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アーカイブズが社会を変える 公文書管理法と情報革命 (平凡社新書)
著者 松岡 資明 (著)
2011年4月、公文書管理法が施行される。これまで記録保存に関して「後れた国」だった日本も、これからは文書不存在では済まされない。公文書の世界で起きている地殻変動を伝え、...
アーカイブズが社会を変える 公文書管理法と情報革命 (平凡社新書)
アーカイブズが社会を変える
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商品説明
2011年4月、公文書管理法が施行される。これまで記録保存に関して「後れた国」だった日本も、これからは文書不存在では済まされない。公文書の世界で起きている地殻変動を伝え、知られざるアーカイブズの宇宙に誘う。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
松岡 資明
- 略歴
- 〈松岡資明〉1950年栃木県生まれ。北海道大学卒業。日本経済新聞社入社。千葉支局勤務、日経マグロウヒル社出向、大阪本社文化担当部長等を経て、東京本社文化部編集委員。著書に「日本の公文書」など。
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紙の本
アーカイブズが時を貫く夢を見る
2011/08/01 10:14
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新書として一般向けに刊行されたのでしょうか。僕のような不案内なものにとってだいぶ敷居が高いのではないかと構えてページをめくったが、とても読みやすかった。
ところどころで挿入される著者の取材に基づいた「日本のアーカイブズの世界」に棲む図書館員、博物館員、学芸員、レコードマネジャー、アーキビスト、ボランティア、企業人、政治家などを含めて様々な人々のアーカイブズという森の中で奮闘している様がバランス良くドキュメントされている。
なかなかかような時間をかけた地味な活動は僕らの目に触れにくいし、感動的な物語が随所にありました。
今年、4月に施行となった公文書管理法によって何がどう変わるのか具体的なイメージが浮かばないが、世界の中で日本のアーカイブズが随分遅れをとっていることは理解できました。章立ては簡潔、明快で啓蒙書として読み進んだ僕にとって小話を挟んだ旅行ガイドぐらいの「見取り図」を手に入れた感じです。
第1章 後れた国ニッポン/第2章 アーカイブズの宇宙/第3章 資料保存の危機/第4章 公文書管理法で何が変わるか/第5章 社会に欠かせぬアーカイブズ/第6章 課題と展望
僕もホンのホンのちょっと、第2章で紹介されている某専門図書館でボランティアをやらせてもらっているが、民間組織、個人が「記録資料」の保存に挑戦するには人のエネルギーだけで足りず、資金の手当はついてまわる。
ある日、この某専門図書館は行政の首長によって年間2000万円あった補助金が2008年以降全額打ち切りになるという状況に追いやられる。
通常ならこここで「解散!」ってなるのですが、ここのスタッフたちはメラメラと闘争心が掻き立てられ会員制図書館として再スタートさせたわけです。
第2章2項「エル・ライブラリーの挑戦」(p35)を本書全体の文脈の中で読むと部外者の僕にも怒りが点火する。八年間で大幅な経費削減、利用者数4倍増を達成しても閉鎖の憂目に会い公的資金の一切を失う。どんなに成果をあげてもそもそも「アーカイブズ」のような腹の足しにはならぬものはカットだと首長の結論先にありの判断があったのでしょうか。
他に「仏教資料文庫」、東京電力「電気史料館」、「アジア歴史資料センター」、山口銀行「やまぎん史料館」、「日航アーカイブズセンター」、などが紹介されていました。
<公共性>とは何だろう?歴史は腹の足しにはならないかもしれないが、「生きる足し」にはなる。アーカイブズには「経済の外」まで網羅する宇宙性がある。世界、地球を超える宇宙までも超えてしまうかもしれない壮大な空間を相手にアーカイブズは記録しようと終わりなき戦いを挑む。
「公文書管理法で何が変わるか」を見届けたいと思いますよ。本書が上肢されたのは、東北大震災の渦中であり、法律も施行される。その最初の大きな仕事は過不足なく東北大震災を「記録」、「保存」することだろうと思います。
全世界の「記録する人たち」の壮大な蟻のドラマはアナログであれ、デジタルであれ間断なく続けられていると思うと人の宿痾なんだと思う。言葉を記述し夢を見る。前世から後世へと時を貫く。
電子書籍
日本のアーカイブス整備事情
2015/09/29 22:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:白髪雀 - この投稿者のレビュー一覧を見る
公文書の保管、公開について日本が諸外国に比べて立ち遅れていることは予想されていたことであるが、中国、韓国をはじめアジア諸外国の中でも立ち遅れていることを知り、かなりショックである。
本書の書かれた2011年から比べ状況はだいぶ進んでいるとは思うものの、もともと文書で残すという素養がない、もしくはそのような余裕がないという国ということでありましょう。
個人的にはかなり記録魔のつもりではあるもののこれをストックしておく余裕がない。結局はほとんど残っていない。最近はPDF化という手段が出てきた来たのだが、こちらも時間のかかる作業でなんでもかんでもPDF、というわけには行かない。また、どのようにバックアップをとるか、どのようにインデックスをつけるかということが問題になる。
日本の国自体も同じでありましょう。やはり、アーカイブズ化に係る作業量、ストックの方法、整理にかかる人手。言うは安く実行は難しである。
それにしても、昨今種々のデータが電子化され、ウェブで公開されていくのは有難いものである。
紙の本
「公文書管理法」本書を読めば、これが国の有り方にも関わる重要な法律であることが分かる。
2011/07/06 23:47
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YO-SHI - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、日本経済新聞社の編集委員を務める著者が、「公文書管理法」という法律がこの4月施行されたことを受けて書いたもの。著者は、およそ8年半前に公文書問題の重要性を知り、その後に数多くの機関、個人を取材している。「公文書管理法」は、震災後の世の中がざわつく中で、その施行はあまり注目されなかった。しかし本書を読めば、それが国の有り方にも関わる重要な法律であることが分かる。
「公文書管理法」とは、国や独立行政法人等が作成した、公文書等の管理の仕方を定めたもの。その肝は、歴史資料として重要な公文書は、保存期間満了後に国立公文書館等に移管する、としたことだ。これによって、将来の検証に応え説明責任を果たすことができる。
著者が冒頭に触れている「消えた年金記録」の問題を引き合いに出せば分かりやすいが、これまでは非常に杜撰な記録管理がされてきた。しかし杜撰なことだけが問題なのではない。公文書は3年、5年、10年などと保存期間が定められていて、その期間が満了すると廃棄されることになっている。つまり、キチンと管理していても、いや管理されていればいるほど、期間満了後には参照することができない。例えば、米国の記録を端緒に明らかになった、40年前の沖縄返還時の「密約」は、(文書が廃棄されていれば)日本側からは検証ができないのだ。
それでは「公文書管理法」の施行によって、状況は一気に良くなるのかと言えば、そう楽観できるわけではないらしい。本書で著者は、法律の成立過程を追い、各所の公文書館等の事例を紹介し、その実情を明らかにすることで、「公文書管理法」後に残る課題を浮き彫りにしている。
ひとつだけ物足りなさを感じたのは、「これからどうなるのか」という展望を、あまり読めなかったことだ。「アーカイブズが社会を変える」というタイトルに、「どう変わるのだろう?」を知りたいと思った。「公文書管理法で何が変わるか」「課題と展望」という章もあるのだけれど、私には、「これからどうなるのか」は、うまく読み取れなかった。