紙の本
歴史は「べき乗則」で動く 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫 NF <数理を愉しむ>シリーズ)
〔「歴史の方程式」(2003年刊)の改題〕【「TRC MARC」の商品解説】
歴史は「べき乗則」で動く 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫 NF <数理を愉しむ>シリーズ)
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
関連キーワード
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
「べき乗則」という人類の新しい知見です。
2010/01/23 00:43
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みどりのひかり - この投稿者のレビュー一覧を見る
話はオーストリア=ハンガリー帝国の皇子夫妻を乗せた車が曲がるべき角を間違って抜け道のない路地に入ったところから始まる。セルビア人テロリスト集団「ブラック・ハンド」の一員だったプリンツィプの目の前で車はとまり、皇子夫妻は殺されてしまう。これが第一次世界大戦のきっかけとなったと言われている。大激変が起こったのである。
次に登場するのは阪神淡路大震災である。大陸プレートの移動により岩石に歪みが生じ、ある日突然大地が引き裂かれる。大激変が起こったのである。
次はイエローストーン国立公園に発生した大火災である。1998年6月末の夏の嵐に伴う稲妻によって発生した山火事は、秋の初雪が降るまで燃え続け、150万エーカーを焼き尽くした。これまでに経験した史上最大の森林火災は2万5千エーカーだった。150万エーカーは大変な規模の山火事であった。国立公園に大激変が起こったのである。
次は株価である。1987年10月19日、ニューヨーク証券取引所の株価は大暴落をした。暗黒の月曜日ブラックマンデーと言われた大激変である。
で、著者はこれら大激変に裏にある共通したもの、非平衡物理学について語り始める。そこに出てくる言葉は、臨界状態、フラクタル、カオス、複雑系理論などである。
で、地震を例にとると、地震の規模(地震により解放されるエネルギー)と頻度の関係は、規模が2倍になれば頻度は4分の1になるという。物理学者はこのような関係を「べき乗則」と呼んでいる。そして、次にどれくらいの規模の地震が来るかは分からないと言う。べき乗則があることは判るが、次に来る地震がどの大きさなのかは全く判らないのである。
ということを著者は主張している。地震に限らず、戦争でも、山火事でも、株価でも、べき乗則にしたがっているが、次に来る変動が小さいものであるか大激変となるかは全く判らないのである。
こういった複雑系の理論が進んで来たのは比較的最近のことである。1975年にマンデルブロはフラクタルという概念を考案した。ここから、この“歴史は「べき乗則」で動く”という本につながっていく。ただ、この本には人間の歴史における臨界状態について具体的に書いていないのであるが、これを書いて、そこに考察を加えて欲しかった。
私は現在地球上にいる、あらゆる生物は人口増加の圧力の中で食糧不足により、増加を抑えられているという臨界状態にあると考えています。なぜなら、たとえば哺乳類でいうなら、平均して、1頭のメスが、1頭以上のメスを生めるメスを生まなかったらその生物の数は0に収束し、絶滅するわけです。それが絶滅せずに現在この地球上にその種が存在すると言うことは、その種は常に人口増という圧力を受けているわけで、したがってどの種の生きものも常に食糧不足に直面していると言っていいでしょう。どの生きものの種も飢えに直面しています。これも一つの臨界状態であるといえるでしょう。
地震や株価や山火事や戦争の背後に潜む法則をあぶりだしたのが、この“歴史は「べき乗則」で動く”という本です。人類史上はじめての知見です。まだまだ研究は発展するでしょうが是非とも読んで見てください。
フラクタルに関する本はいろいろ出ていますがあまりよく知りませんので特に紹介はできませんが、こちらの本を紹介いたします。フラクタル理解には役立ちませんが、真実の詩と、宇宙の深淵とが語られています。駄洒落もたくさん出て来て、はじめは、いい加減な本かなと思うかも知れませんがそうではありません。
他に次の本を紹介しておきましょう。
マックスウェルの悪魔
あなたはコンピュータを理解していますか?
資源物理学入門
痛快コンピュータ学
文学方面の本としては
浄土三部経_下_改訳_観無量寿経・阿弥陀経_岩波文庫
にあんちゃん_十歳の少女の日記
ハイジ_福音館古典童話シリーズ
わたしと小鳥とすずと_金子みすゞ童謡集
紙の本
名著だと、私は思う
2021/05/01 02:54
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:M.F - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジャンルとしては、複雑系科学という分野に属する話題を扱った本で有る。
本のタイトルの中に「歴史」という言葉が入っているし、また、本文中においても、歴史上の出来事につき言及をする場合が、しばしばあるのだが、基本的には、複雑系科学における成果をふまえた上で、いわば、その応用のひとつとしての歴史分析が試みられている、と、とらえるべきではないかと考える。
歴史とは関係の無い、山火事の事例が出てくることから考えても、(歴史ではなく)、複雑系科学の本であることは明らかだと思うので、タイトルから誤解をなさらないよう、一応、注意を喚起させていただく。
ただ、いずれにせよ、歴史をネタにした部分であれ、それ以外の部分についてであれ、私としては、非常に興味深い事例が多く、知的刺激を大いに受けた。
文庫化される以前のもとになった本は、それほど最近の出版ではないようだ。しかし、文・理系どちらかや世代を問わず、今後も、幅広い層に読み続けてゆかれるだけの価値がある本ではないかと考える。
複雑系科学に関する話題ということで、理系よりのテーマを扱っていることは確かなのだが、難しい数式を並べたてたような本ではないので、ぜひ文系の方にも読んでいただきたいと思うし、また、そのくらいの価値が有る本だと思う。
なお、複雑系そのものに関する前提知識は、無くても読めると、私は思っている。私自身は、この分野に関する前提知識がないままに読み通してしまった。
ただ、ある種の確率・統計的思考にはなじみが有ったほうが、読みやすい部分が有るかもしれないとは思う。
紙の本
べき乗則を歴史全般に敷衍した面白い科学読本です!
2020/01/23 17:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、数理についての興味深い知識が楽しく学べると大好評の「ハヤカワ文庫ノンフィクション<数理を愉しむ>」シリーズの一冊で、同書は、べき乗則を歴史全般に敷衍して語ったスリリングな科学読本です。「べき乗則」といっても耳にされたことがないかもしれません。これは、混沌たる世界を支配する、究極の物理法則とも言われ、砂山の雪崩、地震、絶滅などの自然現象はもちろん、株価変動や流行といった社会現象にも見出せる法則なのです。そこで、この法則を歴史全般に敷衍した場合にはどうなるのか?それが同書の中心です。なかなか面白く、興味深い一冊です!
紙の本
自然現象の不思議を体験
2017/05/09 20:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ごんちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
べき乗法則で自然現象がなりたつことが地震をとおしてわかりやすく理解できました。私たちの生活も日々の何気ない行動が決めているのかもしれないという思いがあり、何か社会に影響を及ぼすことが未来をかえることになるのではないか、と思いました。
紙の本
正規分布より対数正規分布の適応の広さ
2015/10/01 09:17
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現実に起きる事象の分布を素直にグラフにプロットしてみると大数の法則で釣鐘型の正規分布になると私たちは統計学で教わってきた。
ところが、案外そうではないものに出っくわす。小選挙区みたいにイエス、ノーだけの事象を積み上げると頂点が左よりで細見のシェイプ、しかも右にわずかに数値でダラダラ長く続く。
統計処理では対数をとって対数正規分布というのが所得分布で知られていたのである。そう貧乏ピークはすぐ出現して金持ちには少数ずつ長々出現えだる、平均値は分布の山に一致しない。わかりやすくない、処理しやすくない分布である。
著者は複雑系で扱ってるけどむしろ統計分布で素直に見てみると従来からあることなのである。因果関係というよりデータ処理により説明しえていたのである。
地震事例が日本であり出現確率と規模は反比例でべき乗分の一としている。マグニチュードも対数であり、以外ではない。
紙の本
解りやすい解説
2016/02/01 20:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:f5.6 - この投稿者のレビュー一覧を見る
実際に原著が書かれたのは2000年なので少し古い本ですが、べき乗からフラクタル、臨界状態に至るまでの説明が平易でたいへん解りやすく書かれています。数式も登場せず、純粋に読み物として楽しめます。後半の人間の歴史と物理学の融合の試みは、やや論理が飛躍気味ですが、他にない著者の独自見解のようです。
紙の本
法則
2012/01/22 15:28
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
「べき乗則」というのは、「規模が2倍になると発生する確率は4分の1になる」というもの。
ただし、"2"という数字は例として出しただけで、対象によって別々の値になる。
この法則は平たく言うと
「規模の大きい事が起きる確立は低い」
と、あまりに当たり前な事になってしまうが、非均衡状態、つまり不安定になる直前の状態にあるものの多くに成り立つ、というのがミソ。
例として挙げられているのは、
地震
森林火災
種の絶滅
株価の動き
など。
規模が大きいものと小さいものには原因の違いはなく、どこまで影響範囲が広がったかの違いのみ、だという。
不安になるのは「べき乗則」が成り立つものには「周期」「典型的な規模」といものは存在せず、予知ができない、という点。
特に地震に関しては間違っていて欲しいと思う。
ただ、逆に規模の小さいものがたくさん起きていれば、規模の大きなものになるほどの「力」は蓄えられない、とも言える。
「適度なガス抜き」というのは人間の集団に対してだけでなく、自然現象が相手でも効果的らしい。
ところで、原題は "Ubiquity"。辞書を開くと「偏在性」と載っている。
タイトルは”歴史は「べき乗則」で動く”だが、最後の章で、その「可能性」について論じれいるにすぎないので、日本語タイトルと内容に相違がある。
しかも一歩間違うと、トンデモ本として扱われかねないタイトルだ。もう少しいいタイトルは考えられなかったのだろうか。
SFの古典、アイザック・アシモフの「ファウンデーション」シリーズでは、人類の未来を予測する「心理歴史学」という理論が登場する。
読んでいるうちにその「心理歴史学」の話を連想したが、あとがきで触れられていた。
自分の独自の考えでなかった事が判明し、残念。