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商品説明
一家総出で、19年間に85万匹ものオワンクラゲを採集した結果がノーベル化学賞受賞へ。科学者としての冷静さ、執着心、探究心などを率直に語った著者はじめての自伝。地図付き。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
下村 脩
- 略歴
- 〈下村脩〉1928年京都府生まれ。長崎医科大学附属薬学専門部卒業。ウッヅホール海洋生物学研究所特別上席研究員。文化勲章受章。ノーベル化学賞受賞。
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紙の本
中・高校生や大学生に読んで貰いたい一冊
2010/12/28 15:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぜのぱす - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年2010年の秋から冬に掛けては、日本中が鈴木章、根岸英一両博士に依るノーベル化学賞の受賞に沸き、これに依って多くの日本人に夢や希望を与えて貰った余韻は、未だ、残っているだろう。
其の所為で、影が多少薄くなってしまったかもしれないが、僅か2年前の2008年には日本人(うち一人は帰化しているので、正式にはアメリカ人であるが)四名に依るノーベル賞受賞に、日本中が沸き立ったばかりである。そのうちの一人、GFPの発見とその応用開発の功績に対して今回と同様ノーベル化学賞を受賞した下村脩博士に依る自伝が本書である。
余談であるが、生物学を生業にしている端くれの私にとっては、博士のノーベル賞受賞以前から、このGFPは日常的に使用しているお馴染みだった訳が、今や、博士のノーベル賞受賞に依って、広く一般に日本人の知識の中に(実体が何かは兎も角)GFPと云う名前はインプットされているのではないだろうか。しかし、ノーベル賞受賞以前では、GFPとは縁のない一般のひとには、博士より博士の息子である下村努氏の方が『「史上最悪のハッカー」を追いつめた日本人』として、有名であったかも知れぬ。本書ではその努氏の話も出て来る。
科学には、実は、運と云うのは非常に大きな要素で、自分でコントロール出来ない分、それを持っているひとに対して、(私の様に・笑)持たないひとは、嫉妬するしかないのであるが、本書を読んでみて、また、下述の様に博士自身が云っているように、下村脩と云う人物は、産まれ乍らにして何か運を持っているように感じる。ひとつだけ、本書から例をあげると、娘さんの結婚式に参加する為に、前日にヴァージニア州のリッチモンドにドライブで到着した時、交通事故で博士が乗っている側へ他の車がぶつかって来て、運転していた車は大破したが、博士は無事であった。一歩間違えると亡くなっていた可能性もあった訳で、そうなっていたら、博士のノーベル賞受賞は有り得なかったのである。
本書の構成は、序章として、ノーベル賞受賞の連絡を受けた当日の様子(ノーべル賞受賞の発表)から語られ始め、
第1章 私の生い立ち
第2章 学徒動員と長崎原爆体験
第3章 長崎薬専と長崎大学薬学部、そして名古屋大学理学部
第4章 結婚と渡米
第5章 帰国、そして再渡米
第6章 ジョンソン博士の退職とその後
第7章 1990年以降のこと
第8章 私のMBL退職後
第9章 ノーベル賞受賞と授賞式出席
第10章 日本での歓迎
あとがき
と続く。
淡々とした文章で、子供時代の回想から始まり、戦争体験(博士が原爆の被災者であったことは、本書で初めて知った)、学生時代の話から、やがてどのように研究に携わる様になり、それがノーベル賞につながり、其の所為で、生活がどのように一変したか、を科学者らしい客観的な記述で綴っている。驚くのは、その記憶力で、そんな昔のことを細かいことまで良く覚えているものだと、流石、頭の出来が違うわい、と凡人は畏れてしまう。
読み進むに連れ、博士の性格を垣間見ることが出来るエピソードが幾つも出て来て面白い。また、家族のことを始め、様々な裏話が満載である。私が感じたのは、ひと言で云えば、博士は、現代の『武士』かもしれない。
実は、本書で博士が伝えたかったエッセンスは、「あとがき」に全て凝縮されているように思う。幾つか、言葉を拾ってみよう。
『私の今までの生涯は概して幸運であった、というより不運に比べて幸運が多かったように思う。幸運の最大のものは多分ノーベル賞受賞であろう。』
『ノーベル賞受賞の影響は大きかった。しかしその受賞が自分にとって本当に幸運であり、私に幸せをもたらしたとはまだ思えない。』
『しかし、科学者にとって一番大事なのは研究結果である。私の研究結果がノーベル賞受賞の対象になるほどに科学の発展に寄与したということは学者冥利につき、その点については満足である。』
『GFPの発見は天(自然)が人類に与えた奇跡的な幸運である。その幸運はGFPが私の前に現れたとき、私がそれを見過ごさずに拾い上げたから起きたのである。』
『この機会に私は自然に学ぶことの大切さを強調したい。』
『私は実用や応用的な研究よりも物事の根底にある真理を探求するような研究を好む。』
未だ、拾いたい言葉は、幾つもあるのだが、良い加減にしないと著作権に触れるかもしれないので、この辺でヤメておく(笑)。蛇足で、ひとつだけ解説を加えると、冒頭に今年のノーベル賞受賞者について触れたが、実は、鈴木、根岸両博士の研究は応用を目指した工学であったのに対し、下村博士のそれは純粋な理学であり、その根底にあるのは、単純に純粋に『知りたい』と云うことだけである。博士は、只、単にそれを追求した結果、たまたま、ノーベル賞に至っただけであり、本書は、その道程を描いたものであり、上に引用した言葉は、そのことの表れである。
本書は、元々は、朝日新聞出版社から刊行の予定で準備が始められたようであるが、最終的には長崎文献社からの出版になった。博士の郷土愛の表れである。
只、客観的に見れば、本書は、値段の張った格式ばった単行本ではなく、新書版やノベルス版のようなペーパーバック形式の値段のもっと安い形で出版されるべきであった、と個人的には思う。その方が、もっと多くの若者—中・高校生や大学生—に手にして貰えただろうし、それ(若者にメッセージを伝えること)が博士の望みでもあったはずだ、と思う。
紙の本
下村氏の脳はクラゲのことばかり
2023/04/03 11:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
下村氏は「(クラゲの)発光反応は多分タンパク質と密接な関係にある、であれば、phが強い影響をするはずだ」とボートでうつらうつらしていた時に突然ひらめいたという、私はうつらうつらするときは食欲のことしか頭にないが