紙の本
米国金融エリートの戦闘記
2010/08/03 08:24
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:CAM - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻カバーには「ニューヨーク・タイムズのトップ記者が鋭く切り込むリーマンショックのセンセーショナルな裏側」、下巻カバーには、「次々と倒れる巨大金融機関! ポールソン、バーナンキ、ガイトナー、バフェット、そして巨万の富を稼ぐエリートCEOたちは何を考え、いかに行動したか?」とある。原題は“TOO BIG TO FAIL”である。
エンディング部分で引用されているセオドア・ルーズベルト大統領が1910年に行った演説の表現を借りれば、本書で描かれるのは、多くのプレイヤー達が、「競技場」において、判断の誤りによって何度も何度もあと一歩という結末に終ろうとも、顔を埃と汗と血にまみれさせながら果敢に闘った物語である。
著者が冒頭で語るとおり、この物語を作り出した人々は、経済の底知れぬ深淵をのぞきこんでいると信じていたし、実際に目にしていたのかもしれない。彼らがどれだけうまくやれたかはまだ決されていない。その判定は、後世が行うことになるだろう。
我が国の新聞などでも名前をなじんでいる人々からそうでない人々まで、多くのプレーヤーが登場する長編推理小説のような本書を読み通すためには多少の根気を要するが、この上下巻で800頁に近い記録を読み切れば、2008年に起きた事件についてかなりの背景知識を得ることができるだろう。そして、最近の米国金融業界の事情について多少なりとも理解しやすくなることは間違いないと思う。
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リーマン・ショックを膨大な取材をもとに再構築したノンフィクション。ウォール街の投資銀行のCEOたち、ポールソン財務長官、ガイトナーNY連銀総裁など政府関係者含めての言動が生々しく再現されており、飽きない。時々刻々と悪くなっていくリーマンの状況の中でのリーマンCEOの苦悩と他の投資銀行の冷静さ、したたかさが対照的。
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日本語版の下巻の帯には、「三菱UFJの出資が世界経済の完全崩壊を止める」とありました。実際、これは大きな要因だったとは思うのですが、その割には、日本や三菱UFJについての記述は、少なかったです。著者はあまり日本や日本の銀行については、知らないのかなという印象を持ちました。
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「世界が明日、終わろうとしている」NY市長ブルームバーグはそう呟いた。2008年09月14日──その日の夜遅く、リーマン・ブラザーズの取締役会が破産法申請を決定した。
それは前代未聞の発表だった。2007年08月にBNPパリバが傘下の3ファンドを一時的に凍結する、と発表したのだ。後に「パリバ・ショック」と呼ばれるこの発表がサブプライムローンの信用問題を表面化させ、それまで栄華を極めていた米国の5大投資銀行は一転、窮地に陥ることになる。この本は2008年09月15日のリーマン破綻、バンカメのメリルリンチ買収を頂点とした、金融危機の原点に迫るドキュメンタリ作品だ。
著者はNYTimesの有名記者で、200人への500時間に及ぶインタビューから本書を構成したという。そのため、この本の記載は非常に緻密な記録となっている(日本語版で780ページと分量もかなり多い)。2008年09月14日~15日の記載はまさに会話やメールの内容が分刻みで記載されており、下手なフィクションよりもずっと面白い。リーマンの窮地を憂慮していた米国政府は直接救済しないと明言してた一方で、各銀行のCEOを集めて救済の話合いはさせていたし、現実的な救済案が合意されていたことが明らかにされてる。その救済策は米国国外の関係者からの支持拒絶により、あえなく白紙に戻り、リーマンは破産法を申請することになる。誰が救済案を拒絶したかは読んでのお楽しみ。
リーマンをはじめとする投資銀行,AIG,FRB,財務省,NY連邦準備銀行、、、それぞれのトップが何を考え、誰と何を交渉したのか。特に新聞上に表れては消えていったリーマン救済相手とは何が話されていたのか?そもそも、何故、AIGや他の投資銀行は救済されて、リーマンだけ救済されなかったのか?当時は明らかにされていなかった舞台裏での人間ドラマを白日の下にさらしたこの本は、金融危機の記録として第一級の史料となるだろう。
金融業界にいる人や投資家はもちろんのこと、あの夏の日、乱高下する株価を心配げに眺めていたような人は、是非読んで欲しい。僕たちは歴史の目撃者だったのだから。
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全米ベストセラー Too Big To Fail が遂に全訳!
エコノミスト紙、2009年ベスト・ブックス
フィナンシャル・タイムズ紙、2009年ブックス・オブ・ザ・イヤー
アメリカの金融危機における、ベア・スターンズの破綻から、リーマン・ブラザーズの破綻、最終的な公的資金注入までの流れを詳細に追ったノンフィクション。取材が本当に徹底していると感心させられる。インサイダーと思われる情報も満載で、非常に興味深く読んだ。日本であれば関係者が口を閉ざしてしまうところだが、アメリカだとジャーナリズムへの対応が違うのだろうか。あるいは、著者の取材力なのだろうか。原注を見ると、政府関係の情報開示も多いようだ。
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リーマン・ブラザーズ倒産の危機に始まる、アメリカ金融界の動揺
その根っこはサブプライムローンからか。欲望渦巻く金融界についての上下巻。いやもう人が多すぎて覚えきれませんでした。株主やら投資家やらの不安が元で、相場が乱れて、会社や銀行が倒れていく様子が実にわかりやすい。
読んでいく中でちょっと驚いたのが、「○○氏と知己である」ということがかなり有力な武器になっていたところ。それも同僚だったとか、会議で食事をしたとか。まぁそもそも金融界のCEOクラスの人なんてそうそう人数もいないだろうし、狭い世界ではあるのだろう。
全く馴染みのないジャンルの本だけど、面白かった。
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リスクテイクバブルの最期を描いた書籍。
当時のウォール街・ワシントンでの様々な動きを、
細かい動きも含めてあらゆる角度からリサーチして、
そして、1つの小説にまとめあげているという点である。
リーマンショックに始まる金融危機を、
再度振り返りたい、勉強したいという方は、
この本を読んで、事実を把握してから、
他の本を読むのが良いと思う。
とにかく著者のリサーチ能力とストーリーの構築力には脱帽。
ただし、1つ注文を付けるとすれば、
登場人物が多すぎるのが難という点くらい。(著者にはどうしようもないが。)
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図書館で一番に予約して借りた本。
日本語訳されるのを待っていました。
リーマンショックの際に何があったのか、全てが分かる本。
何処の誰であろうとも、絶対に関係している話なので知っておく必要があると思います。
用語を調べたり、登場人物についてwikiったりして調べながら読み進めていくので、けっこう大変でした。
人物像や会社の色についても言及していたので、面白く読めました。
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リーマンショックという、世界でも最大級の難事に人はどう取り組んだのか、どんな考えや気持ちだったのか興味をそそられたので読了。
規制者は自国の金融システムの健全性を、各CEOは自社と株主・従業員を、政治家は庶民と自らを守ろうとそれぞれは合理的に行動しているが、異様な早さで進むカタストロフィーと錯綜する情報の中で、利害が衝突しあい、全体としてなかなか物事が進まず、さらに危機が加速していく、、あのような規模の出来事は資本主義・民主主義のシステムでは根源的に対処できないものなんじゃないかと考えさせられました。
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「それから可能性として、ゴールドマン・サックスの倒産に備える」
既に1年半前の出来事になってしまったリーマン・ショック。
過去の事とはいえ、今もその影響が残る世界において、”その時いったい何が起きていたのか”を改めて理解する意義は大きい。
「理解」という点を重視する上では、多数のインタビューを元に作成された本書は非常に貴重な存在。
一方で、「読み物」としての期待をすると、事実の羅列とめまぐるしく変わる主体(企業も人も)に疲弊してしまうかも。
とにかく、「市場の流れの力」にただただ圧倒される。
何か変だ、これはまずいかもしれない、と気付いてから時間はあれど流れを止める決め手は打てず。
「信用」そして「キャッシュ」に支えられた金融機関のもろさ、そしてその金融機関が世界の血流たるマネーの交通整理をしているということ。
常に世界に隠れている危険について改めて認識させられる。
想像以上にファルド悲惨。。。
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筆者は、金融危機の構造や原因を探るというより、
ヒューマンドラマの展開、
各自が何を言ったかという
ファクトの発掘(時に意味がないようなディテール描写も多い)に
徹しているので、
問題の全体構造や
各会社の財務がどうだったかというような
疑問には深く答えない。
それでも筆者の視点、
筆者の考える教訓が最後の章にまとめられていて、
それを読むと気分は暗くなる。
金融問題が起こった根本の原因は
まだ何も変わっていないのかもしれない。
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経済に詳しくなくとも、面白く読める本。
本にするためにかなりの時間を要したと思われる内容。
まるで物語を読むように、楽しく読める。
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サブプライムローンを利用した証券化バブルの崩壊が流動性危機をもたらし、リーマンブラザーズ倒産、AIG国有化に代表される米金融界の大変革をもたらした。
本書はそうした一連の企業再編・淘汰の貴重な記録である。リーマン、AIG、BAC、MS、JPM、GS等々のCEOや各行の幹部、バーナンキFRB議長、ポールソン財務長官といった政府関係者など、サブプライム危機のキーパーソンの言動が詳述され、密度の濃い内容ながらも文章の巧みさで一気に読ませる。
上巻は主にリーマンCEOのファルドと取締役会の軋轢、リーマンが窮地に追いやられる過程に力点が置かれている。
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2008年上半期、徐々に市場が悪化していったことを、思い出します。
それにしても、ポールソン、バーナンキ、ガイトナー、みんな良く働く。
土日、土日に、会議そして、決断、市場との対話、絶望的な日々にもめげず、働くことへの使命感、それは凄いものです。
AIGや、メリルが、そして、リーマンが絶望的な資金調達に追われる状況は、ある意味、巨大企業といえども、最後は、資金繰りという原理原則を、再確認させてくれます。 それを見守る、監督当局の緊迫感、痺れただろうな。
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金融危機の渦中にいた中心人物たちが何を思い、どのような行動を起こしたのか、かなり詳細に丁寧に描写されている。しかしやや冗長にすぎるというか、そもそも登場人物が多すぎて読んでいるだけでも混乱してしまうのが難点である。しかしこれは、それだけ多くの人物が企業が金融危機に関わっていたという何よりの証左であろう。ここまで根気強く取材活動を続けた著者には敬服する。