紙の本
大人の事情を乗り越えろ!
2011/04/10 21:14
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kc1027 - この投稿者のレビュー一覧を見る
東京メトロと都営地下鉄の一元化を目指す猪瀬氏の闘争の書。
石原知事の再選が確定し、震災によって日常感が終焉した現在の日本・東京にとっての、克服すべき大きな課題である地下鉄の現在。
都営大江戸線の開通と東京メトロ副都心線の開通によって東京の地下鉄の開発は終わった。人口減少時代に向かう大都市にとって、顧客である住民の利便性を阻害する要因は、都市間同士の国際的競争の妨げとなり、後世にいらぬ負担を残すこととなる。すでにして優良企業で財務体質も従業員の平均給与も高い東京メトロには、不動産開発を優先して来るべき社会に向けたバリアフリー対応が不十分な面があるとして、猪瀬氏は憤る。
世界の大都市で、地下鉄の経営が一元化されていないのは東京だけだと言う。九段下の駅にはメトロと都営のホームが薄い壁を隔てて閉ざされているところがあり、氏はそれを「バカの壁」と呼ぶ。運賃にしても何だか損をした感じがすることは日常的にあるが、なんとなくキレイでわかりやすくはなっていく地下鉄の駅の表示やロゴマークを前にして、不便さは覆い隠されている感じはわからなくもない。
きっと、一元化されないことによる無駄はある。役所的企業の例に漏れず、顧客志向もきっと足りなくて、それによってトーキョーのサラリーマンはいらぬ不便を強いられているはずで、知らない人間はただ黙々とそれを受け入れるのみ、だったんだと思う。
その小市民的辛さの背景にある事情とは一体なんなのか。震災によって、この社会の日常性の不可思議な点が、「生きていく」という観点からするといろんな問題があることが露呈されてきた。地下鉄のみならず、電気の融通が効かなかったり、省庁の連携はやっぱり複雑だったり、マスコミの質問のレベルがわかってしまったり。今まで「大人の事情」とか言ってわかったような気になっていたものが、まったく子どもじみたものであったりすることもわかった。
地下鉄は利用者のものであると猪瀬氏は言う。石原氏が再選したことで地下鉄一元化は少し前進していくのだろう。そのとき、利用者としてのわれわれは、利便性の裏にある様々な事情に関心を示しながらも、最終的に利益を享受するものとしての節度を問われていくことになる。地下鉄がわたしたちのものであるならば、地下鉄の風景はわたしたちを映す鏡となる。サリンと震災を経た地下鉄は、わたしたちの生きる場所そのものであって、大人の事情を乗り越えていく現場そのものである。
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東京には2つの地下鉄『東京メトロ』と『都営地下鉄』がある。
同じと思いきや異なる事業運営体であるため、改札が別で乗り換えが不便であったり、料金が二重にとられていやだなと前から思っていた。
そんな中、経営統合の話し合いの場がもたれ、個人的に非常に統合に期待をしている。
『東京メトロ』
株式会社ではあるが、その株主は国と東京都がほぼ半々づつの国有企業。
『都営地下鉄』
東京都交通局が運営。
どちらもほぼ国有、なのに別運営。
どうしてこんなことになっているのか、地下鉄の歴史の中にその答えがあります。
利便性向上のためのサービスの一元化には経営統合が欠かせません。ニュースでは、都営地下鉄の負債額の大きさがあたかも問題のように取り上げられています。
しかし、鉄道のようなインフラ型産業は、先行投資・長期安定回収型であり、メトロと都営の財務状況の違いが投資回収の時間タイミングの差だけであることから統合は可能であることがよく分かります。数字を見るとよくわかります。
役人の既得権を守ろうとする動きが見え見えです。ちなみに東京メトロの役員のほぼ全員が国交省をはじめとする天下りの役人です。
日本における鉄道史、一般的な鉄道ビジネスと地下鉄ビジネスの違いなど非常に内容に富んでいて面白いと思います。
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2011/03/25-
都営地下鉄と東京メトロがどの様に共存共栄して来たのかは、目に見えない分、まさにアンダーグランドであった。分かりやすさを期待したが、猪俣氏の緻密的かつ論理的展開に「ちょっと覗いて見たい」という興味は一気に萎えてしまった。後半は目を通すという感覚でページをめくり終えた。ちょっぴり知識は得たが知恵には結びつけることはできなかった。
2011/04/03
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都知事選間近という事で、猪瀬直樹副知事の地下鉄に関する考えと東京の地下鉄の現状を知りたいと思い、読んだ。
東京メトロと都営地下鉄、それぞれの歴史と現状、課題だけでなく、東京における鉄道網形成の歴史も知る事が出来た。
地下鉄一元化を目指す氏の本だから仕方ないかもしれないが、もう少し一元化することによるデメリット(例えば、減収や一元化のために掛かる経費などの諸問題)についても知りたいと感じた。
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んで結局いつ統合されるのー? そもそも全体的な東京の交通をどうしようとかいう視点がほぼゼロ。じぶんちの財政的ほぼ健全さと、戦中だか戦前の地下鉄買収→営団あたりの歴史なぞり、が熱弁なわりには。
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読了です。 データや歴史をもとに分かりやすい主張がされており、納得しました。ただ、一元化が前提の資料群なので、反論も調べないと、本当のところはわからないのかもしれません。しかい、説得力はありました。あとは、実行に向けてのアクションでしょうか。
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東京都副知事による東京都の地下鉄一本化を巡る問題提起。著者の抱いている問題意識は明確に伝わるし、特に、公営的な企業が得た利益というのは誰に還元されるべきかという問題を考える際に、利益剰余金を不動産ビジネスに投資する東京メトロの経営方針は良い反面教師になると思う。ただし、この本、中盤は著者お得意の史実調査に基づく東京都の地下鉄が二重経営に至ったかの分析が長々と続くが、この本で著者が主張したい問題とあまり関連性はないように見受けられたので、正直ないほうがいいのではないかと思うけど。
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会社の副社長の本。
地下鉄一元化について書かれている。
利用者サービスの向上のためには、メトロと都営を一元化すべきという論調で話が進むが、わかりやすく解説してあるので、さっと読めるかな。
ただ、第4~6章の歴史は複雑で難しかったので、ほとんど飛ばした。
各地下鉄の混雑率や深度などの豆知識も手に入る。
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地下鉄と私鉄のビジネスモデルが大きく異なることに、成る程納得。スタイルは違うが、両者の優れたノウハウを海外輸出できないものかと思う。混雑度解消と利便性向上に繋がる地下鉄一本化には、基本的に賛成したい。
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メトロと都営の2事業者が混在する都内の地下鉄について、過去の歴史や問題点を猪瀬さんらしい掘り出し方をしています。
では、どうすれば、一元化できるんだろうか?
その答えは、時間とともに解決できるのだろうか?
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地下鉄は誰のものか…まさにこのタイトル通りの内容。知らなかった、知るべきだったこと多数。問題点だけを提起するだけじゃなく、なぜそうなったかの歴史的背景も考える。いろいろと勉強になった。
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東京メトロと都営地下鉄を一緒にすべきだという、現副知事の主張。
歴史的に2つの団体ができた経緯。他の私鉄とはビジネスモデルが異なるので、今後新しい線路を引かないかぎり高収入であること。
またメトロも、国と東京都のみ株主であり、天下り機関になっていること。
また、平均給与も他の私鉄に比べて高いこと。
バリアフリー化も含めて、東京メトロが改革の必要があることを示している。
東京に住む者としては、便利になると同時に透明化を望む。
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財務状況の話は外でも語られているが、地下鉄と地上私鉄との対比、五島慶太の腕力など、2010 年までの地下鉄の経緯がわかる。
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ツイッターで気になっていて、読んだ一冊。
これを読んで去年からニュースになっていた
地下鉄の統合の本質がわかった。
2重の初乗り代金や面倒な乗り換えなど
改善して欲しいところ。
エチカやエソラ、不動産事業に乗り出す前に
駅に土地を持っているなら保育所など役に立つ
ものを作ってほしいと思った。
エチカとかも流行ってないし。
メトロは民営化されたとはいえ、公的資金で
運営されてきていて、株主も国と東京都だし
利用者の利便性向上などのために統合するべきだとおもう。
それとニュースを見てたときは、負債の多い都営と
合併なんて割にあわないと思っていたけど
上記の成り立ちや現在は黒字であることからも
問題ないものだと思った。
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地下鉄の歴史が面白い。なぜ一元化は必要かが優しく書いてある。私も賛成。一元化会社は独占になるから、強くなりすぎないよう制約は入れて欲しいけど。