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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2009.10
- 出版社: ダイヤモンド社
- サイズ:20cm/334p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-478-01127-0
読割 50
紙の本
ピコラエヴィッチ紙幣 日本人が発行したルーブル札の謎
著者 熊谷 敬太郎 (著)
一九一九年秋、印刷工の黒川収蔵は紙幣印刷のため極東ロシア領の小都市尼港(ニコラエフスク・ナ・アムーレ)にある島田商会に派遣される。当地最大の日本企業・島田商会の発行する紙...
ピコラエヴィッチ紙幣 日本人が発行したルーブル札の謎
ピコラエヴィッチ紙幣
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商品説明
一九一九年秋、印刷工の黒川収蔵は紙幣印刷のため極東ロシア領の小都市尼港(ニコラエフスク・ナ・アムーレ)にある島田商会に派遣される。当地最大の日本企業・島田商会の発行する紙幣「ピコラエヴィッチ」は、下落の激しいルーブル札を補完し、町の産業を支える紙幣として当地の人々の生活に深く根付いていた。新紙幣の印刷は、美しいロシア娘オリガの協力で進められ、いつしか二人には恋愛感情が芽生えていった。ようやく紙幣の印刷が完成に近づいた頃、町には四〇〇〇人を超える赤軍過激派が押し寄せる。ロシア人有力者たちは次々に処刑され、やがてその魔手は日本人にも向けられる。外界からの援軍を得られない厳寒の尼港で、およそ七五〇人の日本軍民は悲壮な覚悟で徹底抗戦を試みる。果たして黒川とオリガの運命は?第2回城山三郎経済小説大賞受賞作。「通貨とは何か?」「経済とは何か?」を問う問題作。【「BOOK」データベースの商品解説】
【城山三郎経済小説大賞(第2回)】島田商会が極東ロシアの小都市で発行する紙幣「ピコラエヴィッチ」は、ロシア人社会に深く浸透していた。しかし、鮭鱒漁の不漁と共産革命の嵐が、大きな悲劇へと発展し…。通貨とは何か、経済とは何かを問う歴史経済小説。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
熊谷 敬太郎
- 略歴
- 〈熊谷敬太郎〉昭和21年生まれ。東京都出身。学習院大学経済学部卒。(株)ジェーピーシーを設立(雑貨の製造輸入)、代表取締役。
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紙の本
町を救い、同時に火種を落としたピコラエヴィッチ
2009/10/31 12:28
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
1919年、アムール河口のニコライエフスク港
(現在のニコライエフスク・ナ・アムーレ)には
日本の商社島田商会が発行したルーブル紙幣が
町の経済を担っていました。
この日本人によるルーブル紙幣をめぐる経済小説。
今でいえば、地域通貨のようなもので、
最初は島田商会の小切手でしたが、
ロシア革命によるルーブル紙幣の暴落がひどく、
その価値が不安定なため、島田商会できちんと
品物に変えてくれる紙幣に信頼を寄せていました。
そもそも、島田商会がこの町の物資のほとんどを扱っており、
衣食から防寒に至るまで、この紙幣を持っていれば
不自由することはありませんでした。
お金というのは、そのものに価値があるのではなく、
「信用」という価値なのだという経済原理を思い起こします。
現在の日本円とて「日本銀行券」です。
このルーブル紙幣、最初の印刷にはミスがあり、
本来「ピョートル・ニコラエエヴィッチ・シマダ商会」とするところを
頭文字をひとつ間違えたために
「ピコラエヴィッチ」となってしまいました。
町の人はロシア文字の誤りに揶揄を込めて、
この紙幣を「ピコラエヴィッチ」と呼びました。
これも今も海外で変な日本語の看板やメニューではお馴染み。
それがお札であり、人々の命をつなぐというのがなんとも……。
このルーブル紙幣そのものと、
この紙幣が広がる町への興味といった
題材だけでも好奇心をそそるのですが、
その翌年、この町は共産パルチザンによって、
軍人、民間人問わず日本人約700名が虐殺される
「尼港(にこう=ニコライエフスク)事件」が起きます。
その町に紙幣の印刷工としてやってくるのが
黒川という35歳の男。
一触即発の事態を前に、新しい紙幣を印刷しながら
黒川は読者の代わりに、この時代を考え続けます。
島田商会の果たした役割と、それに群がるロシア人の複雑な心境。
広くとらえれば、日清日露戦争後の日本の領土拡大のひずみ。
経済小説ですが、そこには人々の生き様があり、
民族の対立があり、また王政から共産主義への革命という
大きなパラダイムシフトもあります。
とても読み応えがあります。
類型と思われた黒川の美しいロシアの恋人オルガも、
この物語になくてはならない存在へと昇華します。