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大番 上 (小学館文庫 昭和エンターテインメント叢書)
愛媛の貧しい農家に生まれた丑之助は、富豪の令嬢・可奈子に手渡した“ガリ版刷りラブ・レター”事件をきっかけに、十八歳で家を飛び出し東京へ向かう。昭和初期の日本橋、たまたま住...
大番 上 (小学館文庫 昭和エンターテインメント叢書)
大番 上
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商品説明
愛媛の貧しい農家に生まれた丑之助は、富豪の令嬢・可奈子に手渡した“ガリ版刷りラブ・レター”事件をきっかけに、十八歳で家を飛び出し東京へ向かう。昭和初期の日本橋、たまたま住み込んだ小さな株屋で小僧として働くうち、株の面白さに目覚めた丑之助は、独り立ちを決意、愛嬌のある性格と持ち前のカンで、相場師の道を突き進む!不恰好な体つきに強い田舎なまり。そのうえ金好きで女好き。だけど、どこか憎めない“ギューちゃん”が、カブト町を舞台に大活躍する、ど根性サクセス・ストーリー。書評家・北上次郎がオススメする名作シリーズ第二弾。【「BOOK」データベースの商品解説】
ギューちゃん復活!株屋が舞台の痛快小説!
愛媛の貧しい農家に生まれた丑之助は、富豪の令嬢・可奈子に手渡した“ガリ版刷りラブ・レター”事件をきっかけに、十八歳で家を飛び出し東京に向かう。昭和初期の日本橋、たまたま住み込んだ小さな株屋で小僧として働くうち、株の面白さに目覚めた丑之助は、独り立ちを決意、愛嬌のある性格と持ち前のカンので、相場師の道を突き進む!
不恰好な体つきに強い田舎なまり。そのうえ金好きで女好き。だけど、どこか憎めない“ギューちゃん”が、カブト町を舞台に大活躍する、ど根性サクセス・ストーリー。
書評家・北上次郎がオススメする名作シリーズ第二弾!【商品解説】
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愛媛の貧農に生まれた主人公・赤羽丑之助が、七転び八起きしながら株の相場師として名をあげていく、波瀾万丈の一代記。
2010/04/22 19:39
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
【大番】サイズの大きいもの(小学館 新選国語辞典第六版より)
本書は、愛媛の貧農に生まれた牛のような容貌と性格の主人公・赤羽丑之助が、昭和初期の東京カブト町を舞台に、株の相場師として名をあげていく、七転び八起き、波瀾万丈の一代記である。
この作品では、丑之助の生涯に密接な株の世界も描かれているが、株に興味のない人が苦痛に感じるものではない。
むしろ戦争や事件、政策などによって上下する株価を通して描かれる、激動する昭和初期の日本経済や国情、そしてそれに翻弄されながらも、丑之助の粘り強い七転び八起きの生涯が、深い印象を残す。
物語をより魅力的にしているのが、丑之助の株投機。
機を見るや買って買って買いまくり、儲けを買い足しに回して買い続け、大勝する姿は爽快。その分、負けるときも豪快。それでも起きあがり挑戦する七転び八起きの姿は、快感さえ感じてしまう。
舞台もカブト町という狭い世界だけに留まらず、大きく負けて愛媛の故郷に引きこもり、金儲けの匂いがすれば大阪へ出てヤミ屋をやる、など窮屈な印象を与えない。
丑之助の牛のような体躯と同様に、人生も『大番』なのだ。
このような濃厚な人生を堪能した後には、力強さに満ちた不屈の生涯が走馬燈のように甦り、感動と哀惜が入り交じった複雑な余韻が沸き起こる、魅力的な作品である。
主人公・赤羽丑之助は愛媛(南予)の貧農に生まれた。
丑之助は、十八才の時、町の名士のお嬢様・可奈子の美しさにのぼせてしまい、複製して持っていたガリ版ラブレターを渡してしまう。
侮られたと彼女の父や兄は激怒し、故郷を捨てるしかないと決意した丑之助。どうせなら出て行くならと、何の計画もないまま東京へ向かった。
丑之助は、日本橋のソバ屋で働く友人の兄を頼り、そこの主人から株屋太田屋を紹介され、小僧として働くことになる。
丑之助は学のなさに悩みながらも、株の師となる富士証券の木谷寛二との出会いや、持ち前のツキ、記憶力の良さから、やがて株の相場師としてメキメキ頭角を現していく。
この物語の主人公・赤羽丑之助は強烈な個性の持ち主である。
名が表すとおり容貌から性格まで牛のよう。短躯で横に広く、思い込んだらわき目もふらず突き進み、何度転んでも立ち上がる粘り強さに満ちている。
極めつけは、彼が、株の売り方でなく買い方で儲けるブル(bull, 牡牛)タイプであること。
勇敢ささえ感じられる彼の個性は良い面ばかりではない。良くも悪くも自分自身の欲に忠実な性格。
仏教の五欲である財欲・色欲・飲食欲・名欲・睡眠欲のうち、睡眠欲以外が彼の中に渦巻いている。
株で大金を手にすれば豪遊し、親身になって世話をした女性をおいて何人も女を囲い、態度が大きくなり見栄を張る。
人として問題ありである。
それでも彼を憎めないのは、可奈子お嬢様を何十年も女神のように崇拝する姿や、自分に素直な姿が、大きな子供を想像させるからだろう。
そして彼の行動を客観視して、失敗も冷静に解説する語り口のユーモラスさと、彼を「ギューちゃん」と呼んでサポートする株の師・木谷さん、親友の新どん、姉のような女房のようなおまきさんなどの存在が、丑之助を愛すべき人物に創りあげている。
本書は、『昭和エンターテインメント叢書』の選者であり解説者の北上次郎氏が、解説で述べているとおり、読む人によっては、株を通して日本経済を描いた作品とも、貧農から大金持ちになる丑之助を描いた「ど根性サクセスストーリー」とも読めるだろう。
また私が感じたように、激動する日本の経済や国情に翻弄されながらも、力強く立ち上がる丑之助の波瀾万丈一代記と、さまざまな読み方ができる作品である。
この作品の面白いところは、主人公の見方も人によって変わることだろう。
彼の危なっかしい行動にハラハラしながらも、大敗から粘り強く起きあがる姿を応援し、成功を喜ぶ、兄姉のような目線で丑之助を見守る人。
彼の大勝に喝采し、大敗に意気消沈し、赤手空拳から億の資産を持つに到った生涯に、爽快さを感じる丑之助と同視点の人。
私は、大敗しても凹まず粘り強く起きあがる姿に、力強い生命力を感じながらも、大金を儲けて豪遊する姿に「もう止めとけって!」とハラハラしながら読んだ。
ところで、本書を読み始める前に頭に入れておきたいのが、丑之助の生まれた時代と場所。
彼の幼少時代を描いた物語の始めには、明確な時と場所が描かれておらず(愛媛という言葉は作中一度も登場しない)、環境などが想像しづらい。
そこで物語を読み終え、彼の生まれた場所と時代をまとめてみた。
【場所】
愛媛県八幡浜市より南の架空の海沿いの村
作中に出てくる南予と八幡浜、現在の八幡浜市川上町白石に姫宮大神宮があることから推測。
※彼の故郷を示す、姫之宮市、鶴丸町、比江村、旧有島藩はインターネットで検索した限り見つからず、架空の地域らしい。
【時代】
明治四十二年生まれ。
十八才で東京入り。その一年後の昭和三年に、東京株式取引所創立50年祝賀会が催された。
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本書は、北上次郎選『昭和エンターテインメント叢書』第二弾。
第一弾は『ごろつき船』
電子書籍
立身出世か欲望か
2022/11/27 13:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:gonta - この投稿者のレビュー一覧を見る
田舎者のギューちゃんが上京して株の世界でのし上がるという痛快立身出世小説の体をとっているが、結局ギューちゃんは大きく損をしたり、初恋の女性とは結ばれなかったりとなかなかビターな読み応えがあった。
獅子文六の洒脱で軽快な文体が心地よく、ギューちゃんを取り巻く人間模様もからりとした筆致でいながらペーソスがある。