紙の本
超高齢社会への対応は、日本人の幸せの今後を占うことになりそうだ
2011/04/12 23:09
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
20年後の高齢化社会を展望して、その対応策を示そうとしたのが本書である。東京大学は2009年に「高齢社会総合研究機構」を学際的研究プロジェクトとして発足させた。そのプロジェクトの紹介を兼ねつつ、これまでの成果を披露している。
”ジェロントロジー”という聞き慣れない言葉は、高齢化にまつわる学問のことを指す。少子高齢化がメディアの話題に最初にのぼったのはいつのことだろう。おそらくずいぶん前のことに違いない。将来の人口動態など簡単に分かってしまうのだから。
それにしても、相当な時間がかかって、ようやく高齢化に関する本格的な学問が始まったことになる。すでに高齢化社会を迎えているので、ここから先のことは「超高齢」と呼んでいる。ここまで現実の問題にならなければ、政府も学術界も世論も動き出さないのかと、今更ながら驚いてしまう。
本書には超高齢社会は暗くないと何度も繰り返し出てくる。あたかも読者を説き伏かせようとするかのように。
本当に希望の持てる社会になるかどうかは別にして、本書に出てくるさまざまな学問分野の研究者の言葉を信じてついていくほかはなさそうだ。
”パラダイムシフト”という表現も出てくる。これは今までの常識を捨てて、新たな視点や価値観で物事を見て、超高齢社会を作らなくてはいけないという警句となっている。
東日本で大震災が起きて、社会システムが大きく変わろうとしている今、パラダイムシフトは決意して起こすというより、そうならざるを得ない必然になっている。もとの生活をそのまま取り戻すことが困難になりつつあるのは、東北、北関東はもとより首都圏でもそうだ。
復興にとどまらず、新しい価値観の創造と、幸せの再定義が求められている。超高齢社会では、単に長生きするというよりは、コミュニティを再建し、人と人の支え合いの中で、地域を運営する道が模索される。たとえば、老人を介護施設に入れてしまうのでなく、医療や介護を再構築し、在宅でこれらを提供できるようにする。
ひとつ面白いと思ったのは、千葉県の柏でURによる団地立て直しを契機として、東京大学が関与の上、そうしたコミュニティ作りが始まっている点だ。東大の機構では、これを「社会実験」と称して取り組んでいる。机上の学問に終わらせず、その構想がはたしてうまくいくかどうかを実証しながら進めているのは注目に値する。
机上ではうまくいくと思ったことが、実際にやってみるとうまくいかないとか、うまくいかないと予想したことが案外うまくいくことがあるという。こうした経験値を積み重ねていくことが、大学の研究をより社会に有用な学問に変えていく。
まだ一歩を踏み出したに過ぎないということであるが、これから日本の高齢化に追いつき追い越す可能性のある韓国や、少し遅れて億人単位のスケールで高齢化の進行する中国なども、東大のプロジェクトを知って、大きな関心を示しているという。
震災のあとの原発事故のために国際的な評判が揺らぎつつある日本だから、こうしたソフトインフラ面で、日本が国際社会に貢献できることはいいことだと思う。今後の東大の超高齢研究プロジェクトの取り組みに注目したい。
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山陰中央新報2011.02.03。
《高齢化にまつわる学問である「ジェロントロジー」の東大での取り組みを報告し、町づくりや医療改革、公共経済学など各分野の研究者が、豊かさを実感できる超高齢社会構築のためのプランを提案する。》
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国民全体で「前向きな危機感」を共有し、一人でも多くの人が強調できる仕組みをつくろう。いうという趣旨。そのためのビジョンの共有を目指し、主に東大の先生方がそれぞれの専門分野の視点でメッセージを書いています。
2030年に自分はいくつなのか、どのように生きていたいか、考えてみるともう時間はないと思わざるを得ません。
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日本のこれから20年先を見据え、今なすべき事と提唱する。
団塊の世代を中心とした人口動向から、これまでの日本のあり方が大きく変換する必要を自覚せねばならないと考えさせられた。
変化に対して適切に未来を予測し、行動する。これらの動きは他国に先駆けて超高齢化社会を迎える日本にとって、悲観的に捉えるのみではなく、ビジネスチャンスとも考えた国作りが急務である。
コミュニティの形成や住まいのあり方、高齢者の就労など具体的な提唱が、地域の社会実験などとも連動し提唱され面白い。
厚生労働省の高齢白書などと重なる部分が多いが、コチラの方がわかりやすく一般の人でも問題を理解しやすい。
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高齢社会に関する様々な問題を対象とするジェロントトジーについて。
東京大学高齢社会総合研究機構というところが書いたもので、わりと小宮山前総長的にギラギラしてる。
そもそも同機構のもとが民間企業三社の寄付講座であり、出版が東洋経済新報社でもあるので、産学連携というか経済・ビジネス寄り。
健総地域看護教室の村嶋教授も寄稿。
こういうものを読むときにいつも思うのだけれども、大学というのは具体的に何かする、というより、広く応用可能なモデルを作り出すのが使命、なんだなと。
もちろんそれは重要。高齢社会の問題はほんとに社会全体の世界全体の問題なので個々にアクセスするには果てしない資源が必要になるから大学が直接アクセスしない方がいい。
でもどうしても、結局誰がそれを担うの?っていう疑問はつきない。
2030年というのはまあ近い未来ではあるけれど、65歳以上高齢者は32%とというすごい状況になってる。
ちょっと計算するだけでも、いま学生である人間の親はすでに後期高齢者(75歳以上、要介護率が格段に増える)になってることが多い。
すごく身近な問題。
特に気になった部分。
少子高齢化社会に向けた社会福祉制度の維持への3手段。
1、子どもを増やす
2、元気な高齢者を増やす
3、積立方式への移行
自分の専門的には、2にコミットすべきかな、と。
予防・支援のための医療の充実。これ重要。
「課題解決先進国」
小宮山前総長という人に特に詳しいわけではないけれど、いくつか東大関連の本を読むと必ず出てくるのが氏のこの言葉。
日本というのは様々な課題に直面しているが、そこにうまく対処すればその意味で世界の先進国になりうると。
比喩的な意味だけじゃなくて、実際の経済的にもそういうものはあとあと世界に輸出できる、という意味で。
アジアの近い将来の高齢化は割と有名だけれども、もうすこし先になればアフリカだって高齢化する。
高齢者の生きがいを作るためにも、日本国の経済のためにも、元気な高齢者が働ける環境の整備は重要、と。
ボランティア要素が強くても働きたい人は多い。
ただこれについて述べるには、少しこの本は高齢者自身の言葉に欠ける。
主体的に高齢者にも語ってもらいたいものである。
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2011.12.15 ジェロントロジー(高齢社会・高齢学)についての解説書。戦後の経済成長期に発展したインフラや医療システム、社会システムなどを高齢社会にうまくあてはまるように改良し、健康で豊かな高齢期を実現できるように推進していくことが課題。実現できれば高齢化先進国として世界をリードすると同時に、続く中国や韓国、インドなどの先行事例として新たな競争優位を築くことになるという考え方。
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チェック項目13箇所。幸せな超高齢社会に必要なのは将来ビジョン。それを国民全体で共有する。65歳以上の一人当たりの医療費650万円。医療水準を落とさずに医療体制を維持するには国民全体の健康度を上げること。85歳以上の介護発生率は2割程度。寝たきりは3,5%。80~84歳で10%寝たきりは1,5%。79歳以下はそれ以下の確率。事故防止には免許返納が有効的だが、地方では車がないと買い物もままならないのも現実。高齢者がいきいきと暮らせる社会は長生きした人の経験と知恵が活かせる社会、若い人の役に立つ社会。高齢者が自由に就業や起業ができる、若い人が将来に夢を抱いて頑張れる社会、ずっと健康で元気で暮らせる生活環境、親が要介護になっても安心して仕事を続けられる生活環境。病気を治す医療から支える医療へ。超高齢社会の充実には異業種の連携が必要不可欠。いかにこの社会を魅力あるものにするのか?
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東京大学柏キャンパスを中心に繰り広げられている、超高齢化社会への対応の検討内容をまとめたもの。いろいろな問題提起がされているが、ちょっと町域的な対応内容が多かった気がする。それより、柏キャンパスが出来る前の1990年代の当地を知っているだけに、「こんないろんな社会実験が繰り広げられてて、すごいな」と思った。
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これから先の未来の話。
でも、自分自身の将来でもあるその世界の話。
このまま高齢化社会が進むとどういう社会になっていくのか、ソフト面・ハード面今ある議題の一部が垣間見えます。
今、どういうことがこれから起こると考えられているのか。
今のいる社会で、これからを考えること。
政治が機能不全になっている今、心配する前に行動できるよう考えるきっかけになる本です。
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2010年初版、210ページ。
帯に書かれいているのは、
「東京大学の英知を結集して描く、超高齢社会の明るいビジョンがここに」
という、大学の先生方による、日本の将来的な超高齢社会への提言をまとめた本。
視点が、アカデミズム・行政側に寄っている。
難しそうなので、ほとんど飛ばし読みです(笑)
難しそうですが、言ってることは「ああ、なるほど…」といった感じの内容が多そう。
社会に対してアプローチをかける、テクノロジーやシステムによって社会を変革していくというスタンスの企業の方には一読の価値ありかもです。
人口学や人口社会学を扱う人には良いと思いますが、個人的には、ぺらぺらページをめくっているだけでお腹がいっぱいになりそうでした。
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「ワンストップ」という言葉が散見され、かつとても気になる。現状の高齢者問題が「縦割り」行政のシステムでいかに不便なものになっているかがうかがい知れようというもの。
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2030年、団塊世代が80歳以上になり、人口の1/3が65以上になるそう。発想を転換して新しいパラダイムの社会を目指すことができれば、明るい未来を創造することが可能だそうです。そうなることを目指したいと思いました。
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超高齢社会では、いまの社会の仕組みは機能しなくなるため、新たなパラダイムシフトが必要というのは、まったくそのとおり。
小宮山宏氏がいうように、日本は「課題先進国」として、世界中がこれから直面する「超高齢化」や「環境問題」に先端的に取り組み、課題対応のモデルとなる社会システムを構築することにより、世界の中で重要な役割を果たすことができるだろう。
また、おそらくその線でしか、今後の日本の繁栄と地位は確保できないだろう。
そして「原発問題」も、「課題先進国」日本に課せられた大きな宿題の一つであるということが、東日本大震災の時の福島の事故で否応なしに突きつけられたのだと思う。