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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2010.10
- 出版社: 無明舎出版
- サイズ:19cm/265p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-89544-527-6
紙の本
教師をやめて、ちんどん屋になった!
著者 カチューシャ安田 (著)
「音楽教師」から「ちんどん屋」へ…。うつ病を患い、定年まで4年を残して早期退職。以前からはじめていたちんどん活動に専念した著者が、ちんどん屋になるまでの不思議な巡り合わせ...
教師をやめて、ちんどん屋になった!
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商品説明
「音楽教師」から「ちんどん屋」へ…。うつ病を患い、定年まで4年を残して早期退職。以前からはじめていたちんどん活動に専念した著者が、ちんどん屋になるまでの不思議な巡り合わせや予期せぬ人生を綴る。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
五十を過ぎて教職を捨て、立派なちんどん屋ができるまで
2010/10/30 16:57
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:cuba-l - この投稿者のレビュー一覧を見る
やみがたい音楽への情熱、抑えきれない表現への欲求、それだけで公立校教師と言う安定職を投げ出し、芸人とも広告宣伝員とも(一般的には)よく分からない仕事に飛び込んでいくとはいったいどういうことなのか。それも定年まであと4年で、しかも景気も冷え込み仕事も多くなさそうな地方で、そのうえいい年して夫婦いっしょにチンドン屋!?
書店を覗くと、五十過ぎて、あるいは定年前後から、いったいあなたは何をするのかしないのか、はてはどうやって生きていくのかを問うたり、その体験事例を紹介した本というのが実に多い。該当年齢者にはその脅迫じみた広告と刻々と経過するわが身の時間に、ついつい焦りや戸惑いを感じたことのある人も少なからずいることだろう。
この本はそんな迷いや焦りにはたぶん何の回答も用意してはくれまいが、実際に何をやるかは別にしても、著者の体験を通じて人生の「納得に至る道筋」にはなにがしか参考にはなることだろう。
本書には、ちんどん屋の日常や演目から職業的悩み、ちんどん屋になるまでの32年間の教職の回顧や趣味で続けていた演劇やうつ病のこと、さらには直接的な関わりばかりではなく、学生時代のことや演劇評、音楽評などまで雑多な文章が集められている。
素人の散漫な体験・所感の寄せあつめの印象もあると言えばそれまでだが、一見今のちんどん屋稼業とは関係なさそうな雑多な文のひとつひとつに、自分がやりたかったことをどうにか伝えたいという思いが詰まっているも確かなのである。そのもどかしくて雑多な道のりこそがちんどん屋に至る必然を作り上げていたのだと納得させられるものがある。
このため、誰しも次に何をするのかしないのかという選択は年齢に関らず常に人生につきまとうものの、結局何をするのかは雑多な事柄による積み重ねのただその先に、必然としてそっとお膳立てされているだけのようにも思えてくるのである。
もっとも、本書の記述はお世辞にもうまく整理できていないうえ、あちこちの関係者への気を遣いが見え隠れしてもどかしい点もも多いのではあるが、もどかしいがゆえに正直でまっすぐな熱意を感じられる。
何より表紙の写真がいい。明るい眺めの中にたたずむ立派な見かけのちんどん屋が三人。笑顔がチャーミングな女性二人とどこか翳と憂いのあるような男性がひとり(これがダースコちんどん隊長で本書の著者)。
この眺めは、元気で賑やかで明るくて、でもどこか切ないちんどん屋のパフォーマンスにそのまま通じるものがある。それは誰もが通過する人生の猥雑さと憂いに通じるものであり、またそのまま、この本に記されている物語の魅力に通じるものでもある。