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商品説明
君にとって「食べる」とはどんなこと? 世界の食文化を見て歩く著者が、カレーのひみつから遊牧民の食卓、ゲテモノの謎まで、食事の原点を手がかりに、現代の「食べる」を見つめなおす。「食の世界地図」付き。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
森枝 卓士
- 略歴
- 〈森枝卓士〉1955年熊本県生まれ。国際基督教大学卒業。フリーの写真家、ジャーナリスト。札幌大学などでアジア論、食文化論を講じる。著書に「図説世界100の市場を歩く」など。
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紙の本
食文化論の入門にうってつけ
2010/01/01 11:56
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:狸汁 - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙は、「包丁人味平」著者のビッグ錠さんのワイルドな漫画ですが、内容はとても分かりやすく食文化論を教えてくれるなかなかに硬派な本です。
「『食べる』とはどういうことなのだろう」「ヒトが食べるという行為は何なのだろう」。テーマは本質的なものです。テレビではグルメ番組があふれ、以前にまして人々の食への関心は高まっていると思います。しかし、あの店がおいしいとか、外国のどこそこの名物料理は何だというのは表層的なものでしかありません。それに対し、本書は食文化の原点にかえり、論考をめぐらせています。
著者の強みは、戦場カメラマンとしてスタートし、ジャーナリストとして世界各地の食文化を数多く経験してきたことです。とりわけアジアには造詣が深く、これまでにもアジアの食についての本をたくさん書いています。そうした積み重ねのなかから、大づかみに食の本質をとらえようとしています。
人類の生活スタイルは大きく4つに分かれます。それは狩猟採集、牧畜、農業、産業社会です。人類の発展段階ですが、現在も牧畜や農業を生業としている人々は多いので、遅れているとか遅れていないという単純なことではありません。いずれにせよ、食についてもその4つの間には大きな隔たりがあります。
著者はモンゴルの遊牧民やシベリア、アラブなど牧畜が行われてる地域の「嗜好の違い」に注目します。同じように牛乳や馬乳という材料を使っているのに、味が違う。それはなぜかというと、著者は「保存」のやり方が違うと気づきます。また宗教的なタブーも影響します。そこから導かれるのは、人間は「保存」する動物だということです。
本書でユニークなのは、地域ごとに異なる食文化が「交わる」ことによって、どのような変化がおきるかを考察している点です。人類史的事件といえば、コロンブスのアメリカ到着でしょう。アメリカ大陸原産のジャガイモや唐辛子が世界に広がっていきます。アジアでは米という植物もそれにあたります。米が広がっていくなかで、地域ごとの煮炊きの仕方がちがいます。食文化が交わることで何か起こるのか、著者はそれを世界地図を広げながら考えています。
人間の「雑食性」についての考察も興味深いです。狩猟採集時代は何でもたべなければ生存できなかったので人間は相当に雑食でした。しかし、農業で主食の確保が容易になり、産業社会で流通が発達するなかで、実は食は単一化・平準化し、かつての人類よりも食に多様性がなくなったのではないかということです。飽食の時代ですから、何でも食べられるとわれわれは思っていますが、意外と単調な食事をしているのではないかというのが著者の見立てです。
付録に世界地図の上の各地域の代表的料理の写真とビッグ錠さんのイラストが描かれた「冒険地図」があります。食文化論の入門書としては、とても楽しく、うってつけの一冊だと思います。