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紙の本
「書く」ことが、頭のいい“リハビリ”になる。
2011/03/08 22:38
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ベニスの商人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
かねてから読みたいと思っていた『新聞記者で死にたい-障害は「個性」だ』が、十数年経ってから、『新聞記者で死にたい-オウム事件と闘病の日々』という題名となって文庫化された。毎日新聞の記者であり、サンデー毎日の編集長も務めた著者が、働き盛りで脳卒中を患った。一口でいえば、その闘病記である。
実は、私も著者同様、脳卒中を患い、その後遺症で現在も右片麻痺(半身不随)で、構音障害に悩まされている(軽い失語症もある)。その意味では著者は病気の“先輩”である。ただ、著者が脳卒中を発症した時点では、私は健常者だし、冒頭の新書版が出版されたときでも、同様。したがって、無関係な本だと、見過ごしてしまっていた。ところが、数年後に、対岸の火事では済まなくなったのである(もっとも、そのときは“対岸(著者)”の存在は知らなかったけれど)。そのとき、見舞いに訪れた知人が、「牧太郎」という人物が、脳卒中に罹ったにもかかわらず、現役復帰して、バリバリ執筆活動をしているから、希望はあると教えてくれた。
ただ、脳血管障害は100人患者がいれば、100通りの症状で、見かけ上は後遺症もない人もいるし、身体のどこかしこも自由にならず、ひいては血管性認知症にもなる人もいる。だから、著者が現役復帰していると言われても、軽かったんだと思ったくらいである。しかし、違った。初期の状態は、私など比べ物にならないくらいに重かった。3日目に昏睡から覚めたが、意味が分からない「ウォー」という叫び声を挙げる。もちろん、片麻痺だから、自分では何もできないので、付き添いまたは看護師に介助してもらわなくてはならないのだけれど、その意思を伝えることができない。
私の状態は、著者と比べれれば、だいぶ異なる。もしかすると無意識でICU内で騒いだかもしれないが、少なくとも、私自身には騒いだ記憶もないし、家族からもそういったことは聞いていない。構音障害は顕著だったが、失語症は軽度。構文なしの「ありがとう」「チクショー」の単語程度なら、発声できた。断っておけば、その時点では、自分の状態が他の人と比べてどうなのかは知らない。本書を読むことによって、初めて罹患者当人(著者)の感じた症状と比べられた。
著者の障害者手帳の記載は「1種1級」。対して私のは「1種2級」。症状が落ち着いてからの障害程度も、明らかに重い判定である。最前も言ったように、脳卒中の予後は人それぞれだが、少なくとも著者のように「1種1級」と判定されても、社会復帰をしている人物がいることを知ってほしい。