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商品説明
社会における「神話」の機能を、日本のサブカルチャーやネットカルチャーを素材にしつつ、伝統的な文学作品を織り交ぜて示した現代文化論。『ユリイカ』連載を全面的に書き直し単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
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著者/著名人のレビュー
大きな物語の時代が終...
ジュンク堂
大きな物語の時代が終わり、小さな神話の時代が始まった。
――レヴィ=ストロースから村上春樹を通り東方プロジェクトまで、
広範な資料を注ぎ込み新たなスタンダードを提示する、
「ゼロ年代批評最後の大物新人」の鮮烈なデビュー作。
文芸評論はようやく時代に追いついた。” (東浩紀)
現代日本には、唯一残った「リベラル民主主義」というイデオロギーから
弾かれるものを補完する“何か”の定義が置き去りにされている。
「すべてを自由な自己完成に任せる」、そこから弾かれたものを補うのは
―文学・文化ではないのか?それを見出すための足場が”神話”である、と
著者は考える。
「ここでやろうとしているのは、文化的な営みを全て情報処理のプロセスと
して見立てると、いったいどういう世界が浮かび上がってくるのかという
一種の実験である」(p.10 はじめに より)
ニコニコ動画、西尾維新からローティ、ジジェクまで。『恋空』、村上春樹からチャンドラーまで。
著者の実験は、読者を縦横無尽に引き回す。
なんとも恐ろしい、1981年生まれの新鋭だ。
【折々のHON 2010年3月25日の1冊】
紙の本
神話で解剖する
2010/08/10 17:20
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
神話とは神様の話じゃなくって、すべての表現行為の不変もしくは普遍的な土台や枠組みのようなもの。ぱっと思いつくのはギリシャ神話 (だったっけ) の『オイディプス王』からフロイトの提唱するエディプスコンプレックスが生まれたとか。『新世紀エヴァンゲリオン』も、この父親殺しでグルーピングされてしまう。
「神話素とは、一定の事前拘束を受けつつ、たえず差異化されていく記号のことである。それはさしあたり「料理の素材のようなもの」と言うとわかりやすい」
神話を成り立たせているのが、「神話素」なのか。
「ネットワーク化したサブカルチャーにおいては、神話素は知覚可能なデータとして、ひとびとの振る舞いを最低限、事前拘束する(データベース)。後は、その一定の拘束のなかで、キャラクターを逐次差異化していけばよい(リゾーム)。」
いわゆるゼロ年代の批評家に括られる作者は、ガンダムなどのアニメーションやライトノベルのみならず、村上春樹やルイス・キャロルまで「神話」という切口で解剖していく。その手捌きは鮮やか。
例えば、ぼくたちの村上春樹なら、こう。
「村上春樹の小説の世界は、私たちの生活に深く沈殿した寓話性の強い神話素と、グローバルに流布するマスプロダクツ(商品)の組み合わせによってできている」
なぜ村上春樹がグローバルスタンダードなのかの、答が明示されている。
「村上の描く暴力のイメージは、神話素を通じて物語が「侵食」されることとパラレルである。つまり、世界が暴力によって犯されることは、物語りがその夢(神話)によって犯されることと類比的なのだ。世界と物語は直接は似ていない。しかし、世界と物語は、その穴だらけの性質において似ている」
かなり鋭い。「事実は小説よりも奇なり」でもあるし、「小説は事実よりも奇なり」である。シンクロしているのだ。
「ホームズ型の古典的探偵とマーロウ型のハードボイルドの探偵の違い」についてもそうかと思わせられた。
「ハードボイルド小説は、多くの場合探偵の一人称で紡がれる。こちらでは、探偵がメタレベルに立つことはあり得ず、むしろその脆弱さが浮き彫りにされる。彼は金によって雇われ、事件に否応なく巻き込まれていく」
物語りは、モノ(ローグ)語りでもある。自分語り。松岡正剛を気取るなら、語りは騙りでもあると。作者の批評のものさしを使うと、レイモンド・チャンドラー-村上春樹-舞城王太郎と串刺し、またはタグ付けすることができる。