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商品説明
天文学者がまじめに挑戦している地球外知的生命探査SETIについて、観測の中で得られた兆候も交えて紹介するほか、著者らが2009年11月に行った全国同時SETI観測実験のドキュメントも収録する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
鳴沢 真也
- 略歴
- 〈鳴沢真也〉1965年長野県生まれ。福島大学大学院修了。兵庫県立西はりま天文台主任研究員。全国同時SETI(地球外知的生命探査)観測実験のプロジェクトリーダーを務めた。
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紙の本
耳をすませば
2010/07/17 18:01
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
SETI(Search for Extra-terrestrial Intelligence)とは
「地球外知的生命体探査」のこと。
1960 年にコーネル大学の天文学者フランク・ドレイクが
ウェストバージニア州グリーンバンクのアメリカ国立電波
天文台で行った「オズマ計画」が SETIの最初である。
ちなみにフランク・ドレイクは「地球外文明の数を推定
する計算式」を提唱した人物でもあるので、そちらの方で
知っている人も多いと思う。
SETI は、これ以後、アメリカを中心に世界各国で実施され
ている。が、今に至るまで、地球外知的生命体からの信号
が観測されたという事実は確認されていない。
だが、すべての観測が空振りに終わったわけではない。
1977年、オハイオ州立大学の電波望遠鏡が、いて座の方向
から通常のノイズの30倍もの強さの信号を観測した。
(後にこれは「Wow! シグナル」と呼ばれることになる)
1985~1995 年の「メタ計画」(スピルバーグが出資)では、
いっかくじゅう座、うみへび座、カシオペヤ座、いて座に
5つの怪しい電波源が発見された。
(通称「ビッグファイブ」)
これらの信号は地球外生命体からの信号と認めるための
基準のほとんどをクリアしていたが、一つだけ、そして
最も重要な条件を欠いていた。
それは「再現可能性」
後に同じ方角にアンテナを向けても、信号は観測
されなかった。そのため、未だにこの信号の正体は
謎のままである。
SETI は外国で行われているだけではない。2009年11月に
日本全国の30 あまりの観測施設が同時に夜空の一点を
見つめた。
観測対象となった領域はカシオペヤ座付近。
メタ計画で2番目に強い信号が観測された領域である。
(「さざんか計画」と名づけられた)
この本は、「さざんか計画」のプロジェクトリーダー
の鳴沢真也氏(兵庫県立西はりま天文台・主任研究員)
による「さざんか計画」実現までの長い道のりを綴った
ものであり、SETI の歴史を解説したものであり、
鳴沢氏の半自伝でもある。
大規模なプロジェクトならではの様々なトラブル。
それによるプレッシャー。
最大の理解者であった同僚の突然の死。
古参の仲間との仲違い。
さらに追い討ちをかけるように、本番まであと数ヶ月と
いうところで、西はりま天文台のある街付近が豪雨に
より死者が出るほどの災害にあってしまう。
天文台自身や街の復興に明け暮れる日々。
被害の大きさに愕然としながらも、街の人の「星を
見たい」という一言に支えられる。
また、支援物資を持って、いち早く天文台に駆けつけて
きたのは、仲違いした仲間だった、というあたりは映画
も顔負けの展開である。
SETI の話を抜きにしても、十分、引き込まれてしまう。
このようにして、様々な苦難を乗り越えて実行された
「さざんか計画」
2日間のみの観測、ということもあり、有意な信号は
観測されなかった。
が、日本各地の多くの観測施設が連携して観測する、
という経験が得られたのは大きい。
今年は冒頭にふれた「オズマ計画」から50周年の記念
の年にあたる。
アメリカでの研究会の会合に鳴沢氏が招待されたことが
きっかけとなり、日米合同観測計画「ドロシー計画」が
発表された。
鳴沢氏自身は、さらにその後は、世界中の観測施設
とも合同で SETI を行いたい、と考えているらしい。
自分が生きているうちに「その日」が来ることは
あるだろうか。