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商品説明
霊鬼や神仏が姿を現す夜、人間による秩序の昼、人と異界が交錯する境界の朝・夕…。古代の人々の時間感覚を探るとともに、時刻制導入による国家の時間管理の実像を明らかにする。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
三宅 和朗
- 略歴
- 〈三宅和朗〉1950年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。慶應義塾大学文学部教授。博士(史学)。著書に「古代の神社と祭り」「古代の王権祭祀と自然」など。
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紙の本
陰と陽
2012/02/17 23:47
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
馳星周の『不夜城』の舞台は眠らない街、新宿だった。新宿ほどのレベルを求めなければ、現代日本の夜を煌々と照らす常夜灯は随所に存在する。客を呼び込むネオンだったり、足元を照らす街灯だったり。現代人にとってそれは当たり前のことだ。しかし、それも戦後の成長期に急速に実現されたことで、それ以前には昼と夜は厳然と分かたれていた。本書は古代の様々な説話を通して、古代人の時間観念の分析がまとめた概説書である。
まず本書が取り扱っているのは夜。『今昔物語集』や『日本霊異記』には、夜に鬼や悪霊が当たり前のように登場する。無論、著者はその実在性について議論するわけではない。重要なのはその存在を信じていたであろう古代人の心性であるという。
さらに魑魅魍魎の描かれ方に著者は注目する。説話に登場する鬼や悪霊は視覚で捉えられた記述が非常に少なく、大半は聴覚や嗅覚、触角に訴えているとのこと。今とは異なって完全な闇が支配する夜の出来事を、視覚を通じて把握することなんて古代人の意識の中にはまったくなかったのだろう。さらに、聴覚や嗅覚、触角で鬼や悪霊の存在を感じ取ったことのある人々が実在したことも想像に難くない。
昼と夜を繋ぐ時間帯、夕と朝。これらの時間帯に鬼は現れ、そして姿を消していたとのこと。このはざまの時間は、魔が出現し、消失するという重要な役割を果たすものと人びとは捉えていたわけだ。似たような感覚は現代人にもある。昭和の小学生を賑わせた口裂け女。その出現は学校と家庭のはざまの時間である下校時に限られる。さらにこっくりさんで何事かが起こるのも放課後に集中すると思うが、これも同様のことと考える
そして、昼の時間。現代と同様でこの時間帯には秩序が求められ、人間の活動が盛んだったそうだ。政治に経済が活発で、社会は活気に溢れる。
となると時間観念上、古代と現代とで大きな違いがあるのは、夜。漆黒の闇が広がるか否かが、心性に大きな影響を与えていたのだろう。闇夜に乗じて活動する盗賊や夜に統制が取れた行動を示す武士団が恐れの対象として見られていたそうだが、このことは時間観念という視点から捉えれば理解がはやい。歴史の理解を深める上で当時の人びとが持っていただろう時間観念を把握することがいかに重要か、本書から読み解ける。
ドラマや映画の時代劇の人気はなかなかのもの。2012年のNHK大河ドラマは『平清盛』である。まさしく本書が取り扱った時代の人物だ。ドラマや映画では視聴者に視覚で訴える必要があるため、夜のシーンも目に見える形で放映せざるを得ない。しかし、それが実際の状況と大きく異なることは言うまでもない。それでもドラマや映画を楽しむにはまったく問題はないが、歴史を学問として追究する場合には当時の人びとの物の感じ方や考え方を正確に捉えなければならない。本書で取り扱われている時間観念は重要なテーマの1つと言えよう。朝、昼、夕そして夜をいかに感じ、どのように過ごしていたか。その理解の上で各事件がどのような時間帯に勃発していたかを読み解くと、歴史の理解はさらに深いものになるはずだ。
紙の本
夜は人ならぬモノの時間。
2017/10/03 20:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うりゃ。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めて、国府や斎宮に漏刻が設置してあったということを知った。
国府は外敵から襲われたときの日時を記録するためのモノであり、斎宮に存在していたのは帝の代理として必要なモノだったということもだ。
夜は怪異の時間というだけではなく、闇に隠れる人間の時間でもあった。