作る建築に馴染みが無いかと言えば,そうじゃない.日本でも,作風の似た建築は多く存在する.例えば,SANNAの21世紀美術館を想像してもらえばいい.本書には,驚くほどにうり2つの作品が載っていた.
共通する特徴は,“ミニマル”である.ミニマルとは,必要最小限の作りでより豊かな空間をつくろうというコンセプトであるが,これはモダニズムの建築家ミース・ファンデル・ローエの“less is more”の通ずる.モダニズム建築は,非常に簡素であり,合理的な思想の下作られており,3大巨匠と呼ばれるル・コルビュジエ,フランク・ロイド・ライト,ミース・ファンデル・ローエによってその頂点を迎えた.
さて,建築界の歴史的には,モダニズムの後,ポストモダン(ロバート・ベンチューリは“less is bore”は有名)というモダニズに反発する思想が主流になった時期があったが,早くも揺れ戻しが起こっているようである.このような流れを“ネオ・モダニズム”と言うとその建築の友達が教えてくれたのだが,この本を読んで確かになと思うところがあった.
“ネオ・〜”という言葉は,ネオ・ダーウィニズムとか色々目にするが,どれも本家本元の思想をかなり過激に押し進めたという印象を受ける.すなわち,本家本元において信念だったその思想は,その後の“ネオ・〜”の人たちに取っては信仰に近い形で捉えられているのである.
実際,本書でカンポ・バエザは上記の3大巨匠について何度となく言及しており,ミースの言葉を意識した“more with less”という言葉を使っている.
僕自身が,本書を眺めていて持った感想は,「シンプルで奇麗だな〜」というものと,「日常的に使っている自分が想像できない建築だな」というもの.こういう建築を見るといつもそう思うし,そう思う人は少なくないんじゃないかと.特に,僕自身は,とて〜も所帯染みた部屋に住んでいるのでなおさらそう思うわけ.非の打ち所の無いその佇まいに,一歩後ずさりしてしまう.また,掲載されている写真にほとんど人が映っていないのも,その思いを増幅させる.ただ,建築の美しさを際立たせるためには,やたらめったら人が映っているもよくないのでしょうがいないとしよう.一度はこういうところに住んでその良さを体験したい.
最後に,カンポ・バエザの考え方について.先にも触れたように,彼はモダニズムの思想を受け継ぎ,それをさらに押し進めている.従って,建築というものの “普遍性・合理性”を常に深く追求し,思考を巡らせている.それが文章に強く押し出されている.それは,建築家がよく用いる哲学的な抽象概念ではなく,建築を具現化するという事に重きを置いた思考である.語る主な対象が,光・重力・材料・構造であることもそれを如実に表しているのではないか.モダニズムが好きな人も,嫌いな人も,彼の思想に触れることは一見の価値があると思う.建築を学ぶ人にはお勧めの一冊.
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