「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
紙の本
ロコス亭 奇人たちの情景 (創元ライブラリ)
誰にも存在を認めてもらえない哀れな男、葬儀があればどこへでも飛んでいく謎の女、指紋理論に固執するあまり自ら逮捕されてしまう男。“ロコス亭”に集まる奇人たちが物語と物語の間...
ロコス亭 奇人たちの情景 (創元ライブラリ)
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
誰にも存在を認めてもらえない哀れな男、葬儀があればどこへでも飛んでいく謎の女、指紋理論に固執するあまり自ら逮捕されてしまう男。“ロコス亭”に集まる奇人たちが物語と物語の間を、そしてその内と外を自在に行き来し、読者を虚構と現実のはざまに誘う、知的で独創的で、とてつもなく面白い小説集。【「BOOK」データベースの商品解説】
〔「ロコス亭の奇妙な人々」(1995年刊)の改題,改訳〕【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
アイデンティティ | 13−33 | |
---|---|---|
作中人物 | 34−65 | |
物乞い | 66−85 |
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
書店員レビュー
これは面白い!! ...
ジュンク堂書店吉祥寺店さん
これは面白い!!
登場人物の人生が次々に絡み合い、くるくるとストーリーを変えて読者を翻弄する。ロコス亭に集まる奇妙な人物たちを描いた小説集なのだが、その登場人物たちが作者の意図から外れてどんどん勝手に動き出す。
読み手は登場人物に翻弄され「???」となりつつ読み進める。マジックリアリズム・幻想文学・江戸川乱歩などを好まれる方にはお勧めです。
そして、本編だけでなく巻末のマッカーシーの後書きがまた面白い。そしてそして、解説のなかの作者のインタビューがものすごく面白い。こんなに隅々まで面白い本を出してくれた出版社によくやってくれた!と言いたい。
文庫担当
紙の本
作者VS作中人物
2011/08/09 07:19
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:muneyuki - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は短編集の体裁を取り、一話完結型となっていますが、
こっちで出たキャラクターはこっちではこういうポジションになってて、という群像劇的な一つの物語に収斂される構造になっています。
手塚治虫に代表されるような、「スターシステム」が柱になっているのです。
例えば手塚作品の常連である、ヒゲオヤジやアセチレンランプ等が様々な作品において様々な役どころについているように、本書『ロコス亭』でも明らかに作中人物達はあちこちの物語を飛び回って、作中人物を演じています。
その演じている様を殊更強調してくるのが、「*(注)」の存在。
一般的な使われ方と同じ様に、彼らは一文の終了間際に登場して、その一文の句読点の様に素知らぬ顔で、さも当然の様にポチッと座っています。
一般的な使われ方なので、「其れ(その一文)がどういう事なのか」を説明する役割を持って彼らは居座っているのですが、其れの何が特殊なのかと言えば「その一文を演じている時、演じている役者は実際どんな気持ちで居たか、またその役者は通常時はどんな人なのか」という裏事情みたいなものが見開きページ左端に掲載してあり、そこへのリンクとして彼らは作用しているのです。
*何人かの人(ドン・ホセ・デ・ロス・リオスもしかり)は、どうひいき目に見ても不快をもよおすこの場面は不謹慎だ、マダム・チネラートやここで扱われているような子供は描くべきでない、と異議を唱えている。僕だって異議はあるのだが、チネラート本人が、本編のこの場面で俺は悪の権化と化すと言って聞かなかったのだ。 『チネラートの人生』
ここで「僕」と名乗っているのは、作者のフェリペ・アルファウ。
彼までもが作者という立ち位置と作中人物を行ったり来たりします。
しかし、誰がこんな無茶苦茶を望んだか。
この本の成立を望んだのは、勿論作者のフェリペ・アルファウ。
しかし、この本の在り方を望んだのは、作者でも読者でも無く、登場人物たちなのです。
正に『作中人物』という話にはこうしたスタンスがムックリと表れていて、
作中人物、ガストン・べハラーノは現実に浸食し、作者に筋書きを変える要求まで出してきます。
虚構の住人達にとっての現実は、虚構の中に在る。
けれども、私達にとっての現実の中で幾らでも「嘘」、演じる事、お世辞を言う事、取り繕う事が存在するなら、虚構の中でも其れは有り得ます。
僕の四肢は僕の意志とは無関係に動いたように感じられた。 『犬の物語』
「スペイン」という国の在り方が緻密に、細密に描かれた本です。
しかし、其れ以上に「物語の在り方」を形にしたような本である、と僕は思います。
現実もまた、小説世界と同じ様に、不明確な、不確定な、けれども一種予定調和的な物語なのです。
そこを疑ってかかるべきではないか、と考えさせられた。
現実の現実感を疑わされた。
そうした側面を持った、危険な小説とも言えます。
『犬の物語』中の「僕」のように、あなたも意志と無関係に体が動く感触を感じた事がありませんか?
あなたも誰かに動かされているんじゃないですか?
あなたの現実が「本当の現実」である事を、あなたは証明出来ますか?
『ロコス亭』の奇人たちは、小説世界を越えて、あなたの現実を浸食しにやってきます。