文化人類学のレッスン フィールドからの出発 増補版

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文化とアイデンティティ
渥美一弥

「文化」とはなにか
対義語は野蛮？自然？武化？
１５c以前ヨーロッパ人たちは自らの生活に進化の概念を持っていなかった。（過去の方がずっと優れていると感じられた、聖書によれば彼らは過去に老いて存在した楽園を追われたものの子孫となっているから）
↓
大航海時代
見知らぬ土地での「他者」との出会い
アメリカ大陸に上陸
自然をそのままにしてそこから採集し、食物を得る先住民に「未開人」（＝怠け者）というレッテルをはる→ヨーロッパ人たちはせっせと農耕をはじめる
※未開人を設定することで、対立する文明人としての自分たちを確立させようとした。
（長い間ヨーロッパ人は未開人という他者を自分たちと同じ人間というカテゴリには属さないと考えていた。）
「文化」は共通、しかしそのあり方が異なる。
他者を規定するものはその人々の「生き方の総体」／「生き方の総体」の進化によって社会も進化する？
ダーウィンより前にスペンサーが「社会進化論」

ヨーロッパ人
「武器」は過去のギリシア人より優れていることにきづく。

■文化の定義
１９cイギリスの人類学者／タイラーの定義
【「文化」または「文明」とは知識、信仰、芸術、道徳、法、慣習、その他社会の成員としての人間によって獲得されたあらゆる能力や習慣の複合的全体である】
文化と文明を同じものとして扱っている。（あらゆる文化は進化するものであり、その進化の頂点にヨーロッパの文明があるとする考えが根底にある。その進化の頂点はヨーロッパ「自文化中心主義」→未開人の文化は進化させなくてはならない、それは「文明人」としてのヨーロッパ人の義務？）
↓
文化進化論
同じ人間であるが異なっている点は「文化の進化の速度」

※文化は進化によるものでないとするドイツ・オーストリア「文化史学派」（現在の文化圏学派）
文化は異文化と接触してその影響により変化する。
文化地理学：創始者ラッツェル
【ある特定の地域で「文化」のもとになるものが作りだされ、それが人々の移動とともに他の地域に広まっていく】と主張

※イギリスでの展開
２０c〜文化進化論への批判
1920〜機能主義
①ラドクリフ＝ブラウン
他者に関する研究において「進化」という証明困難な概念を退け、証明可能な「機能」を採用／文化という曖昧な概念を退け、デュルケムの「社会」を採用・・・社会人類学へ
②マリノフスキー
【文化とは社会を構成する個人の基本的欲求や必要を充足させるための機能を果たすものであり、社会の諸制度はこうした必要に対する反応である】／このような「文化」の体系には組織と秩序が存在する。・・・文化は進化するものではなく人々の欲求を満たすために機能するものである。と主張。・・・民俗学へ

※アメリカでの展開
1920〜　ボアズ
【文化とは物質や具体的な行為の総合体ではなく、それらを理解可能なものとする枠組みやルール、記号の体系である】
：文化は人々の理解の仕方に関��っているとする見方。
【「文化の違い」とはその進化の程度による違いではなく、その社会の固有性に関わるものであり、ある文化と他の文化の基準にてらして「進んでいる」とか「遅れている」とみなしたり、「高い」「低い」などの判断を下したりすることはできない】・・・文化相対主義（人類学の倫理的・認識論的前提に
・ハーコヴィッツ（ボアズの弟子）☆
文化相対主義を３つに分類
①異文化を理解するための自文化中心主義的認識を排除する段階
②「文化」の多様性、多元性を理論的に考察する段階
③複数の「民族」集団が接触する場に置ける相互尊重と相互理解を求めていく段階
・ベネディクト
「文化の型」（菊と刀）
【文化には個人を社会が望むような「人間」に仕上げる働きがあり、理想的人間のタイプは、その文化によって異なる。そのプロセスが「文化化」】
（↓半世紀後・・・）
・ピーコック
【文化とは特定の集団によって学習され共有された、自明かつ極めて影響力のある認識の仕方と規則の体系】
・ギアツ
文化は解釈するもの
【文化とはテキストの集合体であり象徴と意味の体系／人間は自ら紡ぎだした網の目に支えられた動物であり、文化とはそのような網の目である】
人類学は「文化」の意味を探求し、解釈するための学問であると主張。
「科学的法則」ではなく「解釈学的理解」
・ロザルド
【文化は人間の経験を選択し、それを系統づけることによって、その意味付けをする。文化とは狭い意味で、オペラや美術館の事をさすのではなく、広い意味で、人々がそれを通して自らの生を解釈する様々な形態のことをさしている】
『文化と真実』
（古典的解釈と現在の状況のちがいについて）
＜古典＞
イギリス系アメリカ人のペット像とイロンゴット族の豚像がにている：古典では文化のパターンは異文化の影響を受けない独特で独立したもの
・・・交換過程、内部の不一致、食い違い、矛盾は無視されてしまい鵜、その「文化」内に均一のパターンがある事が強調されてしまう。・・・レッテル付け的に発展してしまう。（ある文化に属する人びとが同じように考えて行動すると考えていることを「本質主義」という）

＜現代＞
ホストモダン的状況：矛盾、変化、不平等の問題
・・・集団の均一性を強調したいために「差異と矛盾」を無視できない。社会分析の文化的境界線は遠い未開社会から身近な都会社会へうつった。
身近なマイノリティとの「差異」の接触

ギアツの定義以降（1980ー）変化：人類学の中心的作業は民族誌を「書くこと」であるという認識が高まった
→クリフォード、フィッシャー『文化を書く』
思想背景：今までの「文化」の概念が権力、階層といった人々の日常に介入してくる力に対してあまりに無関心でありすぎたため新たな文化の定義が必要！・・・サイードの『オリエンタリズム』が原点

サイード：欧米人は異文化としてのオリエント（中東）の「文化」を固定して表象することにより、自己の文化を明確化しようとしている。オリエント文化とは他者（西洋）によって勝手に作り上げられたイメージ。（ポストコロニアル：「文化��の背景に支配、被支配の関係がある事を暴いた状況）
※カルチュアル・スタディーズ（労働者階級の文化分析）とはことなる

「文化の本質的な要素とはなんだろうか」
・文化は人々と結びついているのだろうか？
・文化は人々の住む土地と結びついているのだろうか？
・ディアスポラ（故郷から自発的あるいは強制的に離れる人、離散状態）は文化をもたないのか？（ユダヤ人、アフロ・アメリカンなど）
・誰が集団アイデンティティについて語る権威をもつ？

・クリフォード
【有機的な一体性をもち、ある土地に根ざした固有のものという文化概念を捨てること。純粋で真正な文化などもはやあり得ないことを知り、それを嘆くのではなく、断片的で混淆した文化のありようを評価し、根（ルーツ）をなくしたものの経路（ルーツ）をたどること。こうすることでこれまでとは違った世界が見えてくる】
★２つの見方
「消滅の語り」：伝統的な文化の純粋性や真正性が失われると考える／過去に純粋な文化があったとしてそれを守りたい
「生成の語り」：それを新たな文化の生まれるプロセスだと見る／純粋な文化などないという前提から出発

文化は観光によって消滅するのではなく生成されるもの、その結果として表現（M. Picard) 文化に対する自意識の芽生え

伝統や文化が「創造」される（イギリス、ホブズボウム）
しかし新たに作り出されたものは偽物だという意識も存在していた（本質主義的⇄構築主義「すべての文化はつくられたものである」）
本物、偽物を決定するためには結局どこかの文化的基準に即してしまう。
生成的な理論をおしつけるより、本質的な自己を装って「本質主義的に表彰された自己」を演じ返すことによって目的達成を成し遂げようとする。

クリフォード『文化の窮状』
彼らの真正性を証明するはずの「文化」が、その硬直した定義のためにかえって彼らを非真正な存在にしてしまった。
文化、アイデンティティとは極めて状況的なもの。

古典人類学が作り出した魅力的な虚像。作り出した文化の静止画像。



やっぱ人類学いいなーーーーー。
クリフォードよもっ。

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文化人類学の基本書。
異なる文化や社会の研究をフィールドワークによって進めていく。
章によって異なるテーマを異なる筆者が自らの経験、研究をもとに執筆している。

Lesson10では、フィールドワークをしたことで何になるのか、調査対象の人々にとって何になるのか、といったことが書かれていた。

「未開」の地を発展した国の人間として観察することなく、互いが平等な立場で学び、教えるという姿勢を身につけなければいけないと思った。

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11のテーマが論じられているので、興味があるものと無いものが当然あります。

全てに共通するのは、日本で生まれ育って生きている人間には、当たり前と思っていることが、ホントは当たり前じゃないこともある、という事実です。

今、ポスト資本主義や新しい社会の形を模索する時代になっています。自分が知らない他の文化にヒントが隠されているかもしれません。