紙の本
結局なんなんだろう
2016/09/28 15:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ポージー - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終わって、悪い意味でなく結局のところなんだったんだろうと思った。現代は色んなテーマにあふれすぎている。そのテーマたちは個人からメディアまで様々な単位で日々ざっくばらんに取り上げられ、多様な感情や言葉にまみれてどんどん捨てられていく。しかもその言葉はその場のノリに合わせたテキトーなもので、すぐに対象を曖昧であやふやな世界に飲み込んでしまう。この本では殺人が起きたり人間の幸福について議論されたりと、明確なものが硬い文体で物語られている気がするのだが、なぜだか結局なんだったのと思ってしまうのはそういうことなのかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
小難しい文章を書くイメージの平野さんだったが、というか過去に読んだ初期2作とは文体が違ったので、読み始めてすぐに過去に読んだ作品よりも読みやすくてこれは楽しめるかもと思い、なんてことない話が続く前半の時点でぐいぐい引き込まれていった。
上巻を半分ほど読んだあたりで、世界が広がっていく感覚というか、長編独特の良さを感じることができ、使われている語彙を楽しみながら丁寧に読み進めた。
人にどこがどう面白いと説明するのが難しいが読んでいて非常に楽しい、下巻にも期待。
投稿元:
レビューを見る
救いようのない物語へ突き進む凄惨な序章。下巻も読み終わった今、正直なところ、ここまで書かないと「揺さぶられない」かと言われれば、そうじゃないだろうと反論したいというか、逆にこれくらい人間の「善性」を逆撫でしないと「考えさせられ」なくなってしまった(のかもしれない)読者像の気配にゾッとした。
ここには、我々が「常識ならば」という参照先をもつ数々の罪と罰と痛み/悼みの「感覚」を真っ向からぶち壊し、「考え直す」という表現もはね飛ばして、ただただひれ伏すことしかできない「現実」がある。「取り返しがつかない」、ただそれだけだ。
投稿元:
レビューを見る
「決壊」(平野啓一郎)読み終わりました。これまでに読んだ平野さんの小説の中でこの作品が一番震えた。深く病んだ今の世界に生きる人々の『心の闇』と『離脱者』が解き放つ『狂気の発露と伝播』を克明に描ききり、日常生活の中に潜む『何か』への恐怖をあぶり出す傑作だと思います。
投稿元:
レビューを見る
主人公のイメージが平野啓一郎にそのままあてはまるので、そのつもりで読み進めてみる。
実際に主人公の行動や考えには、たぶんに著者の思想も含まれているんだと思われる。
知的で冷静な主人公が、事件に巻き込まれ、壊れていくまで。
人身事故で電車が止まることに慣れすぎているように、他者の深い闇を想像することや、社会のなかでの排除性や他者への攻撃に対する実感まで薄れているのはないかという気がしてくる。
投稿元:
レビューを見る
取り返しのつかない凄惨な現実一点に向かって、人の強い思考をなぞってヒビが走っていく。ヒビは「悪魔」の一打で決壊へ。
「あなたは殺人者である。たとえ世界が、卑劣にも捏造した事実であったとしても、それは結局、不可避の運命だ。それ以外の何でもない。世界はあなたを選んだ。なぜか?あなたに、殺人以外の『幸福』がないことを知っているからだよ。」
相変わらず「プロットの時から文章削ること一切考えてないのでは」と言いたくなる思考のボリューム。著者は中二病なの?と途中うんざりしそうでしたが、それでも下巻まで手にとる気になったのは、「中二病」という言葉で把握した「つもりにしている」現実の一部があることに気付くから。
アイデンティティーの複数性、という考え方は「ドーン」に引き継がれているんですね(「決壊」は「ドーン」より以前の作品)。
「この著者はこういう哲学を持っている」と、明確な印象を持ってその著書をとれる作家、最近(比較的若い作家では)まれな気がしますが、平野さんはそんな一人だと思います。それでいてどの話も同じような雰囲気、というマンネリには陥らないから飽きない。
「頭がいい」かどうかとかよくわからないけれど、読んでいると、言葉を通して著者が「ぶつかってくる速度」がとても速く、また意志をもって敢えて乱暴なぶつかり方をしてきているよう感じる。その度胸に敬服はします。
凄惨な描写をすればいい、ということではなく、えぐい現実を突きつければいいということでもないし、自分哲学を書きなぐればいいということでも勿論なくて・・・
押し付けがましくないのに、明確な意思を感じる。そのバランス感覚が、嫌味がなくて好きなのです。突きつけている現実は「現代」だけれど、とてもクラシックな感じがする。
下巻に続く。
上巻の最後の時点で、もう、取り返しつかない事態になっていて・・・このあとこなごなに散っていくだけであろう物事を思うと、その後味を回避したい気持ちから、読む意義を自分自身に問いたくなるんだけど・・・
なんで読むのか。
こういうことを書く作家がいるからです。昔からいたけれど、最近あまりいないからです。
投稿元:
レビューを見る
様々な決壊の形があるが、上巻は箍が外れる、堰を切るという段階の前。じわじわと不安感を助長し、ダムの水が溜まるまでを静かに、丁寧に描いていく。
時に丁寧すぎて飽きを招くが、スティーブン・キングのシャイニングのように前半全てを、決壊にいたるまでの経緯に費やすことで後半のスピード感を演出していく。次に繋がるための我慢の前半。
投稿元:
レビューを見る
初めて読む作家。
文章に重さがあってよい。
が、とにかく長い。
心情の描写がめちゃくちゃ長い。
会話の中での哲学や政治への小難しい解説や主張もめちゃくちゃ長い。
この辺をちゃんと読んで理解しておかないと、登場人物の行動や心情を考察できない
というのならなかなかしんどい。
その辺はそこそこにしか読まなかったけど、
とりあえず下巻が楽しみなくらい面白いので、
まぁいいかなと思います。
投稿元:
レビューを見る
いままで平野さんの小説は文体もテーマも重そうと思って、なんとなく避けてしまっていたのだけど、読みやすいかった。他の作品も読みたい。
投稿元:
レビューを見る
まだ面白いゾーンまで達してないっぽいけど十分面白い。平野啓一郎好きだな。一つずつの事象の裏に意味を考え過ぎなとことか。
投稿元:
レビューを見る
順風満帆と思える生活の中で自殺願望を抱く兄、妻子がいながら満たされず疑念を抱く弟、隠居生活でうつ状態に陥る父、周りから浮いてしまっている中学生、そこに<悪魔>が忍び寄り、決壊が始まる。
***
一回読んだだけでは理解できていなかった、崇の内省的な苦悶や哲学的な思索の数々が、<悪魔>の登場後に改めて浮かび上がってきて、これからどう結集していくのか楽しみ。
複数の視点からの描写や喩えを含んだ文章の連続に、想像を刺激され続けて読んだ感がある。人の多面性と某国をダブらせたり、言葉による拘束など面白いアイデアがいっぱいあった。
投稿元:
レビューを見る
比較的面白く読めたが、物語が大きく展開するまで、少々辛抱が必要かもしれない。主人公の人物描写は当然必要なのであろうが、上巻での親友の室田との会話のくだりは食傷気味だ。
とは言え、「重たい」小説が好きな自分としては、かなりの長編にもかかわらず、すんなりと読めた。
重犯罪の果てに生起しうる様々な悲劇を改めて認識させられ、どっぷりと「哲学的」な思考ができた。
作者の平野氏は頭のいい人なんだろうなと思う。文章の一つ一つ、表現の細部にわたるまで計算されている。ただ、自身の才能に酔っているのではと感じる個所も多少あった。
「文学」なんだと思った。
投稿元:
レビューを見る
優秀で世界を冷淡に見つめる兄と平凡な日常を愛する弟。テーマは犯罪といえば結構シンプル…かもしれないが。犯罪はあくまで題材であり、テーマは宗教観や世界観といった領域にまで踏み込んでいる。上巻は、ストーリがようやく進みだしたといった内容。
投稿元:
レビューを見る
表4のあらすじからサスペンスを期待したのに、事件が起こるのが上巻のラストって遅過ぎだろ。最初の300Pはホントに必要なのかな? 読み終われば感想変わるのかもだけど、ちょっとフラストレーションが溜まった。
投稿元:
レビューを見る
実際は星など1つたりとも付けたくありません。マイナス5つ星と言ってもいいくらい。
難解も難解、とにもかくにも非常に難解な文章が特徴。と言うよりは“書き手の独りよがり”による読み難い文章と言った方が正確かも知れない。そんな読み進めづらい文章が、序盤からこれでもかと全開で、それが頁を繰る毎に益々酷くなっていく。
表紙だけを観て上下巻をまとめて購入してしまったのですが、正直言って、本好きな人にもそれ以外の人にも決してオススメ出来ません(ムリ!)。作者はインテリを自負していらっしゃるようですが、とてもじゃないけどこの作者が評価される理由が皆目判らない。小ムズかしい文章を羅列すればアタマがいい、とでも思っているのだとしたら… ため息しか出ない。
途中からは完全に斜め読みした挙句、古本屋に持っていくのも面倒になってコンビニのゴミ箱へ放り捨ててきました。金返せ、と言ってみても詮無いので諦めです
(;T T)=3