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商品説明
「今夜、どこに住みますか?」26歳、47カ国、2年の旅、ここに始まる。新たな才能による次世代ドキュメンタリー誕生!第七回開高健ノンフィクション賞受賞作。【「BOOK」データベースの商品解説】
【開高健ノンフィクション賞(第7回)】ヒマラヤ山系のささやき、東南アジア〜インドのカオス、東アフリカの鼓動…。47カ国、2年にわたる旅を、絶妙な距離感をともなった清新な方法で描く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
中村 安希
- 略歴
- 〈中村安希〉1979年京都府生まれ。カリフォルニア大学アーバイン校卒業。国内外にて写真展、講演会をする傍ら、世界各地の生活、食糧等を取材。「インパラの朝」で開高健ノンフィクション賞受賞。
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著者/著名人のレビュー
若い、新しい才能が出...
ジュンク堂
若い、新しい才能が出ました。
開高健ノンフィクション賞受賞作ですが、最近のノンフィクションは、受賞作だから
といって必ずしも売れる訳ではない、厳しい市場になってきました。
それでもこの才能は世に問われるべきと思える強い力を放っています。
26歳で、ユーラシア・アフリカ大陸へ長い旅に出た著者。危険地帯を抜け、「その地域に
生きる人たちの小さな声に耳を傾けること」で世界を渡っていく。
貫抜かれているのは、彼女独自の強さ。これを崔洋一は帯で「独特の傲慢な切れ味、嫌い
じゃない」、重松清は「いわば、啖呵を切りながら旅をしてきたのだ。その啖呵が小気味いい」
と評しています。
命の危険も伴うような数々の事件を切り抜けながら著者が発見した何かを、読んでみたいと
思わせる静謐な表紙もまた印象深く、長く置いていきたい本です。
紙の本
「私の耳には届くことのなかった小さな声の限りない広がりと、そこに示される意味の深遠さについて」
2011/06/30 14:51
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る
悠然としたインパラの目を見た瞬間、『インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日』の本を手に取っていました。
本書は中村安希さんの684日におよぶバックパッカーの記録です。
それはわたしの想像を超えた旅の記録でした。
安希さんは26才の女性であること、2006年から2年間に渡る長旅であったこと、その当時のユーラシアの世界情勢を知れば、本を読む前は無謀な旅のように思えました。
お金をかけない旅は、寝るところも決まっていない、移動手段はヒッチハイクか、より安い交通手段にするために現地の人と値段交渉することであり、強靭な精神力と肉体を持っていないと続けられません。
ユーラシア・アフリカ・ヨーロッパ大陸と47カ国をめぐり、安希さんは悲鳴を上げる肉体をなだめながら、生きることとはなにか、を学んでいくのです。
圧巻は第九章 サハラ北上 モーリタニア「トゥアレグの祈り」です。
安希さんと触れあった人々の声を真摯に受けとめて読みました。
一つは「貧困」のことです。貧困を語る前に今日を生きることに必死な人々がいること、貧困に潜んでいる怒りと欺瞞、貧困とはなにか、を少しなりとも知ることができました。
安希さん、わたしにも「私の耳には届くことのなかった小さな声」が届きました。
紙の本
ユーラシア・アフリカ大陸を疑似体験
2010/06/20 12:29
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のはら そらこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の中村安希さんが、2006年から2年間、ユーラシア・アフリカ大陸をひとりでまわった旅紀行。中国からはじめて東南アジア、中東、東アフリカ、南アフリカ、西アフリカをまわり、ヨーロッパにきてポルトガルで旅を終えている。文中の言葉(P202)をひろえば、予算は180万円。交通手段は電車、バス、トラックのほか、ヒッチハイクや徒歩。宿泊は宿泊施設のこともあれば、野宿のこともある。ボランティアをするための施設、孤児院に民家にしばらく滞在したりもする。現地の人、さまざまな旅人と密に関わり、彼女の感じたままが言葉となっていく。大自然や遺跡をめぐる物見三昧の観光旅行ではない。彼女の興味の対象は人間とその場所の空気、社会だ。
1つの国で1つ、ときに2つ、ある場所でのエピソードをとりあげて、事実を事実として淡々とつづっている。旅は長く、出来事はとぎれなくあるはずだが、エピソードとエピソードのあいだは、ポーンと飛んでいる。そうして、ひとつのエピソードをピックアップすることで、その土地の様子を凝縮して表し、読むものに強く印象づける。
はじまりの1話は、中国の立ち席の満員列車だ。「満員列車に詰め込まれた荷物と人の海は、吐き捨てられたツバや食べカスと入り混じって異様な悪臭を放っていた」(p19)とある。もうこれだけで、わたしは正直いって、生理的に読みたくないと思った。しかし、読み進めるうち次第に、そうした汚ないものへの描写に慣れ、気にならなくなった。事実を事実として書いているだけだ。
ちょうどそのころ本のなかでは、著者がタンザニアで、ハエが張り付いたご飯を、右手でつかんで自然に食べている自分に気づく。以前は現地の人の真似をしようとしても、どうしても手がスプーンに伸びていたのに(P176)。
著者の変化と、わたしの変化の一致が興味深かった。もちろん、この本を読んだからといって、わたしはハエの張り付いたご飯を食べることはできない。著者とはレベルがまったく違う。でも、わたしの中のなにかしらが変った。他国、他民族のの文化を受け入れるとはこういうことだと疑似体験した気がする。
著者の中村安希さんの目を通して、異国を知るなかで、特にはっとさせられ、今後自分の中で見極めていかなければないないと思ったのはふたつ。ひとつは、テロとイスラム教について。もうひとつは海外支援とボランティアについて。
わたしは自分の常識で物事を見る。それが通用するのは、自分が生きてきた狭い枠内だけのはずなのに、自分の枠をこえた場所でもその常識をふりかざしてきたのではないか。
中村安希さんは、アジア・アフリカに、たったひとりの自分をおき、その場所に生理的に受け入れた勇敢な女性だ。わたしたち全員が、彼女のような旅ができるはずはない。けれど、その紀行文を読むことで、いくらかでも、常識のわくを広げ、世界を公正に見る目ができる。
第56回青少年読書感想文全国コンクール高等学校の部の課題図書。感想文は書かなくても高校生はじめ若い方におすすめしたい。
紙の本
インシャーラ(神が決断を下されるだろう)
2010/11/07 15:42
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
インパラの朝 中村安希 集英社
旅先の場所がはっきりしない本です。作者が書中で書いていますが、国境とは先進国が勝手に引いた線なのです。現地の住民は、お隣は兄弟と表現します。国ではなく地域が隣り合わせになっているのです。この本は、作者が26歳から28歳までの2年間、ユーラシア大陸からアフリカ大陸を女ひとり、バックパッカーとして旅をした記録です。海外留学経験ありで、姉はネパールの寺院で働いている。そうした下地があったからこそできた旅でもあります。
わたしは、バックパッカーを好みません。20代であれば憧れたでしょう。しかし今は、世の中の現実を見てきた50代です。バックパッカーは勝手な行為です。作者はこの本の後半202ページで、そのことに気づきます。自由がない、お金もない、そんな貧しい国まで来て、貧しい人々をながめる旅行者たちは、現地の人間にとって、お金を奪ってもいい人間なのです。
多くのひとり旅の本では、旅の動機が冒頭で語られません。語られずに最後まで終わってしまいます。この本でも最初に紹介がありません。テーマが登場するのは、かなり後ろの部分です。作者のテーマは「貧富の差を目の当たりにすること」そして、人間にとって一番大事なことは「自由」であることです。「自由」とは、移動の自由です。旅であり、住む場所の選択でもあります。加えて、日本の国際貢献活動に関する批判があります。予算の消化、派遣数の確保、宣伝のために、現地の人たちが望まない援助を無理やり押し付けている。これに対する作者の怒りは正当であり、正義があります。何ができるのか、真実をつきとめたいという若さがみなぎっています。「援助」は現地住民の平衡感覚を狂わせる。学校が建っても裕福なこどもしか通えない。ねたみ、そねみ、嫉妬(しっと)、対立が始まり、やがて「援助」が原因で地域内紛争が始まる。日本人の性質に対する外国人の評価は低い。
作者が知ったのは、世界の国々に住む人たちは、お互いを知ろうとせず、マスメディア等でつくられたイメージで相手を判断する。おおいなる勘違いで世界が成り立っている。
作者の女の意地はすさまじい。激しい言動や殴り合い。女性とは思えない。それとも女性とはそういう生き物であるのか。その記述から続く226ページ付近の記述はすばらしい。その部分は不思議なしあわせ空間です。この本を読んで、ここまで読み続けてよかったと思わせてくれます。「不安」が「安心」に変わります。
気に入った言葉は、イスラム教徒が言った「インシャーラ(神が決断をくだされるだろう)」いい言葉です。そして人々は「時」を待つ。時間はかかっても最後に目的は達成される。