紙の本
森林太郎がヒールで登場
2019/10/30 15:42
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投稿者:ニック - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻では主人公の兼寛が海軍で脚気撲滅に奮闘する姿に加え、慈恵病院、資生堂、生保業界など多岐に関わる活躍が描かれる。陸軍医の森林太郎がヒールとして登場する構図も面白い。
電子書籍
波瀾万丈の生涯
2017/01/03 14:07
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投稿者:ME - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治天皇が崩御されてから主人公の晩年にかけての記述が非常に興味深かった。エリートだからこそ叙勲の序列などを気にかけるのだと思った。
脚気は現在ではかかる人はほとんどいないが、海軍と陸軍の対立や誤った学説が信じられていたことなどを知ることができて勉強になった。
電子書籍
史伝として
2018/11/08 21:48
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
吉村昭らしい史実を淡々と記述した史伝的な本である。
皮肉なことにこの本の主人公である高木兼寛が対立した森鴎外が晩年に書いた渋江抽斎等の本に色合いが似てきているような気がする。
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既存の学説に依って立つ
これは新たな発見に至る常套的な手段だ。
ただし、どの学説を足がかりにするかの選択は、平明な視点でなされなくてはならない。
この本で取り上げる脚気予防に関する陸海軍の軋轢は、権威に盲従的に、あるいは組織の対面(という名の権威)を優先することがいかに愚かで、ときには多くの悲劇を生み出すかという教訓に満ちている。
学問は何のためか、研究は誰のためか、研究者はそれを忘れてはならない。
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明治時代に活躍した医師・高木兼寛を描いた小説。すごい面白くて、すらすら読めました。
今読んでも得られる物が多い作品だと思います。
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明治時代、脚気撲滅をはじめ日本の近代医学において尽力した医師高木兼寛の生涯。海軍での兵食改善にいたる経緯、当時のドイツ医学とイギリス医学の派閥などが興味深く描かれている。偉大な功績にもかかわらず国内で評価されず、家庭内の不幸も重なり、晩年は幸福ではなかった。
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明治期の軍隊での大きな問題であった脚気の対策予防に成功した高木兼寛の物語というか伝記である。宮崎の大工の子だが医師を志し、戊辰戦争に従軍したものの満足に医師の役目が果たせなかったことにショックを受け、さらに努力し海軍軍医トップに上り詰める。
この時期の人に見られる尋常ではない努力と客観的な洞察力で脚気という大きな問題を解決に導く。また、慈恵医大を創立し、看護婦の養成にも取り組んだ。それでも晩年は評価されなかったことで鬱屈していたようだが、現在でもまだまだ評価が不十分であろう。
それにしても、敵役の陸軍と東大医学閥と森鴎外の厭らしさは何だろう。今に至るもその残滓が感じられるのは、高木の業績があまり知られていないことにも現れていると思う。
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歴史が苦手でも平気です。
色んな事が書かれています。
勉強になります。
こんな本が読みたかった!と思える作品でした。
森鷗外のあたりは悶々しますねー
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著者による「あとがき」を読んで、この小説が出るまでは、主人公のことはあまり世の中に知られていなかったのかも知れないと思った。
こういう人物のことをきちんと掘り起こして描くというのが、吉村昭の小説の面白さだろう。
司馬遼太郎も面白いけれど、50歳代になって、吉村昭の小説が面白く感じるようになってきた。
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若い時期の高木兼寛が本人の才能、実直さと周囲の人間のサポートとを得て活躍の場を広げていく様を描いた上巻とは異なり、下巻では、明治期の海軍、陸軍を襲った脚気の惨禍に対する関わりを中心に、兼寛の事績や関連する森林太郎(森鴎外)などの人物との葛藤などが話の中心となっている。記録が多く残る近代の実在人物を描くと読者が求めるような魅力あるストーリーにはならないことは仕方ないが、やや記録文学の側面に偏り過ぎていて面白みに欠けたため下巻は5段階中3の評価に。
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複数巻の長編を平行に読破しよう月間消化期間。残してるのはあと2作くらいかな?
イギリス留学から帰ってきた高木兼寛。海軍の医師となり、最も直面すべき課題としての「脚気」の撲滅に向け、仮説を立て、食事療法によって現実に発症者を激減させるのだが…。
科学的な衝突が出てきて、俄然面白くなってきた下巻。個人的に最も面白いのが、森鴎外(林太郎)と東大が、科学的根拠をはっきり示した脚気の原因と療法について長年批判と黙殺を続け、何万人もの日本兵を見殺しにした悪役として描かれている所。北里柴三郎も同じ穴の狢。森鴎外が好きでないので。
現在の科学と違い、即日的に評価が広がらないことで、結局30年して退職しても、功績が認められないことや、海外での非常に高い評価が全く日本に伝わってこないという点がもどかしい。
途中に日清日露戦争や、明治天皇崩御他、様々な歴史的イベントが起こっていたり、その中で政府が陸軍(東大閥)寄りに偏っていく話も面白いのだが、やはり職業柄、研究に関した所を面白く読んでしまう。逆に人事だの戦艦の名前だの、他の人が注目しそうなところは流してます。
正しいことが、政治的に潰されてしまうという読み方もできようが、その中で陸軍と海軍で全く別の思考が出来るということが、この時代の魅力なのではないだろうか。
また、当時は「天皇は絶対であった」と教科書的には習うものの、天皇が何を選ぶのかは天皇次第であったり、天皇が高木の主張を納得して取り入れていても、政府や陸軍は東大のことしか聞かなかったりする。さらに、政府がどう言おうと現場からの意見が多ければ認められたりするわけで。
教訓としては
「歴史とは学校で習うとおりではない」
で締めさせていただきたい。
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下巻も一気に読了。
脚気対策に心血を注いだ話や、陸軍・森鴎外とのやり取りなど、日本医学の進歩とそこに至る困難の道のりが描かれていて特に読みごたえがありました!
現実に起こっている現象をつなぎ合わせて、仮説をもってエビデンスを立証する高木先生の手法は臨床研究そのものであり、私自身の仕事にも大変勉強になる一冊でした。
医学部を志す高校生とかに読んでほしいです。
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幼いころに 膝頭をポンと叩くことが流行った時期があった。
脚気=病気の図式は、あまりピンとこない。
脚気撲滅に尽力して下さった方がいたからこそと、感謝したい。
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2019年7月8日読了。
高木兼寛、江戸から明治にかけ重い病気であった「脚気」の治療法確立に人生をかけたと言ってもいい。
日清戦争、日露戦争と日本が勝利したが、その背景で陸軍では戦死者を上回るほどの脚気での死亡者が出ていたとは知らなかった。
また、イギリスで医療を学んだ高木は臨床医療を常としており、環境や症状と併せて原因を追求するより病状の回復と治療方法の確立を主としていた。
当時の海軍はイギリスを範としていたので、医療もイギリス医療が主となっていたが、日本は海軍以外はドイツ医学を範として、ドイツ医学が基本医療を主としており、あくまで原因追求と最近などの関心が高かった。
脚気の治療方法においては、高木が長期間の航海にで白米を食べた場合の罹患率が極めて高く、かつ海外では脚気の患者がいないため、白米を養殖に変えることを進め効果を出したが、陸軍では「皇国の軍隊が米を食べずに何を食べる!」と、太平洋戦争まで続く精神論を振りかざし、多数の死亡者を出したことは本書を読んで初めて知った。
また、その根源には陸軍軍医の森鷗外だったことはあまり知られてはいない。
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帰国後の活躍。下巻に入っても上り調子は続く。日本の風土病とされた脚気。治療法の追求。仮説。確信。戦艦訓練での実験。許されぬ失敗。結果を待つ。成功の知らせ。地位は揺るぎないものになるはず。しかし、そこに立ちはだかるものが。二度目の世界大戦まで続く陸軍という病。…精力的に働きながらもその晩年はどこか暗い。慈恵病院の設立・生命保険の創立・看護教育の充実。偉大な業績を上げながらも現代では高木兼寛という名を知る人は少ない。…多くの人が気づきながら公に正解が認められない。今もあるその構造。それは日本の風土病なのか。