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花のノートルダム (光文社古典新訳文庫)
泥棒で同性愛者だった青年ジュネは、獄中で書いたこの処女作で20世紀最大の“怪物”作家となった。自由奔放な創作方法、超絶技巧の比喩を駆使して都市の最底辺をさまよう犯罪者や同...
花のノートルダム (光文社古典新訳文庫)
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商品説明
泥棒で同性愛者だった青年ジュネは、獄中で書いたこの処女作で20世紀最大の“怪物”作家となった。自由奔放な創作方法、超絶技巧の比喩を駆使して都市の最底辺をさまよう犯罪者や同性愛者を徹底的に描写し、卑劣を崇高に、悪を聖性に変えた、文学史上最も過激な小説。【「BOOK」データベースの商品解説】
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好悪分かれる作品
2012/03/24 22:48
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BH惺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
読みながら、これはR-18指定にしなくて良いのだろうか……と思うことしばしば。かなり表現があからさまで刺激的。だけど中条省平氏の訳は過激でありながらワイルドで読みやすい。固有名詞などそのものズバリ登場したりしてあ然呆然の連続だった。
語り手は一人称がジャンという、作者の名と同じ人物。なのでかなり自身を投影しているとみたので、これは一種の自伝的小説なのかなと。しかし、そうでもないらしい表現もあるので読者を幻惑させる。それも作者の構成のねらいなのだとしたら、かなり狙った緻密な構成なのかと。
登場するのはすべて同性愛者ばかり。そのうちのメインキャラクターは女装する男娼・ディヴィーヌ。ほとんどヒロインと言ってもよいほどの心まで女性となっている繊細で心優しい人物。そしてその情夫となるイケメン・ミニョン。そしてその彼が拾ってきた、今作のタイトルロールでもある源氏名「花のノートルダム」という美少年。
つまりはこの3人の愛憎劇、途中からミニョンは警察に捕まりストーリー上からは姿を消してしまうので、実質的にはディヴィーヌと「花のノートルダム」との物語となっている。
1940年代。おそらく作者が若き頃のフランスを舞台にした、社会の底辺で生きる若者達を赤裸々に描いた一種の風俗小説なのだと個人的に理解。その描写は時に俗悪であり猥褻であり、嫌悪感を抱きそうになるほど。同性愛者達の生活を詳細に描写し、犯罪を重ね身を売り、裏切り裏切られ、刹那的に生きる彼等の青春(というには綺麗すぎるけど)が痛々しいまでに鮮烈。
そんな俗社会に身を置き、男娼として生きながらもその精神はあくまで純粋で慈悲深いディヴィーヌの存在がひと際輝きを放っている。どんなに他人に蔑まれ裏切られながらも、プライドを捨てることは無いその姿は一種の崇高さを感じさせる。
対して登場シーンから殺人者として華麗な印象を抱かせる「花のノートルダム」。この作品において同性愛者達は自ら決して本名を名乗ることはない。美少年「花のノートルダム」もそうなのだけれど、その個性はインパクトありすぎ。殺人・万引き・コカインの密売等悪事に手を染め、結局は警察に捕まり斬首刑に処せられる。
短くもそのあまりにも強烈で鋭い生き方と、息を飲むような美しさの描写には圧倒された。一種の「悪の美学」なのだろうか、ピカレスクロマン(悪漢小説)と言っても良いくらいだと。
巻末の解説にあったのだが、これはヒロイン・ディヴィーヌの成長物語でもあり、そのディヴィーヌと「花のノートルダム」との複雑な恋愛小説でもあるとのこと。そしてさらに、作者ジュネがこの「花のノートルダム」という小説をどう書いたかを語る「メタ小説」として読むこともできるという説に思わず納得。
で、作中個人的に一番感動したのが、意外にも法廷劇となった「花のノートルダム」ことアドリアン・バイヨンの裁判シーン。
殺人罪を問われている彼の裁判に証人として次々に同性愛仲間が証言台に立つ。公的な場での彼等は普段の虚飾をはぎ取られ別人のように委縮してしまった中、たった独りディヴィーヌだけは、堂々と立派にアドリアンにとって有利な証言をしてゆく。その精神的強さと成長に思わず涙腺崩壊。
下品・低俗・猥雑な描写と崇高・静謐・技巧的な描写が混然一体となった独特の文体。俗と聖が混沌としながらも、心の深奥から湧きあがってくる静かな感動。
受け付けない人はまったく駄目、耐性のある人にはとんでもない奇書であり、感動作。だからこそ、この時代まで読み継がれてきた作品なのだと思うと感慨深い。
紙の本
異常な経歴をもった作家ジャン・ジュネの不思議な世界を垣間見られる作品です!
2020/05/11 09:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、フランスの小説家であり、詩人であり、エッセイストでもあり、また劇作家であり、政治活動家ででもったジャン・ジュネ氏の作品です。実は、同氏は若い頃、ほとんど教育を受けておらず、泥棒で、同性愛者で、何度か獄中で過ごす日々を送っています。同書は、獄中で書かれた彼の処女作で、同作によって20世紀最大の怪物作家にのし上がったのです。その作風は、自由奔放で、超絶技巧の比喩を駆使して都市の最底辺をさまよう人々を徹底的に描写していきます。同書の内容も、男娼のディヴィーヌが主人公で、ある夜出会った男ミニョンを自宅に招き入れ、そのまま同棲生活を始めるというストーリーが展開されます。しかし、ある日ディヴィーヌが部屋に帰ると、ミニョンは花のノートルダムことアドリアンという男を連れ込んで眠っており、その日からディヴィーヌは彼ら二人のために働くことになるというものです。ジャン・ジュネ独特の世界を表したこの小説をぜひ、読んでみてください。