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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2010.11
- 出版社: 平凡社
- サイズ:22cm/127p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-582-83480-2
紙の本
茨木のり子の家
著者 茨木 のり子 (詩)
倚りかからずの椅子、「Y」の箱の自筆原稿、食卓と黒電話、四季の庭の眺め…。ピロティから居間・書斎まで、50年の時を刻む詩人・茨木のり子の家をカラーで撮影。貴重なスナップ写...
茨木のり子の家
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商品説明
倚りかからずの椅子、「Y」の箱の自筆原稿、食卓と黒電話、四季の庭の眺め…。ピロティから居間・書斎まで、50年の時を刻む詩人・茨木のり子の家をカラーで撮影。貴重なスナップ写真や初公開資料も掲載。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
茨木 のり子
- 略歴
- 〈茨木のり子〉1926〜2006年。大阪生まれ。帝国女子医学・薬学・理学専門学校(現・東邦大学)卒業。戦後を代表する女性詩人。川崎洋とともに詩誌『櫂』を創刊。詩集に「見えない配達夫」など。
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紙の本
夏の匂い 夏の音 夏の風
2010/12/30 09:40
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏、群馬に行った。
新聞の文芸欄に掲載されていた、その記事は今もちゃんと残しているのだが掲載日を残していなかったのが悔やまれるのだが、詩人茨木のり子の回顧展開催の記事に誘われて土屋文明記念館に行った。この年(2010年)の夏を象徴するような暑い日曜だった。
入り口側にあった作品展示「花の名」の一節に、それは「棺のまわりに誰も居なくなったとき/私はそっと近づいて父の顔に頬をよせた」という言葉のつらなりであったが、不意に涙がこみあげた。
この春、亡くなった母、奇しくも母は茨木のり子と同い年だった、の棺のなかの顔を思い出した。あの時の悲しみはこうして言葉になり、人の心にはいっていくのだ。
その時、詩のすごさを感じた。
茨木のり子は2006年2月に亡くなった。それがここにきて、またブームに火がついたかのように、回顧展があったり関連本が出版されたりしている。この『茨木のり子の家』はいくつかの詩篇が収められているが写真本である。
終の住処となった東京東伏見の詩人の家、正しくいえば茨木のり子が夫であった三浦安信と暮した家である、が対象となっている。
この家で茨木のり子は夫の死後もひとりで暮らしつづけた。
なかに、リビングの写真がある。そこに、代表作「倚りかからず」の詩にでてくる椅子、それは茨木のり子の人気を決定づけた作品で、そのなかに「倚りかかるとすれば椅子の背もたれだけ」と詠われたまさにその椅子、が置かれている。
その椅子の現物を回顧展で目にすることができたのは、こうして家のなかの一部となった写真を見るにつけ、うれしいかぎりだ。夫安信のために購入された椅子だが、この回顧展で初めて家を離れたという。
そして、「Yの箱」である。
茨木のり子が夫の死後、ひそかに書きためていた詩の原稿がはいっていた箱である。この写真本にもそれは載っているし、回顧展では現物の「Yの箱」も、それはあまりにもどこにでもある普通の箱だ、目にすることができた。
そのなかの詩はいくつかクリップどめされていて、一部はその錆で茶色く変色している、そのことさえも茨木のり子のこの詩篇たちへの愛着を感じずにはいられない。
それにしてもなんという写真技術の発達だろう。写真の原稿は生のものとほとんど変わらない。
夏。
戦争があった夏。茨木のり子が「ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩いた」(「わたしが一番きれいだったとき」)その夏から、何度の夏が訪れただろう。
茨木のり子は椅子に腰掛け、蝉の声を聴き、風がわたる気配を感じ、この家の住人として生きた。詩人の息づかいが、それはけっして激しいものではなく静かに深くであったろう、今でも残る、そんな家が、なぜか懐かしくもある。
◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。
紙の本
いつも「いらっしゃい」と小さな声で囁いて。
2011/12/31 12:17
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:和田浦海岸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文藝別冊、KAWADE夢ムック「花森安治」に、
茨木のり子の「『暮しの手帖』の発想と方法」という貴重な文が読めます。それを読んでむしょうに読みたくなったのが、この本でした。
「茨木のり子の家」(2010年11月初版)は写真集ですね。
詩人・茨木のり子が亡くなったのが2006年。享年79歳。この写真集は撮影期間が2008年から2010年とあります。
サッシではなく木枠にガラスが入った窓。あけたすぐそばに金木犀が咲いていたり。二階のやはり木組のガラス窓から庭を見下ろすと、紫陽花が咲いていたり。庭のみかんの木。みかんの花。当時とかわらない近所の坂の散歩道。書斎の曇りガラスは、模様が、おはじきのようなギザギザで、そのおはじきが卵型の大きさをしてガラス面をうめ尽くしている模様となっております。そして、その窓の写真が、そのまま表紙になっておりました。木製で武骨な北欧の山門みたいな玄関ドア。一階の漆喰塗りの白い壁。食堂椅子は背もたれも座部も木製で、ていねいに使い古され、背は黒光りしておりました。二階の書斎の本棚も写されております。古いアルバムからの写真も。茨木さんの詩も写真の邪魔をしないように挿入されて、ならべられた詩が、まるで、この家からたちのぼる香りでもあるかのように読めるのでした。生前には発表されることのなかった詩集「歳月」の詩が入った箱と原稿も見ることができます。
最後には「伯母と過した週末」という宮崎治氏の2頁の文。
以下は、そこからの引用。
「茨木のり子は32歳のとき、従姉妹の建築家と一緒にこの家を設計した。施行は1958年・・・今年で築52年になるが、もしも伯母夫婦に子供がいたらこの家は間違いなく建て替えられていただろう。煙草の脂(やに)で変色した壁紙やファブリックには、長年暮らした余韻が今も色濃く残存している。・・・
門灯が灯る頃、伯母の家の呼び鈴を押すと、木製の扉の格子窓に伯母の姿が現れ、いつも【いらっしゃい】と小さな声で囁いて、暖かな空間へ招き入れてくれた。本や雑誌が山積みされた狭い階段を注意深く上ると、台所からはその都度違ったレシピの濃密な香りが漂っていた。・・・」
紙の本
ていねいな暮らしぶりが伝わる家
2014/07/30 22:12
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ページをめくりながら、詩人の茨木のり子さんが住んでいた家に、まるで招かれたような錯覚を起こします。
彼女がかけていた眼鏡が最初のページ、
次にはその眼鏡をかけている彼女の写真…。
家の写真はドアノブから、
お客さまを気持ちよく出迎える玄関の佇まい、
居心地の良さそうなリビングダイニング、
そうして彼女の書斎、
本棚のアップをじっくり見入ってしまいます。
窓ガラスの模様も昭和の時代を感じる懐かしいもので、
しみじみ何か語りかけられているような感じしてなりません。
ていねいな暮らしぶりがしみじみ伝わる家でした。
家の平面図があるので、また写真を照らし合わせたりして…。
そうそう、「寄りかからず」の椅子もありましたよ。
「Y」と書かれた箱の中に入っていたいくつもの詩。
彼女の肉筆が、そっと紐とかれたような、
そんな印象を受けながら、一編一編を、時間をかけながら読みました。
紙の本
詩人の住まいの記憶
2020/07/31 23:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
時々、発作的に読みたく...というより眺めたくなる本。美しい装丁と美しい写真。詩人、茨木のり子さんが晩年暮らした家の記録と、ときどき挟み込まれた詩が絶妙な間合いで、居心地がいい。...いや、読みごこちがいい(?)
紙の本
カラー
2019/01/15 02:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
茨木のり子さんの詩のファンで、どういった環境で詩作をされていたのか知りたい方にはおすすめです。カラー版。