紙の本
さだめなのか、選択なのか
2011/02/23 15:03
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mikimaru - この投稿者のレビュー一覧を見る
アンソロジーものは、実は好きではない。テーマがおもしろそうでも、編者と好みが合わなければまるで味わいが異なる。読んでおもしろいと感じることより、物足りなさのほうが割合としては大きい。
この本との出会いは、ただビーケーワンで「開高健」と検索したら目の前に出てきたという、ただそれだけだった。そしてタイトルが中味をまったく連想させず、これはかえって面白いだろうと興味をいだいた。
そして読みはじめ、最初の小川洋子作品で「そうそう、この人(小川さん)は、こういう作風だよな」と思いつつページをめくり、四作目の山本周五郎「その木戸を通って」で、頭をぶん殴られるほど衝撃を受けた。驚きは作品内容に対してではなく、いままで知らなかったということに対してだ。
わたしのいだいてきた山本周五郎の像といえば、教科書に載るような(例:短編「鼓くらべ」)格調高い文章を書く人、それだけだった。そのほかはほとんど読んでいない。
それまでのこと何も覚えていないらしい若い女性が屋敷を訪ね、留守中の主を待った。そこに主の許嫁がやってきて、これは誰だという騒ぎになる。連絡を受けた主が確認すると、まったく覚えのない女性がいた。早々に追い出さねば世間体が悪いし破談にもなりかねないが、女性は身寄りがないらしい…。
終わり方が、よかった。こんな話を書く人だったんだと、まさに「開眼」の気分で、数日後に本屋に出かけて短編集を買った。
この本に、開高健と一緒にはいっていなかったら、一生気づかなかったかもしれない。あるいは本のタイトルがもっと違っていたら、興味を示さなかったかもしれない。
何気ない選択から新しい道を見つける。これが本書のテーマである分岐点を前にした選択の味わいなのかと、妙に感じ入ってしまった。
なお編者はあとがきの最後において、迷った末の選択であっても、長い年数ののち、どちらを選んでも同じだったかもしれないと思うことがあると書いている。わたしのこの本との出会いは真剣な迷いの末ではないが、ここで出会わなくても山本周五郎に開眼していたのかどうか。さだめなのか選択だったのかは、まだわからない。
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沢木耕太郎による日本文学の秀作選。どれもタイトルにあるように、「右か左か」という場面において人々が悩んだり、どきどきしたり、哀しんだりする様子を描いた作品。
私は特に、「その木戸を通って」、「人間椅子」、「天使が見たもの」が良かった。どれも全く異なる雰囲気だけれど、作品に引き込まれ、同じように迷ったり、どきどきさせられた。読み終わっていろんな意味でう~んとうなってしまった。
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きれいなオチのついた作品が並ぶ。
普段読まない人の作品も読めておもしろい。
作品の舞台となる時代も場所も様々。
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私は友人の本棚を眺めるのが好きだ。自分の知らない本が並んでいたり、自分自身は好きではない作家が並んでたり、とても興味深い。
この文庫本は沢木耕太郎が選んだ13編の短編をまとめたもので、まさに沢木耕太郎の本棚を少し眺めたような感じ。
人生は選択の連続だという思いは、割と日々感じている私としては、「右か、左か」というタイトルがついているだけでも、なかなかグッときた。
このあたりの話は、沢木耕太郎自身によるあとがきに触れられており、あとがきではそれぞれの話のあらすじが書かれているので、あらすじを最初に読んでしまう人もこの本に限っては読まずに、まずはそれぞれの小説を読んだほうが◎。
「風薫るウィーンの旅六日間」小川洋子
アルバイト代を貯めて、初めての海外旅行に来た女子学生と同室のおばさんの話。この設定で、愛と死の話で、泣けてしまうのに、とても温かい。
そういえば、近親者の死は悲しいのに、なんだか意外と笑ってしまうエピソードもあったなぁとふと思い出したりした。
「黄金の腕」阿佐田哲也(色川武大)
賭けマージャンの話だが、ただただすごい賭けが繰り広げられていて(?)、息をつめて読んでしまった。
「賽子無宿」藤沢周平
おじさん世代に絶大な人気を誇る(?)藤沢周平は興味がありながらも、実はまだ読んだことがなかったが、この話を読んで、人気の理由が分かった気がした。なんともまぁ脇役の女性が見事におじさんの心をつかむわけだ。同性から見ても魅力的なんだが(笑)。
「人間椅子」江戸川乱歩
前に読んだのは学生だった時か。その時は、得体の知れない気持ち悪さを感じたが、久しぶりに読んでみると、気持ち悪さはないではないが、やっぱりまた読んでみたい話だったという思いがした作品の気がした。
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どうもシリーズになっているようで、他の人の選集もでているらしい。
人生の分かれ道、選択をする時みないた事を扱っている短編を集めた選集。
短編だから読みやすい、さらに面白い。掘り出し物の短編もあった。他の人のも読んでみようと思う。
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沢木さんセレクトの短編集。
芥川龍之介『魔術』、阿佐田哲也『黄金の腕』、開高健『ロマネ・コンティ・1935年』、江戸川乱歩『人間椅子』、坂口安吾『散る日本』、村上春樹『レーダーホーゼン』がおもしろかった。やっぱりおれは、知らない世界を見せてくれるもの、とっぴなものが好き。あと、おれは世相を風刺したような小説がどうにも楽しめないことがわかった。
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沢木耕太郎氏による短編選定集。
テーマは表題の通り。人生における岐路・決断の瞬間を扱った作品をピックアップ(読んでいて、あまりテーマに沿ってもいなかった)
【目次】
-『風薫るウィーンの旅六日間』 小川洋子 ★★☆☆☆
-『魔術』 芥川龍之介 ★★★☆☆
-『黄金の腕』 阿佐田哲也 ★★★★★
-『その木戸を通って』 山本周五郎 ★★★★☆
-『プールサイド小景』 庄野潤三 ★★★★☆
-『寝台の舟』 吉行淳之介 ★★★☆☆
-『ロマネ・コンティ・一九三五年』 開高健 ★★★★☆
-『散る日本』 坂口安吾 ★★☆☆☆
-『ダウト』 向田邦子 ★★★★★
-『賽子無宿』 藤沢周平 ★★★★★
-『人間椅子』 江戸川乱歩 ★★★★☆
-『天使がみたもの』 阿部昭 ★★★★★
-『レーダーホーゼン』 村上春樹 (途中で匙)
好き嫌いはあれど、全体的に楽しめた。
今まで、読んだことのない作者の作品ばかりだったので、今後の興味の幅を広げる意味でもとてもよかった。
『黄金の腕』の緊張感、『プールサイド小景』に描かれたサラリーマンの姿、『ダウト』の人間の暗部、『天使がみたもの』の結末、『ロマネ・コンティ・一九三五年』の豊かな表現・描写、あたりが好きでした。
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表題だけ見て『テロルの決算』『危機の宰相』の続編かとおもって買ったら全然関係ない短編集でした、、
収録されてる短編が沢木耕太郎のスタイルにどう影響したのかについて、勝手に想像しながら読むという独特の楽しみ方ができました。
短編集の中で特に印象的だったのは坂口安吾の『散る日本』
棋士が将棋に殉ずる如く、政治家はわが政策に殉ずるべきもの。
仰るとおり。
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・風薫る
脳内の勘違いをユーモアで平和的に収束させていて、毒素がない。フィッツジェラルドの空港が舞台の短編と題材似てるがそれはなんていうか、人間の認識の途方のなさに絶望させられた印象で。まるで逆。
・魔術
可能性が見えていたら欲を断ち切るなんて至難の技。
・プールサイド小景
割と好き。崩れた時はどこかに原因があるってことで、修復と保持は時間と祈りじゃなんとも。
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一流の書き手は一流の読み手でもあるんだなと、改めて思う。
人生のターニングポイントをテーマとした短編小説を沢木耕太郎氏が選ぶと、こうなる。一読すると、なんでこれが「右か、左か」なのかと「?」がつく小説もちらほら。しかし、巻末の沢木解説で、こういう感じ方もあるのかと、やや納得。一つの短編で2度楽しめる、お得な小説集だ。
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人生における「選択」をテーマに、沢木耕太郎が選んだ13のお話。
といっても、そんな安易にテーマ括りされたアンソロというよりかは、沢木さんの本棚一部紹介!といった感じがします。芥川龍之介、小川洋子、村上春樹、開口健、山本周五郎・・・とジャンルは様々。
読み終わってから、「はて、今の話のどこに選択が・・・」と立ち止まって、あぁそうか、選択は何も派手な一念発起ものばかりではありませんよね。とにやりとすること多々。編者の力ってこういう風に発揮されるんだなぁ。
読んだことのない作家さんの話にも招待されるから、アンソロジーは好きです。編者を信じるしかないんだけれど。
私は阿部昭の作品を読んでみようと思いました、恥ずかしながら存じ上げなかった・・・。「天使が見たもの」には静かに衝撃を受けました。見事です。
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「決断」をキーワードにアラカルトな短篇集。わくわくする物語から、背筋が寒くなる物語まで、自分の人生が(何もしないを含めた)決断の連続だということ意識させられる。
今からこれから何をするか。これを書いている今も。。よし、出かけよう。
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沢木さんチョイスの純文学短篇集。子供の頃から僕の中でベスト小説である芥川の「魔術」が選ばれてるのが凄く嬉しい。好きな作家が好きな作品をオススメしてくれるって、一番幸せなことだったり。
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沢木耕太郎氏が選択した短篇集。
人生の中の選択をコンセプトに、年代を問わずチョイスした作品集。
読み方として間違えているかもしれないが、それぞれの作品を読了後、あとがきから沢木耕太郎氏が何を思いその作品を選んだのかチェックしながら読み進めた。
それぞれの作品とも読後にふっと考える作品が多かった。
ベストを上げるとすれば阿部昭氏の作品が、あとがきのコメントとともに考えさせる内容になっていた。
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文春文庫創刊35周年記念企画として、人気作家が選んだ「心に残る物語」シリーズの中の1冊。芥川龍之介、江戸川乱歩から、向田邦子、村上春樹まで、沢木耕太郎さんのセレクトということで、どれもさすがという作品揃い。こういう機会があると、普段あまり読まない昔の作家に触れることができるのもありがたい。13作からひとつ選べば、阿佐田哲也さんの「黄金の腕」かな。