紙の本
石見銀山を死守せよ!- 日本を救った男たち
2011/06/20 14:50
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:としりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
フランシスコ・ザビエルの布教活動の陰で、石見銀山略奪計画が進行していたのか!?
ザビエルの崇高な魂の物語を書くつもりだった「わたし」は、取材旅行のなかで驚愕の史料を見つけてしまう。それは、ザビエルの側にいた日本人・安次郎が記した手稿だった。その手稿の内容の事実関係を綿密に検証し、さらに取材を重ねた結果、書き上げたものが本書である。(「序章」より要約)
本書は、このように極めて興味をそそられる序章に始まる歴史冒険小説である。
布教のために日本へやってきたザビエルだったが、思いの外、布教ははかどらない。その陰で、とんでもない事態が発生しようとしていた。
ポルトガル国王の密命を帯びた軍人バラッタが、石見銀山占領計画を進める。事前に、軍事的視点から現地と日本人を観察し、日本の軍事力を瀬踏みする。
昔も今も、国際関係は軍事力だ。軍事的な観察もひとつ面白いところである。
一方で、バラッタの作戦を阻止すべく、シナ人海賊・王直を動かす安次郎。
まもなく、バラッタの率いる大艦隊が石見沖に現れた。・・・・・
これが本当に史実に則っていれば凄いことだ。
冷静に考えてみて、脚色もあるだろうが、大筋はほぼ史実に近いものなのだろう。なにしろ、大航海時代から欧州列強の歴史は、各地で侵略と略奪の歴史である。
当時、東南アジアを席巻し各地を略奪したポルトガルが、日本に対してのみ友好的だったと考える方が不自然というものだろう。
本書も、歴史への興味を強く掻き立てられる書である。
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宣教師のザビエルと世界遺産になった石見銀山をテーマにしたアジアが舞台の冒険小説、と簡単に言えないほどの謎を秘めた物語。真実をベースに、国とか人の都合で歴史が創られていくのがよくわかる。そして、宗教とは何なのか、考えさせられる。知識として史実の発見は多いが、五世紀も前から人はそれほど変わっていない、という発見もあった。
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正義のためとはいえ父親を殺してしまった安次郎。日本を抜け出しマラッカでザビエルとキリスト教に出会いデウスの教えを伝えるためにザビエルと一緒に日本へと帰ることに。
その二人に石見銀山の侵略を企む野心家バラッタとシナの海賊王直が絡み合って物語りは展開していく。
宗教と石見銀山侵略、それぞれの思惑とザビエルの苦悩そして安次郎の思い。
史実の裏にこういう話しがあったのかと想像することは興味深い。
ただなんとなく盛り上がりに欠けてしまったように感じてしまった。
物語の導入部はかなりわくわくさせてくれただけに少し残念。
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1910年(明治43年)聖ザビエルの伝記を書く準備でインドのゴアを訪れた小説家が、安次郎が記したとされる手記に出会う。そこには、「ザビエルは嘘つきである」「ザビエル神父が日本にもたらしたのは、神の福音ではなく災厄」というような驚愕すべきものだった!
こうして物語は、彼らが生きた時代へと遡る。
安次郎、ポルトガルの特任司令官・バラッタ、ザビエル、章が替わるごとに三者の視点から、石見銀山をめぐり画策し混乱に乗じて銀の採掘権を手にいれようとするバラッタの野望を虚実織り交ぜて描かれていくというもの・・・・・。
海賊なども登場しラストはまさに血肉湧き踊る冒険活劇。読み応え十分だ!!
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限りなく★5つに近い4。山本兼一さんの作品の中ではダントツに面白い。主人公はフランシスコ・ザビエルと、その従者となった安次郎のお話。キリスト教と帝国主義とお金(銀)がテーマで前半から中盤まで一気に読ませる。難点は終盤が少し失速気味だったかな。それにしても、キリスト教に感じていた矛盾に気づかされた。キリシタンは同じキリシタンに対しては博愛精神を持つが、他の宗教は悪魔の信者なので何してもOKルールがある。宗教全般に、そういうご都合主義はあるけど、ちょっと露骨かな。
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「小説トリッパー」連載の改題、加筆修正。
フランシスコ・ザビエルの滞日期に、ポルトガルによる
石見銀山占領の動きがあったという物語。
実際にあってもおかしくない話だが、実にリアリティ
に富んだ描き方をしている。
明治43年、作家である私は、インドのゴアに安置され
ているフランシスコ・ザビエルの遺体が20年ぶりに
開帳されると知って出かけ、ザビエルの弟子となった日
本人アンジローの手記「ザビエル神父 真実の記録」の
発見に居合わせ、解読を依頼されて筆写して持ち帰る。
そこに書かれていたのは、ザビエルが日本にもたらした
のは災いだった、という意外な内容だった。
父を殺して薩摩から逃亡した安次郎は、マラッカでザビ
エル神父に出会い、罪の許しを得て弟子となって、日本
宣教に同行する。
当時、世界はスペインとポルトガルが植民地を拡大して、
ローマ法王の裁定により、日本はポルトガルが支配でき
る範囲に含まれていた。
日本の石見銀山の豊富な産出量に注目したポルトガルの
軍人バラッタは、国王に自国の物とすることを進言して
許可と資金を得て日本にやってくる。
バラッタはザビエルをも利用し、石見を領する守護大名
大内氏に接近し、内紛を起こして大内氏を滅ぼし、その
すきに鉱山の採掘権を得るが抵抗されたため、武力で制
圧して要塞を築くためにマラッカから大船団を率いて石
見に向かう。
安次郎は、ザビエルに対し、ポルトガルが他国を侵略し
て、人を殺し財産を奪うのは、キリスト教の教えに反す
るのに、なぜ止めないのかとなじって破門され、シナの
海賊王直の配下となって、バラッタの艦隊に攻撃をかけ
て石見を守った。
日本を去ったザビエルは中国に渡ろうとするが、川上島
で安次郎に看取られて死に、ゴアに運ばれる。安次郎は
遺体について行き、ゴアで死ぬ。
同時期、石見銀山の豊富な産出量に注目したポルトガル
の軍人バラッタ
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ザビエルを可哀そうな一人の人間として描く異色作。ただの信仰馬鹿が災厄も一緒に日本に運んでくるのが面白い。戦国時代中期の世界の中の日本の立ち位置が凄く判る、読み応えあり。
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日本人であることに誇りを覚える。
聖者フランシスコ・ザビエルの知られざる闇。
プロローグと全編の内容の印象の差異が大きかった。
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11月(神在月)だし島根に行こうと思って、気分を高めるために読了。
島根県の世界遺産「石見銀山」を巡る歴史フィクション!
※石見銀山はほとんど出ませんでした(笑)
学校で習うザビエルって基本ないがしろな扱いされてしまうけれど、実際は教科書に載るくらい偉い人だってことを再認識させてくれました。
遠藤周作を読んだことがあったので、日本でキリスト教を広めるってことが血みどろだというイメージがあった。
そのパイオニアであるザビエルは、諦めと言われてもしょうがない結果しか出せなかっただろうという解釈か。(この本では)
確かに人間の習慣・慣習を変革させるのに時間ははがゆい要因だよね。一気に変革が起きると一時的には達成感という満足が得られるだろうけど、反動が起きて結局大願成就にはならないことが多い。
カトリックの伝道師はきちんと後継を育成して、長い年月を利用して改革をしているからお利口だと思う。
このことは覚えておきたいな。
変革したい側だろうと変革される側だろうと大事な知恵だ。
「確実な変革を起こすなら焦るな」
「誰かが変革を起こそうとしていたら、時間をかけたアプローチも視野に入れているかチェックしろ」
ってね。
___
安次郎と辰吉の関係が実はおすすめ!
●辰吉の忠誠心がすごい。
人生を主君に預けるとはこのこと。それを楽しんでいるから偉い。生きる上での価値観がきちんと形成されている芯の太い人間だ。そう思う。
16世紀という時代でありながら、主君が乱心なんか起こしたせいで生まれ故郷から遠い海の外に飛び出していくことになっても動じなかった辰吉がお気に入り。
●安次郎の気高さがすごい。
この人の頭の良さはハンパないと思う。ゆえに自律できている。
あんなクソ親父に歯向かうのも、言葉の通じない異国で生き抜くのも、自分の弱さに打ち勝つ強い精神力が備わっているということ。
ただ、ここでいう弱い自分ってそうとうハードル高いけどね。
安次郎の気高さに感服しました。
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”ザビエルは嘘つきならばその言葉を信じることなかれ。”という衝撃的な文章で始まる日本人の手記がインドのゴアにて発見!?日本人とはザビエルより洗礼を受けた日本人第一号なり。偶然彼の地を訪れていた作家が驚愕な史実を発見することより物語が始まる。そして遡る事戦国時代、ザビエルと時を同じくして、ポルトガル王からある特命を受けて日本を訪れた騎士がいた。なんと世界有数な銀山、石見銀山の占領!?キリスト教の布教、資源の確保、交易そして倭寇。当時の歴史的事実を組み合わせて筆者独自の視点を加えることで、驚天動地な歴史を紡ぐ。更に宣教師目線の当時の人々の生活の様や苦悩が余す事なく記述されている良作。後、純粋無垢で世間知らずなザビエルのキャラ設定はイケてるね~
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頼るべきは、おのが身ひとつ。
その潮の流れ行く先になにがあるのか。
石国の海を渡り、
南山を遠望するに、
赤然たる光あり。
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ザビエルと銀?と思ってしまった。題名からは、どこが繋がるんだろうと思っていたが、読み進めるにしたがって、その関連が明らかになる。
ザビエルと銀を繋げるのは、日本人初のキリスト教徒と言われる薩摩出身のアンジロウだ。アンジロウは、手の付けられない父親を、何の咎めもない使用人を守るために殺害してしまい、その罪を償うためにキリスト教に帰依する。
当初は、ザビエルに私淑していたものの、ふとしたことから、ザビエルの信仰を疑うようになり、遂には破門される。ザビエルも、アジア領でキリスト教を広めるためにはポルトガル王の援助がなければ成り立たないことをよくわかっていた。イエズス会がアジア領で教会を建てるときも、国王は銀を援助し、さまざまな便宜を図ってくれた。ポルトガル国王も、アジア領の植民地化を円滑に進めるためには、原住民を神にも支配してもらうのが良いと考えたのだ。心も征服してしまおうと。
このようなことから、ザビエルは、バラッタという日本の石見銀山を狙う軍人に嫌々ながらも支配されるようになり、それをアンジロウは許せなかった。そんなバラッタの野望を王直とい海賊王とともにアンジロウは倒す。ザビエルは、アンジロウを破門したものの、アンジロウの方は、ザビエルのことが気になっていた。『ザビエルは悪い人間ではない。自分を犠牲にして、人のために尽くしている。自分はほんのわずかしか食物を口にせず、ぶどう酒も飲まず、一切の欲望を消して、病者や弱者のために生きている。その点は素直に尊敬できる。ただ、困ったことに、とてつもなく頑固で剛情だ。自分の神だけが、たった一つの正しい神だと信じ、ほかの神は悪魔だと決め付けている。言葉と微笑みは優しいが、信念の強さは筋金入りだ。純粋な人。あきれるくらい純粋で無垢で世間知らずだ』と。
アンジロウは言う『あなたは何をしに日本に来たのか』と。
宗教と戦争は切っても切れない。宗教を広めるために、布教者は外に出て行く。そこは、未開の地か他人の地しかない。それは、征服欲の大きい施政者と思いがピッタリと一致する。布教者は仕方なくも施政者の援助を受け、施政者は、ソフトの面でも支配しようと宗教を利用する。日本の仏教や八百万の神のように、色々な神を受け入れるような国民性は珍しく、だいたいが、一神教で、創造主を敬う。そこから、人々は創造主から作られたもので、創造主の前では皆な平等であるとの思想に至るのだ。基本的人権の出発点だ。市民平等から、一人一票が生まれ、やがて民主主義に進んでいく。日本が民主主義を取り入れたのは、そのような精神的な流れからではなく、明治維新後の近代化に向けた貪欲なまでもの欧化政策や第2次世界大戦後の米国の支配にも大きく影響されたろう。また、それにもまして、好奇心が旺盛な日本の国民性にもよるのだろう。
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【読了メモ】(140730 6:50) 山本兼一『銀の島』/朝日新聞出版/2011 Jun 30th
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ザビエルと薩摩藩を追われ波乱万丈な旅のすえゴアにたどり着いた安次郎が出会い、ザビエルが日本まで来る話。ザビエルについてここまで書かれた本を初めて読んだ。ポルトガルが石見銀山を占拠しようとしたが中国の海賊艦隊に破れたらしい。そんな陰謀に宣教師も知らないうちに加担しているかもしれないらしい?
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フランシスコ・ザビエルの布教の旅に
見え隠れするポルトガルの陰謀
野望を持つ男と、何もかも失った男が
縋り付いたカトリックの教えに裏切られた瞬間
何もかもが面白い一冊です