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警視の覚悟 (講談社文庫)
亡き元妻と住んでいた息子・キットの親権も得て、警視キンケイドの一家は真の家族になりつつある。一家はキンケイドの故郷に里帰り。キットは従姉・ラリーに恋心を抱く。そこに乳児の...
警視の覚悟 (講談社文庫)
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商品説明
亡き元妻と住んでいた息子・キットの親権も得て、警視キンケイドの一家は真の家族になりつつある。一家はキンケイドの故郷に里帰り。キットは従姉・ラリーに恋心を抱く。そこに乳児の遺体が見つかり、新たな殺人事件も発生。ラリーの友人の事故死にも疑惑が生じる。子どもが標的になる時、親ができることとは?ティーンエイジャーの性と恋、ナロウボートの住人たちと運河での悲しい出来事。子どもたちの危機に、キンケイドとジェマのカップルが挑む。【「BOOK」データベースの商品解説】
乳児の遺体が語る、親の哀しみ。もう1つの犯罪。
ティーンエイジャーの性と恋、ナロウボートの住人たちと運河での悲しい出来事。子どもたちの危機に、キンケイドとジェマのカップルが挑む。
亡き元妻と住んでいた息子・キットの親権も得て、警視キンケイドの一家は真の家族になりつつある。一家はキンケイドの故郷に里帰り。キットは従姉・ラリーに恋心を抱く。そこに乳児の遺体が見つかり、新たな殺人事件も発生。ラリーの友人の事故死にも疑惑が生じる。子どもが標的になる時、親ができることとは?【商品解説】
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ミステリファンならずとも、本を読むのが好きな人にはお薦めです。677頁に込められた様々な想い、そして自然描写、どれをとっても文句なし。特に、親子のことについての記述にはほとほと感心します。次作が待ち遠しい作家の一人、もっと騒がれて当然の人だし、作品です。
2012/03/08 19:27
7人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
先日、といってもかなり前のことですが、NHKのBS放送を見ていたら、イングランドの運河を自由気ままに行く、 ナローボートの旅の様子が出てきました。最初は、ボートを横から映していたので、てっきりフランスの川を行く中型の船だと思いました。丸い窓が可愛いし、衝突除けらしいタイヤを舷側に取り付けた様子も、フランス風景をよく描く小杉小二郎さんの絵で見かけるようなものだったので、そう思ったわけです。
家族でドイツ・ウィーンの旅をしていた時ですが、当然私たちも、ライン下りをしました。中型といっていいのでしょうか、長さにして50mに満たない貨物船と何度かすれ違いましたが、その船尾には小型の自家用車が載せられ、上げ下ろし用のクレーンも設置されているのをみて、ああ、この船で生活している人がいるんだ、降りた先で自動車を使うんだろうなあ、家族は乗っているんだろうか、いたとしたら学校はどうするんだろう、など色々考えました。
そんな記憶があったので、大陸の運河だと思ったわけです。ところがカメラがアングルを変えていくと、驚きました。船の巾が狭いのです。巾は2mくらい。改めて見れば、運河の巾も狭くて10mもないくらいです。河の両側は、椎名誠が毛嫌いする日本の河川のようにコンクリートで固められているのではなく、葦のような水草や木々が自然のままに迫っていて、綺麗なボートがなければ、南米あたりといっても通る、そんなものでした。
そう、これがナローボートであり、それが行き来するのがイングランドの運河でした。私は初めてみるイギリス郊外の川の様子と、退職後の人生を、どこか安定が悪そうな巾の狭い船で過ごす人々の、満ち足りた表情をみながら、ああ、こういう生き方を日本人が楽しめる日が来るのだろうか、そのためには、お金のためだけに無駄な工事をして国土を荒らす愚に私たちが気付いて、政治家と官僚が作り上げた土建王国の汚名を返上するのが先なんだろうなあ、なんて思ったわけです。
何故こんなことをクダクダしく書いたかといえば、まずこの本のカバーを飾るのがそのナローボートだからです。美しい写真です。トリミングと周囲のぼかし方のせいでしょう、夕闇迫る運河に浮かぶボートの様子は、NHKの放送では見られなかった静謐さと湿度を感じさせます。シーナさんが日本の河川のあり方を批判するのがよく分かる、そういう写真です。そして、このナローボートは小説の中にも登場し、そこに暮す人々の様子が、不便さも含めて丁寧に描かれます。
クロンビーの筆は、船上生活者だけではなく運河とその周辺の自然も丹念に描いていきます。それが700頁近いボリュームに繋がっていくのですが、そこにダンカンやキット父子が入り込み、或いはヒューとダンカン父子が言葉を交わす、そして彼らの家族、夫婦、親子、兄弟、家庭そして職場様子が浮かび上がってくる様は見事と言っていいでしょう。ちなみに、クロンビーの情景描写の上手さと、それに磨きがかかっていることについては、あとがきで訳者の西田佳子も触れていますが、我が意を得たり、という感じです。
話は、乳児の遺体が壁の中から発見されるというショッキングなことから展開していきます。しかし、単なる殺人犯追跡の話に終始するのではありません。話の中心にいるのは、あくまでキンケイド一家です。いや、ダンカンの息子であるキットと言っても過言ではないでしょう。そう、これはキンケイドの家族を描く話なのです。
たとえば、キットの絡みでいえば、13歳の兄に対して5歳の弟トビーがいます。年齢もあるでしょう、自分がダンカンの実の子どもではない、ということを知りません。だから無邪気です。でも、妻のジェマとなると、自分がダンカンの両親や妹に自分が本当に受け入れられるのか、気にしています。ダンカンの父であるヒューが二人の孫を可愛がる様子もですが、母のローズマリーがジェマを優しく受け入れる様子も感動ものです。
そして、堅物の兄ダンカンを嫌っている美人の妹ジュリエット・ニューカムがいます。姓からわかるように結婚していますが、彼女は自身の結婚が失敗であったことを認めながら、それを相談することもできずに苦しんでいます。夫の会社の事務をしていましたが、その努力を認められないことから会社を辞め、好きな工務店を自分で始めたばかりで、これが夫婦仲を悪くした原因でもあります。そして、この夫というのが・・・
とまあ、書き出せばきりがないくらい、ダンカンの家族のことが描かれるのですが、それが少しも煩わしくありません。ミステリとしての部分に密接に関係してくるからです。あと一人、キットに関係してくる人物で重要なのが、ジュリエットの娘ラリー・ニューカムでキットと同じ13歳、美少女です、そして不良。一目でキットを虜にしてしまう。
女性の自立、ソーシャルワーカーの在り方、家庭内暴力、終末医療など現代的な問題が、真剣に語られます。夥しい数の人物と、沢山のテーマが登場しますが、人間は丁寧に描き分けられ、社会問題は深く掘り下げられます。そして、眼前に光景が浮かぶような濃密な情景描写。これらがバラバラに存在するのではなく、最後は一つに融合しながら謎の解明に至ります。よくもまあ677頁で、こんなにも盛りだくさんのことができるものだと呆れるくらい。もっと騒がれておかしくないシリーズでしょう。
最後はカバー後の案内。
亡き元妻と住んでいた息子・キットの親
権も得て、警視キンケイドの一家は
真の家族になりつつある。一家はキンケ
イドの故郷に里帰り。キットは従姉・ラリ
ーに恋心を抱く。そこに乳児の遺体が見
つかり、新たな殺人事件も発生。ラリー
の友人の事故死にも疑惑が生じる。子ども
が標的になる時、親ができることとは?
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クリスマスにふさわしい家族を思う心温まる作品
2010/12/23 20:56
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
クリスマス休暇でキンケイドの実家にいった一同。
そこで納屋の壁に埋められた子供の遺体が発見させる。
結婚していないということでちょっとぎくしゃくしてるキンケイドたちと、共同経営者の画策によって上手くいってない妹夫婦と、年月の重みとともにあるべき形におさまってる感じのキンケイドの両親と、それぞれの家庭を描くことで、とっても<家族>のありかたを考えさせられる1作になっている。
にしても、キッドはいい子だなぁ。
ナイーブで、でも強くて、優しい。
キンケイドとジェマは、とっても心配してるけど、彼はきちんとすくすく育ってるよ。でもって、それは二人の力だと思う。
事件にかかわってくるボートで生活している一家も、家族のつながりを大事にしていて、その一家とかかわっていく監察医も結局のところ人とのつながりを求めているのだろう。
なんともクリスマスシーズンにふさわしい作品だった。
犯人を思うと滅入るけれど、根本的に心温まる話だったよ。