紙の本
過去と尊厳を死者に。生者に未来と思い出を。
2009/11/18 00:47
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ねねここねねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
【 embalming(エンバーミング)】
遺体に防腐、殺菌、修復などの処置を施し、生前の姿に近く戻す技術。
日本では「遺体衛生保全」と訳される。
ただ読み流すでなく、思わされること多いもので、一巻からずっと流れを追っている。
生と死にあること。
この物語はエンバーマ、間宮心十郎の成長と、遺体が伝える物語の…。
そして、彼を取り巻く人々のグリーフワークの話でもある。
エンバーミングは米国やカナダでは一般的になってもきているらしい。
多く葬儀にあたり、死んだ人々を修復し、生前の姿で世界を旅立たせる。
死者が抱えるものは多用だ。そしてそれぞれがオリジナルである。
エンバーマの彼は、故人の抱えるもの、彼らの生きた証を蘇らせる。
その者の夢。歩んだ過程。残し、守ってきた物事。
死しても尚、気懸りになってしまうだろう、生前、伝えられなかった想い。
人間は二度の死を迎えるのだという。
ひとつは生命が終わること。
もうひとつは、その者が忘れられてしまうこと。
己の人生を送った、死者の尊厳。残された者に尊かったものであればこそ、生者は死者に引き摺られ、導かれもしてしまうだろう。
その者への愛、敬いの心、不在で知ったものの大きさ。
残された者は死者に思いを馳せてしまう。
残されたものが旅立ったものを見送るとき、死者が送った人生に思いを這わせないわけにいかない。
己との関わり、そのもののこころ。
その手伝いをエンバーマ、間宮は過不足なく行う。
現在、時を止めてから、死者の時間に思いを這わせて。
遺体の安堵の微笑によって、残された者には思い出と未来を。
遺体である死者には、その者の確かな過去と、敬意を。
そして死者は、二度目の死に大きな猶予の期間を得る。
映し出される、死者の人生が人々に残る。
死者の過ごした生がある。そしてそのものを見つめてしまう。
死という行為が結局は生に繋がるという事実。
死して尚、残る故人の想いがある。
個人が死んで残された、遺族が抱える感情がある。
いのちが止まるその前に、彼らは確かに生きていた。
各々の生をそれぞれ生きてから、彼らは天へと召されていった。
届かない。いまは語らないものになってしまった、生きた人々の胸のうち。
それらのドラマが、胸を打つのだ。
送るため。その人らしくあるために。
その人らしくあったために。
時にそれぞれに葛藤のうちを見せながら、間宮は遺体を修復していく。
人生の、人々の尊厳を守るため。エンバーミングという行為によって、故人が世界に残していった、香り、面影を蘇らせる。
想いさえ彼は、届けて修復し続ける。
遺体を彼は修復し、人生を送ったものの死をその者らしく弔って、残された生者に前を見せ、存在を未来に生かしていく。
僕はそのことで涙さえ、やはり流れてしまうのだ。
血と肉と、思いが入った人の道程。
物語は秀逸な人間ドラマである。
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死を通しての人間模様を描きつつ
心十郎さんとアズキの両想いなのにうまくいかない恋愛模様を
一つの話にこんなに綺麗に織り交ぜられるのが本当にすごい。
今回はエンバーミングすることが全部いいことじゃないとか
エンバーミングしてもらった後の遺族の話とかあって
いつもとはまた違う見方が見れた気がします。
両者にライバル登場?
いずれにしてもまた数年でも待ちますヽ(`Д´)ノ
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昨日ツ○ヤから連絡があり、今日読み終わりました。うん。心十朗さん最高!もうちょっとアズキとの恋愛模様書いて欲しいかったかな。その他の話もとても面白かったです。この漫画を読むたびエンバーマーに憧れてしまいます。現実はそんなに綺麗事ではすまないとは思いますが;
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相変わらず読んでて痛いけど、考えさせられるエンバーミング。。
人の心に残るもの。人の心に残すもの。
悲しいやら、つらいやら、重いやら。
まとめて読むのはつらいけどやっぱり読んじゃう、そんな死化粧師。
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あれ、ずっと買ってるんだけどブクログに登録したの今回が初めてだった。
まだ全力で心十郎さんのばかあああ!ってなる前でした。けどバカだな(笑)
心十郎さんの気持ちは判るんですが、アズキの気持ちを考えるとじゃあ言うんじゃねーよばか^^ってなります(笑)
なんていうか、なくして気付いても遅いのにね(死別でないにしろ)心十郎さんそういうの、仕事ですんごい見てるだろうに……。
だからいい加減腹括れと!(笑)
アズキが「仕事にはかなわない」っていうのを見て、ああなるほどなあ~と思いました。そうか、とっかえひっかえって結局原因はアレだから、仕事を取ってるって意味もあるのか。
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久々の新刊わーいわーい!今回も美麗表紙ごちそうさまです
それにしてもシンジュローさんとアズキの恋の進展の亀っぷりが昔の少女漫画ばりでうずうずしちゃうわ
まさか詩織せんぱいの彼氏が再登場とは、ここらへんが作品のターニングポイントってことなんでしょうか?
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死んだ人のためなのか、残った人のためなのか…って難しいですね。アズキちゃんとのもどかしい恋もだけど、エンバーミングへの理解が進めばいいですね
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09年12月現在6巻まで発売中。最近には珍しく大判コミック。
エンバーマー、遺体に処理を施し生前の姿に近づけ遺族との最後の別れを贈る技術者の話です。
あまり知られていませんが、面白い!そして深い!
遺体を扱いますが、グロとかではなく。生きる人の心を描いた作品です。
エンバーミングをこんなに丁寧に、敬意を込めて描いている作品はこれが初めてなんじゃないだろうか。
恋愛要素もピュアで物凄くじれじれします。
女癖は悪いのに、好きな子に対しては純粋って可愛いなあ可愛いなあ!
絵は最低限のトーンと太めの線でぱっと見苦手意識を抱きましたが、読んでいくと気になりません。むしろデッサンは上手い。エロい身体を描くなあと。特に腰のライン…えろいよね…。
今後も楽しみな作品です。
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相変わらずの二人の関係がちょっと進・・・みそうであまりかわらず?
とりあえずまだまだもどかしいー!
という側面をもちながら、しっかり心に響く面もある。
やっぱりおもしろいなぁと思う。
死んだ人のためなのか、残った人のためなのか。
ケースバイケースだけど、うーん難しいですよね。
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エンバーミングについてはこの本で初めて知りました。
タイトルに引かれてかったけど、どっぷりはまってます。
心十朗さんかっこいいよ!!この巻は恋路との過去の話とかあずきとの関係とかでどきどき★毎回感動的です。
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続き出てたの知らなかった…!早く買いたいけど1冊1000円近くするので思い切らないので買えません。
→買った。とうとう…!!!相変わらずのもだもだしますな!
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購入。
発売直後に買ってたのをやっと読んだ。
アズキちゃんとの話があれだけしかないなんてひどい。
心十郎の仕事もアズキちゃんとの関係も分岐点に来てる感じなのか。
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さまざまな事情により 死人に 化粧+α を施す職業の主人公
複雑な過去と歪んだ?性格
職業に関する社会・周囲の理解
亡くなった方の生前のストーリー
なのなど
三原さんの作品は、
絵の綺麗さ 線の細かさ 丁寧さ だけでも見ていて飽きないが
伏線がいくつもあるけれど 先が読めない展開
登場人物それぞれの背景がしっかり描かれている
しかも、社会問題になっているような内容ばかりで
。。。正直 読んでいて 考えさせられ 重すぎるくらい
楽しく ああ面白かった!! 笑えた と読めるものでもないけど
こうゆう雰囲気たまらない
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エンバーミングという、日本には馴染みのない「遺体に修復・防腐剤・殺菌を施し生前に近い姿に戻す」というエンバーマーを主人公とした、三原ミツカズにしか描けない、生と死を考えさせられる心に残る作品。
超おすすめです!