- カテゴリ:一般
- 発売日:2010/10/12
- 出版社: 河出書房新社
- サイズ:20cm/256,5p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-309-70965-9
紙の本
世界文学全集 3−01 わたしは英国王に給仕した
著者 池澤 夏樹 (個人編集),フラバル (著),阿部 賢一 (訳)
いつか百万長者になることを夢見て、ホテルの給仕見習いとなったチェコ人の若者。まず支配人に言われたことは、「おまえはここで、何も見ないし、何も耳にしない。しかし同時に、すべ...
世界文学全集 3−01 わたしは英国王に給仕した
紙の本 |
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商品説明
いつか百万長者になることを夢見て、ホテルの給仕見習いとなったチェコ人の若者。まず支配人に言われたことは、「おまえはここで、何も見ないし、何も耳にしない。しかし同時に、すべてを見て、すべてに耳を傾けなければならない」。この教えを守って、若者は給仕見習いから一人前の給仕人となり、富豪たちが集う高級ホテルを転々としつつ、夢に向かって突き進む。そしてついには、ナチスによって同国の人々が処刑されていくのを横目で見ながらドイツ人の女性と結婚。ナチスの施設で給仕をつとめ、妻がユダヤ人から奪った高額な切手で大金を手に入れる—中欧を代表する作家が、18日間で一気に書き上げたという、エロティックでユーモラス、シュールでグロテスク、ほとんどほら話のような奇想天外なエピソード満載の大傑作。映画『英国給仕人に乾杯!』原作。【「BOOK」データベースの商品解説】
百万長者になることを生涯の目標に掲げ、給仕見習いに始まり、高級ホテル、はてにはナチスの施設の給仕もつとめていくチェコ人の若者。戦後にはホテルを所有し、百万長者になったと思いきや…。滑稽でシュールな傑作。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
グレナディンのグラス | 5−44 | |
---|---|---|
ホテル・チホタ | 45−82 | |
わたしは英国王に給仕した | 83−130 |
著者紹介
池澤 夏樹
- 略歴
- 1914年ブルノ(現チェコ共和国)生まれ。63年短編集『水底の小さな真珠』でデビューし一躍チェコの代表的な作家となる。『厳重に監視された列車』『わたしは英国王に給仕した』『あまりにも騒がしい孤独』他。
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紙の本
「チャップリンですら思いつかないほどのグロテスクな喜劇」
2011/08/05 23:52
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代チェコ文学の代表的存在といわれるボフミル・フラバルの長篇。
チェコという「小さな国出身の小さな男」、名字も「子供」の意味があるヤン・ジーチェという駆け出しの給仕人を語り手に、彼の成り上がりと没落の物語を、マサリクの共和国、ドイツの保護領となったナチス時代、社会主義政権下のスターリニズム時代と移り変わる激動のチェコ現代史を背景に、人間味あるユーモアに満ちた悲喜劇のうちに語り倒す。
『あまりにも騒がしい孤独』に比べてオーソドックスなサクセスストーリー風の構成になっていて、非常にポピュラーな魅力のあるものになっている。なので、東欧文学に興味のある人にもない人にもお勧め。とにかく、良い小説。
ジーチェの語りは、とにかく水の流れるように多彩なエピソードをのべつ幕なしに喋り続け、とどまるところを知らない。「百万長者」になりたいと願うジーチェが、停車駅で釣り銭を渡すのにわざと手間取ることで急ぎの客からお釣りをせしめる小狡いやり方を学ぶ話とか、小銭を通路にばらまいて大人たちが必死に拾い合い喧嘩になる様を見て、人が何で動くのかを学ぶ話などが滑稽な調子でつづられていく。
しかし、序盤はともかく、英国王に給仕した給仕長の下で働いていたとき、あるきっかけでエチオピア皇帝に給仕を許されたことを同僚たちに妬まれることになる中盤あたりから、ジーチェは次第に孤立し始め、さらに物語は民族対立、戦争、社会主義体制を背景にした「グロテスクな喜劇」として展開していくことになる。
1930年代のチェコではズデーテン地方に住むドイツ人問題によってチェコ人とドイツ人に軋轢が広がっていた。このことからズデーテン・ドイツ人の保護を名目にナチスの侵攻を招き、チェコスロヴァキア共和国がドイツによって保護領とされ、解体される結果をもたらす。さらにこのことは戦後、ドイツ人の財産没収、追放政策に帰結する。
そんななかで出会ったドイツ人女性と関係を深めていくうちに、彼はホテルの同僚はもとより、プラハ中から追い出され、彼女と結婚してもなお、他のドイツ人たちからも等閑視されることになる。
「わたしはチェコの愛国者が処刑されている時に、ドイツ人女性の体育教師と結婚できるかどうかナチスの医者の検診を受け、ドイツ軍がソ連軍と戦火を交えている時に結婚式を挙げ、「旗を高くかかげよ、隊列を詰めろ」を歌い、国中の人が苦しんでいる時にドイツ軍や親衛隊に給仕するドイツのホテルや宿で快適に過ごしていた。」152-153
機知と機転によって成り上がる物語は、歴史の激動のなかで居場所をなくした男の悲喜劇の様相を呈することになる。そして終盤、そのドイツ人が追い出されたズデーテン地方で道路補修の奉仕活動に従事しながら、チェコとドイツに引き裂かれた彼は、狭間の存在として自らを捉えるようになっていく。
「もしここで死んで、噛まれずに残った骨が一部しかなくても、あの小さい丘の上にある墓地に埋葬してほしいと思っています。分水嶺の真上にわたしの棺を置き、時間が経って棺が崩れ落ちたあと、分解されたわたしの残余物が雨で流れ出し、世界の二つの方向に流れていくようにしてほしいんです。その水とともにわたしの身体の一部分が一方ではチェコの小川に流れていき、もう一方では国境の有刺鉄線を越えてドナウに続く小川に流れついてほしいんですよ。つまり死んだ後も世界市民であり続けたいんです。」225
成り上がり者の栄光と没落、という物語の背景に現代チェコの歴史と民族問題が流れているのがよくわかると思う。当初の滑稽でユーモアに満ちた軽快さは、どんどんと深刻でグロテスクともいえる展開をたどることになるのだけれど、ユーモアだろうと悲喜劇だろうとそこには人間味あふれる語りがあって、それが深い印象を残す。
小さな国―チェコの複雑な現代史を、小さな男の人生のなかにぎゅっと圧縮して見せ、対立と紛争を越える祈りを埋め込んだ小さな傑作。
紙の本
読み応えありました
2020/12/29 21:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:TK197309 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔観た映画がとても面白かったので購読しました。
読み応えある作品でした。
テンポよい冒頭、打って変わって最後の方の寂しい雰囲気がとても印象的でした。
またいつの日か再読したいです。
紙の本
自覚的誇大妄想狂の素晴らしい法螺話
2010/12/16 10:57
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在のチェコに生まれ、1997年の2月3日に病院の5階から鳩に餌をやろうとして82歳で転落死した作家が、ある夏の日に激しい日差しにさらされながら3週間で一気阿成に「アクアション・ライティンング」したカタリが本書です。
主人公はナチ侵攻中のプラハでホテルの給仕をする小男なのですが、読めばわかるように別に給仕でなくとも成立する話、いな小噺です。ホテル・パリの名物給仕長は英国王に給仕したのですが、この小説の主人公はエチオピア王に給仕する栄誉と勲章に輝く。
しかしだからどうってこたあないのです。チエコ人でありながら、憎き仇敵であるドイツ娘と愛しあって、その所産としてあらゆるものに釘を打つしか能のない障碍児ができたり、その絶世の美人が爆弾でぶっ飛ばされて首だけがどこかへ消えてなくなったりする。
この地球のどこか遠いところに隠れ住んで、犬や猫やヤギやポニーたちと仲良く暮らす主人公は、私のような田舎者には理想に近い生き方とうつります。
死んじまったら小さな丘に埋めて欲しい。時と共に地面に溶け込んだ残余物がほうぼうの小川から流れ流れて黒海と北海に流れ込み、その2つの流れがそれぞれ大西洋に注ぐようにしてもらいたい、とモノガタリの主人公に語らせる著者を私は嫌いではありません。
ある夏のひと月、サルバドール・ダリの「作られた記憶」とフロイトの「挟みつけられて動きがなくなっていく情動を、カタリりで流出させていく」精神で、頭に浮かぶ由なしこと、根も葉もないことどもを、これでもか、これでもかと描き続けていった誇大妄想狂の記録を、あなたにもぜひ手にとっていただきたいものです。
紙の本
フラバルのなかでもイチオシ
2014/08/03 09:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アトレーユ - この投稿者のレビュー一覧を見る
フラバルはどれもおもしろいが、初めて出会った作品がこれ。
人生、上がったり下がったりな小市民ぶりが身近でいとおしい。
しかし飲食の店内に入ってきただけで注文するものが本当にわかるものなのか?
なんでもかんでも「私は英国王に給仕したからな」という理由付けがイケてる!
小市民の人生において、空が青いのも、昨日から熱っぽいのも、靴下を履き違えたのも、全部「英国王に給仕した」のが理由らしい(笑)
少しおバカっぽくて愛らしい、ストーリーは明るくて楽しい、それでも行間に漂う、しんみり具合が、深さの陰として活きている。
紙の本
なかなか良い読後感。
2019/04/28 19:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ROVA - この投稿者のレビュー一覧を見る
お仕事小説的な感じで話は進み、ナチスの影が訪れると空気は変わり・・・
とはいえ全体をユーモアが包んでいるので何があろうと安心して読める作品。
何があろうと「エチオピア皇帝に給仕しましたから」ね。
猫好きとしては最終章の猫の描写がたまらなく愛おしいです。ちゃんとハッピーエンド。