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- カテゴリ:一般
- 発売日:2011/04/14
- 出版社: 河出書房新社
- レーベル: KAWADE夢ムック
- サイズ:21cm/223p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-309-97752-2
紙の本
梅棹忠夫 地球時代の知の巨人 (KAWADE夢ムック)
文明を見わたし、時代を見とおした知の巨人・梅棹忠夫。日本探検「近江菅浦」の草稿や幻のベストセラー「人類の未来」の構想を公開するほか、井上ひさしらによるエッセイ、対談、原画...
梅棹忠夫 地球時代の知の巨人 (KAWADE夢ムック)
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商品説明
文明を見わたし、時代を見とおした知の巨人・梅棹忠夫。日本探検「近江菅浦」の草稿や幻のベストセラー「人類の未来」の構想を公開するほか、井上ひさしらによるエッセイ、対談、原画によるモンゴル遊牧図譜なども収録。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
まだまだ「使いこなされ」ていない「ウメサオタダオという発想法」を知るために
2011/05/01 15:35
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サトケン - この投稿者のレビュー一覧を見る
まるごと一冊ウメサオタダオ。著作集と単行本に未収録の文章と対談を中心に収録した本書は、梅棹忠夫ファンにはうれしい一冊だ。
本書を通読してあらためて思うのは、梅棹忠夫の発想には、戦前のモンゴル研究が、最初から最後まで通奏低音として流れているということ。初公開の「原画によるモンゴル遊牧図譜」は、敗戦後のどさくさのなか、日本に持ち帰ることのできた貴重な資料である。
定住する農耕民の発想ではなく、京都という「都市住民の発想」。「使いこなす」という動詞に端的にあらわれた「職人の発想」、あこがれの対象であったモンゴルを中心とした遊牧民の「ノマドの発想」。文明論だけでなく、情報論もまたこのベースが根底にあるような気がする。
同じく関西生まれで理系出身の浅田彰との1996年の対談も、読んで得るものが非常に多い。理系のセンスで人文科学の分野を開拓してきたこの二人は、世代が大きく異なるとはいえ、記憶術やデータベースにかんする考えなど、共通するものも多いことがわかる。「分類するな検索せよ」など、インターネット時代を先取りした発想である。この対談も2011年時点で読んでもまったく古さを感じさせないのは、本質論を語っているからであろう。
ロングセラーの『知的生産の方法』で、ずっと黙殺され続けてきたローマ字論について、そもそもの思想的根拠がどこにあるかがわかって興味深い。とくに、エスペラント語をめぐっての、モンゴル学者で言語学者の田中克彦との対談では、梅棹忠夫が筋金入りのエスペランティストであったことの理由が明確に語られており、ある意味では田中克彦よりもはるかにラディカルな言語思想家で実践家でったことがわかる。耳で聞いてわかる日本語の改革に生涯をかけて精力を注いでいたことに、失明後も旺盛な知的生産を行うことのできた秘密の一端があるようだ。
梅棹忠夫の『文明の生態史観』が江上波夫の『騎馬民族国家』とならんで、敗戦後の日本とアジアにおいて大きな意味をもっていたことが、中国領の内モンゴルで知的形成したモンゴル学者の楊海英氏の文章で再確認されるのも貴重な証言だ。戦後の自由な風を準備したのは、戦前にモンゴルの草原でフィールドワークを行っていた、ジャンル横断型の型破りな学者たちであったことは、実に幸いなことであったのだ。
ここにはすべてを紹介しきれないが、まだまだ「使いこなされ」ているとは言い難い「ウメサオタダオという発想法」を知るために、本書は実によく編集されたアンソロジーになっている。多くの「発見」がある本書を、ぜひ多くの人にも薦めたいと思う。