異星人の郷 下 （創元ＳＦ文庫）

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内容紹介を扉から転載します。
『1348年8月のある晩、ドイツ、シュヴァルツヴァルトの小さな村を異変が襲った。青白い光と瘴気。小屋が吹き飛び、火事が起きた。数日後、領主マンフレートの命で密猟者の探索に出かけたディートリヒ神父らは、森で異形の者たちと出会う。灰色の肌、鼻も耳もない顔、バッタを思わせる細長い体。悪魔か、それとも恐ろしい病か。だが、怪我を負い、壊れた乗り物を修理しようとするこのクレンク人たちと村人の間に、やがて奇妙な交流が生まれる。史実をふまえ濃密な描写で人知れず果たされたファースト・コンタクト。
領主は、クレンク人の特殊な力を利用しようとし、神父は彼らに神の存在を教える。遠い故郷に帰るという彼らの願いはかなうのか・・・。

現代のフィラデルフィアで、統計歴史学者のトムは、14世紀に忽然と消え、その後再定住されることのなかった村、アイフェルハイムの謎を追っていた。同居する宇宙物理学者のシャロンは高速変動理論を調べるうちに、ひとつの宇宙論の到達する。二人がついに見出した驚くべき光景とは・・・。

黒死病の影が忍び寄る中世の生活と、異なる文明を持つ者たちが相互に影響する日々を克明に描き、感動を呼ぶ重厚な傑作。』

ちゃんとしたSF小説を読んだのは久しぶりです。（ライトなのは時々読んでますが）
素晴らしかった！もう、大満足です。

中世ヨーロッパの人間と、おそらく昆虫から進化したと思われるクレンク人が翻訳機の助けを借り、意味がすれ違いながらそれぞれの価値観で相手を受け入れていく（あるいは拒否してしまう）過程に胸をうたれました。
主人公のディートリヒ神父は本当にキリスト教を信仰しているので、熱心にそれをクレンク人に語ります。クレンク人はキリストの復活や神の元での再会を信じるものもいれば、信じないものも。
異郷の地で次々に命を落としていくクレンク人のなかで、洗礼を受け入れる者たちも出てきます。ディートリヒ神父は、時に本当に彼らを救うことが出来たのか気持ちが揺らぎながらも、キリスト教の教義を語り続けるのです。
でも神父は精神のことだけでなく、実質的なことにも努力します。乗り物の修理に必要な物資の調達。領主との間に立っての両者の交渉。
ディートリヒ神父の過去はかなりぼかされているのですが、もしかして繰り返し出てくる「彼は死にました」という「彼」が実はそうなのでは？と思いました。

現代パートがあるため、最初からこの村は廃墟となりそのまま再建はされなかったことが読者に分かっています。
クレンク人たちの内部分裂と黒死病（ペスト）の流行が村に近づいてきていることが重なり、過去パートの行き着く先が見えてくることが辛くて・・・・。
そういう中で、現在パートで分かってくる過去のことはかなりゆがめられた断片的なことでしかないのです。過去を知っている私としては、本当はちょっと違うのよ、その人はその記録から考えられるような人じゃないのに・・・、などともどかしく思ってしまいました。

いろいろなことが書かれないまま物語は終わってしまいます。
でも、私の中で書かれなかった空白を妄想がどんどん埋めていくの。だって登場人物たちは皆「生きていた」んだもの。書かれなかった彼らはどうなったのか。あの人たちは、あのクレンク人たちは・・・・。
私の妄想スイッチは押されまくり。

切なく哀しい、そして感動的な小説でした。

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ファーストコンタクトものは好きなのですが、宗教にからめられるとどうにも苦手です。
しかもエピソードが抜けているのか、後付の説明がでてきたりして、読んでてあれっと思うことも度々。

でも、ラストの余韻は良いです。

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もしかすると原型となった現代パートだけの方が良かったのでは？
その方が、知的探求が掘り起こしたドラマ、というスタイルがより鮮明になり、インパクトが強くなったと思う。
中世パートは充分にドラマチックだが、同じく中世、ペストというテーマのドゥームズデイ・ブックの迫力には及ばない。

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　映画『第９地区』を見ててよかったと思った下巻。異星人とのコミュニケーションの場面が脳内補完できました。
　石工のグレーゴル・マウアーに注目していた自分を褒めてしまった下巻。中世と現代とが最後の最後でむすびついた泣かせる演出です。

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非常に素晴らしくて嬉しくなってしまう作品。
ファーストコンタクトもの、場所は中世ドイツの小村。
当時の政治、宗教、田舎の人達の暮らしぶりが、
ゆっくりとした時間軸で緻密に描かれ、
それに現代のパートがうまく絡んでゆく。
宗教的思考を軸とした人間と異星人との胸を打つ物語。
傑作と言って良い作品だと思う。

2011 年　第 42 回星雲賞海外長編部門受賞作品。

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異星人たちは村での生活に溶けこんでゆき、中にはカソリックに帰依するものも…。
異なった環境のため仲間が次々に命を落としていく中、故郷を思うクレンク人たち姿や、徐々に迫り来るペストの恐怖に対する丁寧な描写はSFというよりも歴史ものを想像させる。(現代パートとの絡みから)予測される結末へと一気に突き進んでいく展開は圧巻。
すべてを語りきらず、含みを残したラストの余韻も素晴らしい。

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2011年3月4日読了。

物理学のお話が難しすぎてついて行けず…そのせいか、感動はイマイチでした。
最後流し読み。

バッタ型宇宙人が中世の村人と出会って、心の交流を深めていくお話は、興味深かったけど…二つの種族の溝が深すぎて、本当に理解しあえたのか…微妙。

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なんか、すごいよかった。
14世紀のキリスト教の世界観とか、まだまだ発達していない物理学とかの描写は細かく綺麗にしてある一方で21世紀現在からみた14世紀の不確かさがちゃんと書かれてるんだ。
14世紀の小さな町の文献なんてあんまり残ってないから、現在からみるとそこで生きていいた人のことなんて意識しないと事象の間に埋もれてしまんだろうけど、綺麗な描写と文献をたどっていく過程の中で現在からみても過去の人々が生きているような錯覚を起してくれた。
その結果が最期の方のジュディのセリフなんだと思う。

異世界との遭遇ものにしてもいままで見たことのない切り口だったし、本当に後半の加速感が良くて、クレンク人と徐々になじんで行けて大切に思えた。
期待以上。よかった。

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中世にある村で実現した異星人とのファーストコンタクト。
ひさびさにハードＳＦを読んだなーという感じ。価値観も本能さえも異なる異星人と遭遇したのは中世のキリスト教徒であり自然哲学者。暗黒時代という印象しかなかった中世の自然哲学が、意外にも異星人をただ悪魔として退けるのでなく、ある種の理解を示せるほど解放されていたことに、ちょっとびっくり。なにせ、「ハード」なので、現代パートの理論とかは、さっぱり判りませんでしたが、それなりに面白く読めました。

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これほど続きが読みたくて面白く読めたＳＦは初めてでした。
加速度的に悪化していく状況は緊迫感がありドキドキした。
ラストのオチはある種の救いがあって良かった。
現代パートより中世パートの方がすきだった。
人物ではハンスとディートリヒがすきだった。

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上巻を読んで、その後は、どうなかったと楽しみにしていたが、主に中世の人々と異性から来たものたちの交流を中心としたドラマと言った方がいいかもしれない。地球を飛び立った彼らがその後、どうなったか、知りたい。

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中だるみもあまりなく、エンタメとして、なかなかの出来かと。翻訳がちょっと唐突感がある場面がありましたが、上下巻と楽しめました。

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上巻表紙にあった痩せ細ったミイラみたいな異星人の姿に比べ、下巻ではがっしりとした悪魔顔で描かれている。確か異星人には二系統あった筈なので、描き分けているのだろうか？もしくは実際の姿が上巻であり、村人には下巻表紙絵のように見えたのであろうか？メメント・モリ（死を忘れるな）！中世ヨーロッパで猛威をふるった黒死病が黒い森の中の小さな村にもゆっくりと忍び寄る。ひとつの共同体が静かに崩壊していく様が丁寧に描写されており、読みながら思わず息を殺す。巻末で現代パートと中世パートがやっと交わる。歴史宗教ハードSFの良書。

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現代パートはなかなかSOWなんですけど、14世紀パートは相変わらずくどい。本作を読んで改めて宗教の愚かさを再認識しました。神とか死後の世界とか、なんであんな下らない概念を無条件に信じられるんでしょう。この世界にもし宗教なんてものがなければ、もっと安全でもっと進んだ住みやすい世界になったでしょうに。

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う～ん良かったです。
久々にじんわりと感動出来ました。
このところ時間がなくてほとんど本を読まなくなってたのですが、また色々読みたくなりました。
いわゆるファーストコンタクトものですが、時代設定が中世ヨーロッパってことで、しかも現代の調査･発掘場面と絡めてあって謎解きものとしても楽しめる気がします。
一応クリスチャンなので、一部のクレンク人たちがカトリックの世界観に共感するようになっていく過程に感動でした。
ラストまで読んだ時、聖書の一説が浮かびました。
人は倒れても、打ち捨てられるのではない。主がその手をとらえていてくださる。(詩編37-24)
ラストの星空は神の光明と思う。
やっぱりSFっていいですね。