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商品説明
仕事には全力の7割で取り組む、スタッフそれぞれの流れを大切にする、売りあげは「流れの分量」と捉える…。「個人」「部内」「会社」の効率を良くし、シゴト流れの詰まりを解消するコツを伝授する。チェックリスト付き。〔「シゴトの渋滞学」(新潮文庫 2013年刊)に改題〕【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
西成 活裕
- 略歴
- 〈西成活裕〉1967年東京生まれ。東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。同大学先端科学技術研究センター教授。専門は数理物理学、渋滞学。「渋滞学」で講談社科学出版賞などを受賞。
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紙の本
渋滞の研究=流れの研究
2010/04/13 02:24
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:simplegg - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は,「渋滞学」で有名な西成先生の著作であります.この本では,「渋滞の研究=流れの研究」と大きく捉え,シゴト上の流れの詰まりの解消に対して,渋滞学の知見を応用しています.中々ユニークなビジネス書と言えるのではないでしょうか.
さて,渋滞の解消を考える際には,いくつか重要な概念があります.1つは“効率性”であり,もう1つは“安定性”です(公平性という概念も重要ですが,ここでは省きます).
渋滞とは,様々な損失(eg. 経済損失,環境問題)を引き起こす元凶となる現象ですから,社会全体の交通費用が最小となる状態が実現するような対策を講じる事は自然でしょう.この指標となるのが,“効率性”です.
一方で,渋滞対策を講じたとして,実現する状態が安定的な状態なのか否かという点も非常に重要です.というのも,いくら効率的な状態が実現したとしても,その状態が不安定では,一瞬で他の状態へと移ってしまいます.この指標となるのが,“安定性”です.本書では,この安定という概念を中心にシゴトの渋滞を解消する策を提案しています.
より具体的に,車の渋滞とシゴト渋滞の関係を見てみます.
例えば,効率性のupを狙って分刻みのスケジュールをたてたとしましょう.このスケジュールを完璧にこなせるならば,その状態は最適です.しかし,会議が3分遅れ,その影響が後ろの全てのスケジュールに伝搬してまい,スケジュールをたてる前よりも却って状態が悪くなってしまうという状況も当然考えられます.
これは,実は車の渋滞の発生メカニズムと同じです.「分刻みのスケジュール=車間距離の短い車の列」に対応しており,「会議の遅れ=ある車のブレーキ」に対応しています.車間距離が十分であれば,踏まなくてもすむブレーキを,後続車が次々と踏む事によって渋滞が発生します.しかも,より後続車になればなるほど,強くブレーキを踏む傾向にあるので,渋滞が増幅していくのです.
こういう場合には,車間距離をあける,つまり,ちょっとした乱れ(摂動)を吸収できるようにすればいいのです(驚く事に,車間距離を十分あけている車が数台あるだけで,渋滞が大幅に解消されます).
本書には,このような応用例が多く提案されています.また,本書は単なるアナロジーを述べているのではなく,個人のシゴトの渋滞,部内のシゴトの渋滞,社内のシゴトの渋滞,各々の固有の状況を踏まえた上での応用になっていますので,説得力があります.
少し変わった視点からのビジネス書を求めている人,サイエンスが好きな人のどちらが読んでも新たな発見があってハッとできる本だと思います.個人的には,今更ながらに「継続は力なり」という言葉を噛み締めております.瞬間的な最大効率よりも,(安定的に)持続する事の力というのは実感しづらい分,難しいことではありますが.