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商品説明
長嶺亨は脱サラをして父親の山小屋を継いだ。父をなくしたOL、84歳のクライマー、7歳の女の子、ホームレスのゴロさん…美しい自然に囲まれたこの山小屋には、悩める人を再生する不思議な力があった。傑作山岳小説『還るべき場所』の作者が描く登山の魅力。【「BOOK」データベースの商品解説】
長嶺亨は脱サラをして父親の山小屋を継いだ。父をなくしたOL、84歳のクライマー…。この山小屋には、悩める人を再生する不思議な力があって−。奥秩父の山小屋を舞台に描く山岳小説。『オール讀物』掲載を書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
春を背負って | 5−51 | |
---|---|---|
花泥棒 | 53−99 | |
野晒し | 101−151 |
著者紹介
笹本 稜平
- 略歴
- 〈笹本稜平〉1951年千葉県生まれ。立教大学社会学部社会学科卒業。2001年「時の渚」でサントリーミステリー大賞と読者賞、04年「太平洋の薔薇」で大藪春彦賞受賞。他の著書に「還るべき場所」等。
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紙の本
山の素晴らしさ、人の心のあたたかさが伝わってくる珠玉の中編集。
2015/08/11 17:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
予想外、予想以上の内容だった。笹本稜平といえば、警察小説にしろ山岳小説にしろかなりガチンコのイメージがあり、それが気分の時もあればあんまり…という時もあるのだが、この作品はいい意味で私のイメージを裏切っていた。奥秩父の山小屋を舞台に、山の自然とともに生きる人々が清々しく描かれている。全編に漂うやわらかで爽やかな空気が何よりいい。
父親を事故で亡くし、山小屋を受け継いだ亨、父親の後輩で今はホームレスのゴロさん。ふたりが一緒になって山小屋をやっているのだが、その和気藹々とした雰囲気がとてもよい。途中からは自殺しようとしてやめた美由紀もメンバーに加わり、会話にいっそう幅が出る。美由紀のつくる独走料理も魅力的。ゴロさんが時々展開する人生論(というような堅苦しいものではないのだが、人生の荒波にもまれたゴロさんならではの話)も含蓄深い。シャクナゲの盗掘問題やダブルストックが道を崩す問題など、実際に山小屋が直面している問題を盛り込んでいるところも頷かされる。
この作品は六編の話から成り立っていて、表題はひとつ目の話によっている。何となく素敵な表題だと思ったが、読んでみて、ああ、そうかと腑に落ちるとともにじんとした。春、山小屋を開くための荷物をボッカで背負いあげる。その作業こそが、亨とゴロさんにとって春の到来なのだ。だから、「春を背負って」。山を愛する気持ちがつまったとてもいい表題だと思う。