紙の本
山下敦弘監督映画化原作
2017/09/06 14:33
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
「オーバー・フェンス」が秀逸です。短く美しい函館の風景とともに、それぞれの旅立ちを感じることができました。
紙の本
若者たちのけだるい夏を描いて見事な表題作、佐藤泰志「黄金の服」。
2011/08/01 13:21
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
3編収録。やはり芥川賞の候補にもなった表題作「黄金の服」が一番
いい。「泳いで、酔っ払って、泳いで、酔っ払って」を繰り返す男女の
ひと夏の物語。主人公の義男は24歳、大学生協の書籍部に勤める彼は、
その大学の学生である道雄や慎と毎日のようにプールで泳ぎ、夜はジャ
ズバーで酒を飲んでいる。義男が惹かれているアキは離婚経験のある2
つ年上の女。慎が心を寄せる文子もそこに加わる。リアルな会話と何か
が起こりそうで起こらない日々。5人の造形の見事さと佐藤らしい巧み
な表現で、いつの間にか物語に引き込まれていく。けだるい夏のけだる
い毎日、やり過ごすように日々を消費していく若者たち。彼らには夢や
希望はあるのだろうか?義男とアキの恋の行方は?ラスト、心を残しな
がらもすべてを受け入れる主人公の姿に共感する。この小説ではいたる
ところに作者の姿が透けて見えるような気がする。それは、珍しくつい
ている「あとがき」のせいだろうか。
「オーバー・フェンス」は職業訓練校を舞台にした話。タイトルにし
てもラストにしても作者の意図があらわになり過ぎていて残念。これも
芥川賞候補だというが、どうだろう?「撃つ夏」は入院中の男が主人公
で、同室の男や友人とのやり取りがなかなかいい。
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このなかの「オーバー・フェンス」が来年2016年の夏に、映画になって公開されるそうです。
そう、それは『海炭市叙景』そして『そこのみにて光輝く』に続いて、佐藤泰志の小説の映画化3作目になるのです。
佐藤泰志は、中学生の頃から小説家を目指して高校時代は青少年文芸賞ほかに入賞して、村上春樹とも同時代作家と評価されながら、でも知名度の高い文学賞には候補どまり続きで、そのためついには精神に異常をきたし失意のうちに自死した不幸な小説家でした。
この、彼が三十六歳のとき書いた作品「オーバー・フェンス」も、都合5回目の芥川賞候補となりましたが、残念ながら受賞しませんでした。
・・・白岩という主人公は、妻と生後間もない赤ちゃんと別離後に東京をあとにして故郷・函館に帰って、職業訓練校に行きながら失業保険暮らしでした。
最小限の人づきあい・物のない部屋・ビールを二缶 毎日買って帰っての読書三昧生活。訓練校での実習にも、もうすぐ始まる学科対抗ソフトボール大会の練習にも、いっこうに身が入らない。
そんなとき仲間の代島から聡(さとし)という名の女性を紹介されたりする。
年も前職も様々に違う訓練校の仲間たちは、大半が一年先の卒業後も建築の仕事をするつもりがない。
全員が流れ流れてなんとか失業保険でやっとの暮らし。
欠損した左手小指を軍手で隠す者・海底トンネル掘りだった男・たった8ヶ月しか自衛隊勤務できなかった者・・・皆がみな、思い描いていた生活やずっと続くと思っていた暮しに、挫折し逃げるようにして、今このときにおなじ場所にいる。・・・
この「オーバー・フェンス」は、あきらかに彼自身が夢を諦めかけて生まれ故郷の函館に戻らざるを得なくなって、いっとき職業訓練学校に通っていた実体験が下敷きにされた作品です。
佐藤泰志が描いてきたものはいったい何だったのか。そう、それは、歴史の濁流にのみ込まれ個を失いかけ、自分はいったいどうなるんだろう、どこへ行くんだろうという喪失感と不安感、でも微かなその先にある希望の光・・・。
登場人物はみな一様に何かに挫折し、こころの底にあきらめに似た気持ちを持っている。けれども、そのどうしようもなくぱっとしない冴えない日常の内にも、一瞬どきどきするようなきらめきの瞬間がいつもある。暗く広い大海に漂流するようなときには、海面のキラッと光るその瞬間はとてつもなくせつなくまぶしく感じられるもの・・・。
主人公の白岩は、いつか忘れていくだろうと願いながらも、何をしてもどこにいても・・・かの日に妻と産院で浮き浮きしながら子どもの名前を考えたこと、迷路になった彼女の心を解きほぐすのなら何でもするつもりだったこと、他人の目なんかどうでもいいから早く妻が自分を取り戻して、二人は実際若いが堅実で明るい家族になることができると信じていたことを・・・思い出してしまうのでした。
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今までに読んだ佐藤泰志の著作の中で、頁をめくる手の動きを最も忘れ去って読むことができた。
特に表題作。
正直、著者の他の作品では、仕事の描写、作業の描写が淡々と連なるあたり、読みが失速してしまうことがよくあった。
たぶん、これは私自身、作中の仕事に対して特にこれといって予備知識も思い入れも持てていないことと、そもそも書かれた当時の時代の空気が全くわからないことに原因があると思う。
一方、表題作は、汗水流して体を動かすといういつもの佐藤泰志らしさの一つが影を潜めているぶん、わたしにとってこれまでとは喉越しの違う一作だった。
僕と修治、アキと文子、プールと海、海水浴場のブイ。
対比と越境というモチーフがふんだんに盛り込まれていた。
解説もじっくり読めたので、解説者のことも知りたくなった。
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初めて佐藤泰志の作品を読んだが、久々に良い読書だった。その上、夏の終わりに読むには。
村上春樹だ、大江だ、中上だ、と言われているみたいだけれど(まぁ、確かに雰囲気は似ているところもあるけどさ)、彼の作品はそれ自身でググッとくる。全部好きだったが、表題作が一番好き。
今とってもビールが飲みたい。
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輝いて乾いていた夏の思い出。
夏の輝いて乾いた季節に友達と彼女で泳ぐ、酔っ払う、音楽を聴く、本を読む、手紙を書く。誰もが気にも留めない小さい自分の世界を綴る静かでゆっくりと時が過ぎる世界を堪能して下さい。
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読んでるときは異常なくらい集中してて、読み終わるとどっと疲れてるのに、すごく重くて痛くて、焦燥感やとまどい、いらだちがヒリヒリと伝わってくるのに、読後感がどうしてこんなに良いのだろう。どうにもならない思いとひとすじの光が、沁みる。ほんとつくづく、佐藤泰志が生きていたら、いま、どんな小説を書いてくれただろう、と、つい、おもってしまう。
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若者の閉塞感やもどかしさ、息苦しさを描く場合において、他人の目を意識しすぎると村上春樹になり、自分に正直であろうとし過ぎると佐藤泰志になる、という極論。
外部を意識しすぎた若者の年輪の行く末は、1Q84に表わされるようなファンタジーとなるが、佐藤さんが描く未来はどうだったんだろうと思わされる。ただ、あんまドラマにはならんだろうなー。良くも悪くも。
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9月に公開される映画『オーバーフェンス』の原作。
函館が舞台。
主演がオダギリジョーだから、観に行くけど、
原作は、うーん。文学❗️という感じ?で
したな。
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この人の作品は主人公の性格を読み手が「この人はどんな人なんだろう」と必死で読み解こう読み解こうとさせる。
現実社会のように、少しずつしか主人公たちの性格を知ることができない。最後にやっと、あぁこんな人だったのかとわかる。
せりふ回しが独特(昭和?)。
言い方に変な遠慮などがないからすがすがしい、けど実際こういう言われ方したら現代っ子は傷つくかもな~なんて。
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自ら命を絶って20年近く経過してから評価されるようになった不遇の作家・佐藤泰志。映画化された函館3部作というべき『海炭市叙景』(2010)、『そこのみにて光輝く』(2013)、そして今年公開されたのが『オーバー・フェンス』。本作は『オーバー・フェンス』の原作を含む作品集。
収録されている『オーバー・フェンス』、『撃つ夏』、『黄金の服』はいずれも昭和の空気を色濃く感じる青春劇。映画『オーバー・フェンス』で蒼井優が演じた聡(♀だけど名前はサトシ)はもっとエキセントリックでしたから、山下敦弘監督の脚色だったのかと思いきや、原作の聡と『黄金の服』のヒロイン・アキを混ぜ合わせたのが映画版の聡でした。映画に比べると原作はいささか退屈だっただけに、上手い映画化。退屈だったと言いつつも、3編とも妙に心に残り、どの話も目の前に情景が浮かぶようです。もっともっとこの作家の小説を読んでみたかった。早逝が残念でなりません。
映画『オーバー・フェンス』の感想はこちら→http://blog.goo.ne.jp/minoes3128/e/67d162d45ec3a1dcf751cac804913d31。
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収録作「オーバー・フェンス」「撃つ夏」「黄金の服」いずれも魅力的な作品であるが、特に「黄金の服」が好きだ。
葛藤と衝動の10代の余韻を残しつつ人生の方向性めいたものが見えながら必死で抵抗を試みる20代前半。それぞれの人生の澱と日々の刹那の間のある若者の姿を描く。佐藤氏はそうした若者の姿が秋の夕暮れ時の稲穂と同じように黄金色に映ったのかもしれない。
佐藤氏の描く世界は閉塞感漂い決して明るいものではないが不思議と前向きさを感じさせてくれる。
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その他に「オーバーフェンス」「撃つ夏」「オーバーフェンス」はオダギリジョー蒼井優松田翔太キャストでの映画化。
付箋
・その時、僕が欲しかったのは職業でも女でもなかった。車だった。←他の小説でも主人公は車を欲しがっていた。
・デ・ニーロの新作←何だろう?日曜日には溌剌と
・スーパーマンの新作かシルビアクリステルの婆さんになった裸
・僕はちょっと咽を潤す程度にしたかったのでラムハイを頼んだ
・「ブルックリン最終出口」を読もうかと思ったが、とてもついて行けそうになかった。
・読みさしのセルビーの本
・何よりも僕のアキに対する嫉妬深い感情から、自分を遠ざけたかった。
・彼女への連絡手段が手紙
・三冊の本の装丁をしてくれた友人の高専寺赫
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この人の作品読むの初めて
映画のオーバーフェンスが良かったので読んでみたけど、よくもまあこんなクソつまんない話を面白くブラッシュアップできたもんだと思った
映画の製作者たちの力量に驚かされた作品
つまんなくて全部読みきれなかった
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2021/6/28
佐藤泰志作品集より、主人公の線は太い。
2021/7/11
単行本にはその他2編収録、オーバーフェンスは秀逸。