紙の本
お月さん、とんでるね 点頭てんかんの娘と共に生きて (銀鈴叢書 ライフデザイン・シリーズ)
著者 夏野 いづみ (著)
障害とは、決して悪いものでも、特別なものでもなく、人間の命の一部なのではないか−。点頭てんかんという重い疾病と知的な障害を抱えながら、25年間を生きてきた娘のありのままの...
お月さん、とんでるね 点頭てんかんの娘と共に生きて (銀鈴叢書 ライフデザイン・シリーズ)
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商品説明
障害とは、決して悪いものでも、特別なものでもなく、人間の命の一部なのではないか−。点頭てんかんという重い疾病と知的な障害を抱えながら、25年間を生きてきた娘のありのままの姿を綴った記録。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
どこまでも深い母の愛と苦しみ、そして喜び
2011/04/18 19:47
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mieko - この投稿者のレビュー一覧を見る
障害を持つ子どもと生活する、生きていく、ということを、私は特別なことだと他人事ののように漠然と思っていた。しかしこの本を読みながら自分の子育てを振り返ると、その認識は誤りであったと気付かされた。
私の息子は小さいころから「少し変わった子」だった。身体障害とは違って、知的障害というのは外見だけでは判断できず、周りの人に躾がなっていないと誤解を受けやすい。まだ母親としても未熟だった私は、息子の少し変わった様子が、はじめての子育てによる私の神経質な感覚からきているものなのか、それともある種の障害であるのかを判断できず、ずいぶんと右往左往する子育てであった。しかし私たち親子は幸いにも周りの人々に恵まれ、受け入れられ、今、高校生になった息子の「少し変わった」部分は、しっかりと息子の「個性」となり厚みのある人間に成長しつつあると思う。結局息子は、障害があるという診断にはいたらなかったけれど、私はずっと障害児と健常児の境目にいる子どもと暮らしてきたような気がする。
点頭てんかんという障害を持つ娘・ひな子ちゃんを、特別支援学校で学ばせるか公立の普通学級で学ばせるかを悩み、そして人々の助けなしでは生きていけない娘の将来のために、あえて広い世界で生きていくための第一歩として公立小学校の普通学級に入学を決めたご両親の決断。その後待ち構えていた、障害を持つ子どもと健常児、そしてその保護者や指導者たちとのあいだで繰り広げられる様々な問題を乗り越えていく様子は、どんなにか心身のすり減るできごとであったかと胸が痛くなった。それでも筆者であるお母さんの、わが子への、そしてわが子をとりまく子どもたちへの愛情に満ちた視線はゆるがず、丁寧に問題と向き合い一歩一歩前に進んでいく。親亡きあと、わが子が生きていけるようにと、すべての人が共に生きる社会を目指して日々努力してきた筆者の25年間の思いを、この本を読んで受け取ることができる。
私自身の子育てを振り返っても、障害があるかないかという線引きは極めて難しいと思うし、私たちは誰もが病や事故で障害者になる可能性がある。「排除ではなく共に」ということを考えさせられる一冊である。