紙の本
無銭優雅 (幻冬舎文庫)
著者 山田 詠美 (著)
友人と花屋を経営する斎藤慈雨と、古い日本家屋にひとり棲みの予備校講師・北村栄。お金をかけなくとも、二人で共有する時間は、“世にも簡素な天国”になる。「心中する前の心持ちで...
無銭優雅 (幻冬舎文庫)
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商品説明
友人と花屋を経営する斎藤慈雨と、古い日本家屋にひとり棲みの予備校講師・北村栄。お金をかけなくとも、二人で共有する時間は、“世にも簡素な天国”になる。「心中する前の心持ちで、つき合っていかないか?」。人生の後半に始めた恋に勤しむ二人は今、死という代物に、世界で一番身勝手な価値を与えている—。恋愛小説の新たなる金字塔。【「BOOK」データベースの商品解説】
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紙の本
山田詠美さんはどんどんページをめくりたくなる (ページターナー型) 作家である。
2009/11/29 20:59
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る
恋愛小説において恋愛している男女の年齢は重要です。『無銭優雅』の慈雨と栄は同い年の45歳。「みーみーと言って体をすり寄せて来るのは猫ではないのである。」の冒頭文を読み、山田詠美さんの言葉の感覚に魅せられてしまいました。そして彼女の恋愛小説は性欲(愛しあう場面)より食欲(食べる場面)のほうがより刺激的です。
この世で一番おいしい冷凍うどんを食べる場面では
「栄くん、ちゃんと玉子あやしてる?」
「え? つぶして汁に混ぜちゃったよ」
「あー、そういうの良くないって。固まりかけた白身を大事に丁寧に黄身を壊さないように揺すりながら、おつゆの中で一番おいしい形にするんだよ。そして、えいって、つぶして、うどんごと啜る」
立ちのぼる湯気で頬が上気してしまいました。
そしてもう一つ、恋愛小説になくてはならないもの、それは名脇役たちです。慈雨と花屋を共同経営している春美や花屋に毎日やって来て世間話をしていく石川さん。石川さんは80歳に手が届こうというおばあちゃんで仏様に飾る金盞花を一本買い、浮ついている慈雨をながめながら
「でもね、あなた、驕れる人も久しからず、という言葉を忘れては駄目よ」と言い、立ち去ります。石川さんは『風味絶佳』のグランマ・不二子のように凛としています。
そしてなんといってもページをめくるたびぞくぞくしたのは、堀辰雄『風立ちぬ』から壺井栄『あたたかい右の手』と21の恋愛小説の一節が織り込まれていることです。最後の作品『あたたかい右の手』の作品に出てくる主人公の少女の名前は慈雨。作者・栄と主人公・慈雨の恋愛小説の最後の文は、凄みさえ感じられました。
初めて口にする御馳走のように『無銭優雅』を美味しくいただきました。
紙の本
読む者の魂の自由度を測るような小説、山田詠美「無銭優雅」。
2011/11/03 18:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
これはまさに魂の自由度を測るような小説である。「心中する前の日
の心持ちでつき合って行かないか?」なんてバカ言って、慈雨と栄、42
歳同士のカップルが誕生する。この恋が自由奔放というか、高校生みた
な恋で、本当におかしい。人によっては「こんな42歳、ないでしょ?」
とか「ほ〜んとしょーもないやつら!」などと思うだろうが、人間、42
歳でもこんなもの。いや、50歳でも60歳でもこんなものなのだ。ただ、
常識だとか社会だとかなんだかんだの鎧を着てる人には、こういう「け
ーはくカップル」は理解し難い、というか、理解したくないのだ。とな
ると、この小説も「くだらねぇ〜〜」、ってことになるのかも。
さて、山田詠美、である。何もかもわかってるこの作者は、わかって
ることをいいことにはねる、はねる、はねる!魂もとんじゃってるし、
文章もとんじゃってる!調子に乗ってちょっと筆が滑ってるベタなとこ
ろもあるけれど、それもご愛嬌!!そして、ラスト。いろいろあってもや
っぱりこの2人は、42歳のバカップル(古い!)。なんともググッと
来る結末が待っている。舞台は西荻、そして、吉祥寺。恋は中央線でし
ろ!だって。魂がすっきりしゃっきりしてくるような快作。さて、あな
たの魂の自由度は??
紙の本
何処へもいけないふたり
2020/08/28 13:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分の生花店を切り盛りしながら、実家暮らしの慈雨は冴えないヒロインです。西荻窪より先には行けない栄との、静かな恋愛模様に癒されました。
紙の本
大人の恋愛
2020/03/19 10:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:chieeee - この投稿者のレビュー一覧を見る
40代の男女の恋愛。生活感タップリでロマンチックな雰囲気はないけど、言葉で愛情表現がストレートすぎて、その場にいたら赤面するだろうなぁ~と。ただ、ここまでストレートに愛情表現されると、そりゃ幸せでしょ~って人の恋愛を読ながらほのぼのとしてしまった。主人公が素直すぎて好きでした。最後少しプンスカするあたりも、理解出来ます。そうそうケンカの時も一生懸命追いかけてきて、ずーっと謝ってほしいもんなんです。それは年齢が増えても一緒なんですね。山田作品には珍しいほっこり系。