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紙の本
清佑、ただいま在庄 (集英社文庫)
著者 岩井 三四二 (著)
室町後期、荘園の新代官として赴任することになった僧の清佑。村のものどもを愛子と思った撫育するよう老師から言われたが、村人たちは一筋縄ではいかない。食うや食わずの生活では、...
清佑、ただいま在庄 (集英社文庫)
清佑、ただいま在庄
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商品説明
室町後期、荘園の新代官として赴任することになった僧の清佑。村のものどもを愛子と思った撫育するよう老師から言われたが、村人たちは一筋縄ではいかない。食うや食わずの生活では、どんな手を使っても生きのびることが第一なのだ。寺で純粋培養され、理想に燃える代官と、代官でさえうまく利用しようとするしたたかな村人たち。清佑の一方通行とも見える彼らへの思いは実を結ぶのか。第14回中山義秀文学賞受賞作。【「BOOK」データベースの商品解説】
【中山義秀文学賞(第14回)】【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
吉書始め | 9−37 | |
---|---|---|
沙汰付けを所望 | 38−63 | |
起請をとる | 64−87 |
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紙の本
人の営みがあれば、そこには物語がある
2011/06/23 15:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
心地よいひとときだった。
室町末期、文亀二(1502)年、後柏原天皇の世。室町幕府将軍は11代・足利義澄の時代。京の大寺が所有する和泉国の荘園・逆巻庄が舞台の作品がこれほど面白いとは。なんの物語もなさそうなこの場所に、こんな面白い人間模様が展開されているとは、そういう驚きと喜びがある。
年貢を取られると生活がカツカツの村人たち。借りた米は返したくないし、年貢は少しでも減らしたい。結果、あの手この手を考え出す。
そんな強かな村に、代官として荘園の政を行うために京の大寺から派遣された清佑。杓子定規でくそ真面目な彼が、着任早々直面したのは、代官が変わったのだから、貸し出された米や種籾は返さなくてもいいだろうという村人たち。
「子供たちはよい。明るくて邪気もない。大きくなると、なぜ悪くなるのかのう」
と色々とごねる村人に悩み、愚痴をこぼす清佑だが、押したり引いたりでなんとか荘園運営をこなしていく。村人も、寺社所有の荘園から、武士が領主になっては年貢がさらに苛酷になるからと、押したり引いたり。とにかく生きるために必死で強かな村人と、ついつい語気を荒げる杓子定規な清佑の駆け引きが、非常に面白い。
そんな清佑と村人の駆け引きで成り立っている荘園には、小さな社会がある。
盗みや訴え事を裁く公事、干ばつ対策の雨乞い、荘園の侵蝕を目論む武士への対応、徳政令。人が集まることで起こる社会的出来事に溢れている。
先に、なんの物語もなさそうなこの場所と言ったが、よくよく考えてみると、人の営みがあれば、そこには何らかの物語があるわけで、それは多くの小説の材となっている江戸の市井も同じことなのだ。それにしても、よくこの時代、この場所に目をつけて、必死に生きる村人と荘園領主の人間模様と、荘園の運営をユーモラスに描き出したなぁ、という感嘆の思いが尽きない。
ところで、物語がバッサリ終わっている話がいくつかある。この後どうなったんだという感じ。しかし腹立たしくない。なぜかと考えてみると、話の本旨と物語の結末は別なのだ。本旨は最後までにはしっかり描かれている。
例えば、起請という公事行為を材にした【起請をとる】。ここでの起請とは、『もし無実なら、●●を行っても、神仏のご加護によって怪我はしないはず』という、神仏のご加護によって身の証を立てる、なんとも恐ろしい審理方法。
この物語では、さまざまな起請がある、ということが本旨であり、二度の起請をとる羽目になった男の結末は、あくまでおまけなのだ。
しかし、青ざめる男を目にしてしまうと、やっぱり気になるのが人情。もう少し読みたい。そんな気持ちが、後日談でフォローされているから、なんだか嬉しくなる。
そういう13話を楽しんでいくと、荘園の行方はこの後どうなるんだ、というところで本書が終わっている。この後、天下統一に向かう武士の台頭激しく、荘園の行方は歴史から想像できるが、できることなら荘園の後日談を読みたい。
紙の本
中断?
2022/04/13 20:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
室町時代の荘園のお話である。この作者の作品の中でも私の好きな話が多い「庶民モノ」なのでずいぶん期待して読んだ。確かに一つ一つのエピソードは面白く、作者得意のユーモアとペーソスが作品からよくにじみ出ている。しかし、話がまだ「中盤」と思われるところで突然終わっている。せっかくの様々なエピソード 伏線が中断してしまっている。