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浮き世離れした詩人のウィリーの問わず語りを聞かされているうちに人間の言葉イングルーシュを解するようになった犬ミスター・ボーンズ。ずっと一緒だったウィリーがいよいよもういけなくなり、恩師に会うために出かけた最後の旅も一緒に行きます。ウィリーが逝ってしまい残されたミスター・ボーンズがウィリーの居なくなってしまった未知の世界とどう向き合っていくのかという物語。特に犬好きでなくとも、独特の雰囲気で面白かったです。
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犬の物語。犬の視点を通してお話が進んでいきます。過度な誇張も装飾もなく、しっかりと犬目線。ポール・オースターの物語を読んでいる時は、いい意味でテンションが下がります。静かにテンションが下がったまま読み進んで、読み終わった時に、すーっとするわけでもなく、静かに心の中にしみこむように残ります。
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犬好きにはたまらない一冊。
犬が好きじゃない人は、人生損してると思うなぁ。
人に犬が、犬には人が、必要なんだよと思った。
どうしようも無い自称詩人の浮浪者ウィリーと、雑種犬のミスター・ボーンズ。
ウィリーは物語の前半で死んでしまい、ミスター・ボーンズはさすらいの果て新しい飼主と出会うのだけれど…。
ミスター・ボーンズとウィリーの絆が、最後にかけてひたひたと胸に迫ってきた。
ラストは予想外のようで、不思議と腑に落ちる感じ。
私としては、ハッピーエンドだと思った。
もちろんフィクションだけれど、ミスター・ボーンズを通して語られる、人生のままならさやほろ苦さが優しく心に染みて、作家の人間と犬への暖かな眼差しを感じた気がした。
そんなに長くない物語なので、時間を置いて再読したい。
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ミスター・ボーンズは犬だ。だが彼は知っていた。主人のウィリーの命が長くないことを。彼と別れてしまえば自分は独りぼっちになることを。世界からウィリーを引き算したら、なにが残るというのだろう?放浪の詩人を飼い主に持つ犬の視点から描かれる思い出の日々、捜し物の旅、新たな出会い、別れ。詩人の言う「ティンブクトゥ」とは何なのか?名手が紡ぐ、犬と飼い主の最高の物語。
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図書館の本
良くも悪くもポール・オースターの世界だなぁと思った作品。
犬から見た人間の生活、習慣が不思議な感じ。
ミスターボーンは幸せだったんだよね?
ディンブクトゥってどこから出てきた音なんだろ?
それだけが不思議なおしまいでした。
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数あるポール・オースターの名作の中でも、私が最も好きな作品の一つ。好きすぎると安易に語れない性分なのですが、ちょっと思うところあって、敢えて今更レビューしてみます。
頭のイカレた不遇の中年詩人に飼われる、なんでもない雑種犬ミスター・ボーンズ。
このミスター・ボーンズが物語の主人公です。犬が語り部となる寓話的作品ですが、ユーモラス且つ緻密に書かれているのでとてもリアル。
まずこの作品が素晴らしいのは、「犬かわいい」の話じゃないこと。いや、結果的に「犬かわいい」というのも間違ってないんだけど、主題はそこにはなく、主従関係にあるヒトと犬を描きながらも読後感として強く残るのは、愛、自由、創造、無常感といった、ヒト個人が一生で体験し得る最もミクロな「生きる意味」であり、ひいてはオースターの個人的な社会風刺であるということ。
物語はミスター・ボーンズの目線で語られます。人格を与えられた動物をモチーフにした物語は、たいていメロドラマティックです。
それは普段もの語らぬ動物への幻想に加え、ヒトとは異なるライフスパンを持つ哀れな小動物への憐憫とか、所詮家畜や愛玩動物という生命体的ヒエラルキーといった(普段目を逸らしている)ヒトの驕りをつきつけられるとこと自体に感情を揺さぶるドラマ性があるからでしょう。でもこの物語は違う。
犬目線は、ある意味神目線なんです。メタ目線というか。いうなら漱石の「吾輩は猫である」の犬×アメリカ版というか。
ミスター・ボーンズの目で感性で言葉で語られるのは、ゆるぎない愛と信仰心(忠誠心?)を媒介した、人間性、人間社会の矛盾。
作品を堪能するにあたって差し障りの無いので言ってしまうと、飼い主の詩人はもちろん、世に何も残さないまま野垂れ死にするわけです。が、この物語の真価はその先にあります。自分の世界の中だけで自由に生きた詩人と、無償の愛と友情でつながれていたミスター・ボーンズ。その主人亡き後、ミスター・ボーンズはかつて主人とはまた違う、様々な孤独を抱えた人たちに出会います。物語は淡々と進み、新たな人々との出会いの中でミスター・ボーンズはかつての主人との愛と友情を深めながら最期の地、ティンブクトゥを目指します。その道中に、ほんとうの幸せのあり方を見出しながら・・・。
虚栄心や矛盾に満ちた現世に比べ、本当の自由と、ただの研ぎ澄まされた愛情だけが導く場所、ティンブクトゥ。気持ちいいほどピュアなんです。
ちなみに訳もウィットに飛んでいて素晴らしいので、ぜひpaperbackと読み比べてみるとユーモア溢れる言葉遊びが堪能できます!
※邦訳読んだら絶対、「え?これ原作どういう表現なの!?」って気になってしょうがないこと間違いなしw
"一人のドライバーが窓から顔をつき出して「ジンジャーエール」だか「死んじまえ」だかに聞こえる言葉をどな(った)。 "― 118ページ
訳者は柴田元幸さん。さすがです。
そういうわけで、派手なドラマやお涙頂戴のメロドラマにつかれた大人にぴったりの一冊です。
ふわあああ。わたしもティンブクトゥに、行きたい。
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「世界を、最初に見たときよりもっといい場所にして去ること」を夢想する詩人家・ウィリー。
世界に見捨てられた彼を愛した、むさ苦しい犬ミスター・ボーンの視点から描かれた人間の世界。
ウィリーが求めた来世「ティンブクトゥ」を、犬もまた、探しはじめる。
「求められていると感じるだけでは犬の幸福は成り立たない。自分は欠かせないという気持ちが必要なのだ。」
ミスターボーンと一緒にハラハラしたりホッとしたり
映画を見ているような気分でした。
読後はすこし切ない。
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ミスターボーンズのそう簡単にはいかない冒険にやきもきしながらも、飼い主との心の通った素敵なやりとりと、犬が飼い主のために、なりふり構わず頑張る姿にさわやかな感動が残りました。
読んでいる間ずっと数年前に17歳で亡くなった犬を思い出さずにはいられませんでした。彼も、犬として私のことをいろいろ見ていたし、思っていたんだろうと。彼との思い出を呼び戻してくれる素敵な一冊でした。
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ミスターボーンズが見事なまでに犬としてでなく堂々たる語り手。
だからこそ、ごくごく自然に入ってくる「犬」としての習性がとても愛らしい性質に思えてより一層ミスターボーンズを人/犬関係なく
魅力的な語り手として際立たせる。
特に心に残ったのは、二番目の飼い主である家の奥さん。それでも三人目妊娠するか・・・っていう妙にリアル。下の子は思う存分グレそう。
ミスターボーンズの目線でさまざまな登場人物の内情を語っていく筆舌は相変わらず素晴らしい。
先の読めない旅路があんな風に終わりを迎えるとは残酷だった。
行為の滑稽さと精神の高尚さと。まるで天秤にかかったようなラストシーンは圧巻。
哀しくも、ウィリーの真髄を受け継いでいる。こんな素晴らしい事実。
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ミスター・ボーンズは、飼い主ウィーリーにとって唯一の友。話すことはできないが、人間の話・気持ちを理解できる犬。ウィーリーは昔から肺を患っていて、いよいよ死がそう遠くない状態にある。ウィリーとの最後の時、ウィリーとかつて過ごした日々、ウィーリーのいないこれからの日々が、ミスター・ボーンズの”人間的”視点で語られていく。
幸せって何だろうな、生きるってなんだろうなということを違った視点で考えられる作品。もちろんストーリーも読み応えアリ。
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犬目線でのささやかな日々が描かれているが、ボーンズのウィリーへの忠誠が、優しく切ない。
願わくば、この忠実な従者が、トゥンブクトゥで、主人と幸せに過ごせます様に…
あー、実家のうちの子思い出した、なでなでしたいぞー‼
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犬目線で進む小説〜。下手したら一気に子どもものファンタジーの世界に飛んでしまうけど、そんなことにならない安定ポール・オースター作品☆
飼い主と犬の別れのシーン。最後にたった2行、お互いが触れ合うシーンがあるのだけれど、その2行に泣かされました。あまりの切なさに。。。
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犬の主観で書かれた,主人との交流.犬っていうのは,確かに喋れないんだけど,犬によっては本当にこれぐらい考えているのかもしれない.出来事および犬の思索を綴っているという意味で,ポールオースター版「我が輩は犬である」ともいえるけど,そう書いてしまうと,ラストがわかっちゃうか.とはいっても,決して犬の目線で人間の行動を風刺している訳ではない.いつものポール・オースターのように淡々と話は進んでいく.ドラマチックな展開が待っている訳でもない.でも退屈は決しないし,きっと心に残ります.
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実は7年くらい前に英語版を読んでいる。
ただ、当時の英語力はいまひとつで、
きちんと理解しきれていなかった(今も今ひとつなのは同じだが)。
それで日本語版も読まなくちゃなあ、と思いながら
7年の年月が経過してしまっていた。
ポール・オースターはデビュー作『幽霊たち』を読んで以来好きな作家の一人で、
以降作品が出ると直ぐにではないにしろ目を通す。
『幽霊たち』で受けた衝撃、斬新さへの衝撃、は
(ニューヨーク三部作の他二作を含め)以後感じることはなかったけれど、
全体として暖かい、どこかファンタジーを感じさせる物語は
読んでいてなんとなく幸せになる。
この作品もそんな中の一つ。
で、まあ、暖かいんだけど、ちょっと悲しいストーリーである。
カバーの後ろには「犬と飼い主の最高の物語」って書いてあるけど、
私には寂しさの方が上回って「最高の」とは言いづらい。
基本的に私が動物に弱いのもあるけども。
この作品で一番心に残ったのは、
ウィリーがミスター・ボーンズに語った言葉の一つ、
「善は善を生み、悪は悪を生む。
例えこっちの与える善に悪が返ってきても、
己が得る以上の善を与えるしかない」。
これは正に私が近年感じていたこと(ある一つの生き方の結論)だったので、
うまく言葉で表せないくらい、
胸に響くものがあった。
そして、この言葉を信じていたことが、
ミスター・ボーンズの救いであったと信じたい。
ああ、でも、
もっと自分勝手になっていいのよ、
とミスター・ボーンズには言ってあげたい。
切ない。
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ラテンアメリカの作品ばかり続けて読んだせいか、読み始めにいったんリセットする必要に迫られる。
オースターさんってば意外とフツーのライターとか思ってしまうんで(笑)
イヤ、フツーで合ってるよね。P.オースターは技巧派じゃない……ような?
長年連れ添ったボヘミアンな飼い主を亡くし、明日はどっち!?と途方に暮れながら、放浪の旅を続けるボヘミアン犬ミスター・ボーンズ。
犬の目線で語られた飼い主との珠玉の物語って、P.オースター犬じゃないしなぁw
オースター作品すべてを制覇したわけではないので、こういう言及は控えるべきかもしれないが、“意外”な印象。
ただ、映画『スモーク』や『ブルー・イン・ザ・フェイス』(原作未読)に登場する“はみ出しものたち”が織りなす淡々とした群像劇の犬と飼い主バージョン——群像とは対極のミニマムな関係性で語られる“はみ出しものたち”と考えると、そうでもないのかな?
単なるほのぼの動物感動モノにならないところが、やっぱ外文やね。