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幻想的でふわふわとした女性的SF小説という感じ。
読みながら、いしいしんじさんの「みずうみ」を思い出しました。
生き物と水って、やっぱり深く同一なんだろうな。
理由は一切分からないけれど、
与えられた役割を受け入れて生きていこうとする者同士の結びつきが、
なぜかうらやましくも感じられたり。
出会うことの必然 を書いた物語でもあります。
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著者の繊細な五感が針のような鋭さで抽象する世界は、柔らかさ、静けさ、肌触り、香り、光などによって注意深く再構成された、決して辿り着けない、と同時に決して抜け出せない世界の安らぎと哀しみに満ちている。細切れのシーケンスが危うげに紡ぐ蜘蛛の糸のごとき命の連環を辿りながら、命や、その存在について考える。エンデの「鏡の中の鏡」にも通じる、ガラス箱のような物語。
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椅子の部屋、地下通路、砂の街、十五番目の水の部屋…閉ざされた奇妙な世界を行き来しながら、途絶えることのない感情のざわめきが、静かな輪唱のように、徐々に解き放たれていく―現代を生きる私たちの寓話。見えない力に強いられ、記憶を奪われた女性の数奇な運命。“甘い水”をめぐって、命とはなにかを痛切に描いた著者渾身の最新長篇小説。
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遠い遠いところのことが語られているような、それでいて近く近く我が身の内で起きていることを見せられているような、とても不思議な読み心地の一冊である。「命」というのはそれほど遠くて近く、大きくて小さく、人の思い通りにはならないものだ、ということなのかもしれない。梨木香歩さんの『沼地のある森を抜けて』とも通ずるなにかも感じられて、しんとした心地にさせられる。
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地下から湧き出る甘い透きとおった赤い水を飲むだけで,生き延びる。1日のうち光のある時間は,8時間と決められ,地上の人間から,水も光も操作されてる地下生活者者。1人が消えるとまた1人が現れる。次々に命と云うか人生が引き継がれてその都度,名が変わる。
36時間不眠で活動する市長は,サイボーグなのか?小さな島の最後の生き残りの1人は,身長50センチメートルほど,という奇妙な人物設定も,SFファンタジーのような不可思議な世界観を感じさせる。
この地球上で生きる,ありとあらゆるものたちの掛け替えのない命の尊厳が,伝わってくる爽やかな読後感だ。
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2010.08.30. 装丁が美しい。水色に、ひもりは赤。よくわからないふよふよとした話。東さんは、どこへ行こうとしている。
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不思議な余韻のまま読み終わった。
読んでいる間は無菌室を連想していた。
あるいは天国とはもしかしたらこんな場所なのか?
いや、天国というよりは死後の世界?
空間も部屋も人もみな白っぽい印象。
誰かの夢の中を漂っているような、変な気分の小説だった。
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不思議で、抽象的な話は、どこか不安を煽る。
物語全体を自分の中でどう解釈して、消化して良いのかがわからず、読み終わった後もどうにもすっきりしない。
著者がこういう話を書くのが、少し意外でもあった。
「瓶にヒビが入ったように、目から水が出てきた。
これは、なに。
誤作動だ。私、間違ってる。壊れている。変だ。どこから、変になっていたのだろう。私から流れ出る水が止まらない。ヒビ割れがひろがっていく。私の水がなくなっていく。シバシ、これはなに。説明してください。最初から最後まで説明してください。私が失ったものを教えてください。私からうばったものを返してください。いいえ、なにもしなくていいから、とにかくここに来てください。今すぐ来てください。来なさい。来い、今すぐ、来い。
来い。」
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ブックデザイン 服部一成 装画 渡邉良重
細いラインで構成された、タイトル文字も気になるが、なんといってもカバー、そして口絵(というか扉?)に描かれた、水でできた臓器のような、何とも不気味ででも清廉なイラストが、大きなインパクトだ。
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東さんの本はなんと言っても、装丁、配色、タイトルが好きです。ただ、読むと・・・うーんとなってしまう。私の苦手なファンタジーな世界なんですよねぇ。うーん・・・。
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ファンタジー、SF?・・・というジャンル分けは必要?。
私を不思議でもすごくリアルな世界に連れて行ってくれた。
装丁もいい。本を開くと「香り」がする。人工的で好きな香りではないけれど、「甘い水」の世界に誘う効果がある。
音そして香りという抽象的なもの意識のふかいところに触れながら寓話を愉しみ現実社会のカリカチャーに引き込まれてのめり込む。
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う〜ん…わからない。
どう解釈したらいいのか、さっぱりでした。
何だろう、この押し寄せてくる不安感。
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季刊真夜中で連載の途中を読んで気になったので読む。
光がさす時間も限られ住む所も決められ、記憶もなく、
ただ甘い水だけを飲んで生きていく人の話だったので、
なんだか途中だけ読むと意味がわからなくて・・。
甘い水、小さな人、個人としての名前でなく機能重視の
物質的名前を持つ存在の人、などが出てくる不思議な話。
物語がずっと続いている訳ではなく、地上?地下?天上?など
詳しく書かれていないけれど、場所は違うが同じような時間と
環境に住む人々の話が交互に書かれている。
夢物語のような話もあれば、現実っぽい話しもあって、
とにかく作者の世界に引き込まれる。
でもどの世界もが、すべてあいまいで、ちょっと読後感悪い。
結局本として何を伝えたかったのか、いまいちわからなかった。
いしいしんじさんの不思議な物語の繊細な女性版って感じかな。
でもいしいしんじさんの物語の方がはるかに秀逸かも。
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新境地というのだろうか? 表現の場が変わると、ここまで突き進むのかと思うような内容。作者の観念的な空想世界になかなか入り込めず、不可解なまま読み終えた。この頃、東さんは頭でっかちなわかりにくい小説を書くなあ。それともこちらの知能が低下しているのか?
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時空をこえて漂う不思議な不思議な味わいの話たち。
空白の部分は、自在に想像してつなげていく。
記憶、甘い水、ちいさい人たち、、、
新刊の『わたしのミトンさん』を先に読んでいたが、その順に読めて良かった。
あちらは現実が舞台だったので(不思議な設定ではあるけれど)
小川洋子のいくつかの作品を彷彿させる読後感。
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椅子の部屋、地下通路、砂の街、十五番目の水の部屋…閉ざされた奇妙な世界を行き来しながら、途絶えることのない感情のざわめきが、静かな輪唱のように、徐々に解き放たれていく―現代を生きる私たちの寓話。見えない力に強いられ、記憶を奪われた女性の数奇な運命。“甘い水”をめぐって、命とはなにかを痛切に描いた著者渾身の最新長篇小説(「BOOK」データベースより)
既読の本を返した後、何気なく返却本のコーナーを眺めていたらこの本が目に入りました。
ちょうど東さんの『私のミトンさん』を読み終わった後だったので、「あら、東さんの本だわー」と手にとってパラパラ読んでみたら、
わーーー、ミトンさん登場してるーーー!
どうやらこっちのほうが先に出版されていたようで。
順番は逆になったけれど、またミトンさんに会えてうれしいなぁ。
アカネやミキヒコおじさんの気持ちがちょっとわかったよ。
中身はちょっと不思議な物語。
ワタクシも一応〈お母さん〉なので、ソルとレミのお話が一等お気に入りでしたが、幾度も名前を変えてもグリンを求める、フランの姿にも惹かれるものがありました。
こちらにも、小さな人たちの歌が流れていたので覚書。
やわらかい土
躍るあしあと
にじみだす水
どこでも唄う
眠るゆびさき
ねじりあう布
夢なんて見ない
くびすじに塩
雲ばかり見て
果てのない底