紙の本
抗えない運命の波に翻弄されつつもブレない強い主人公に喝采。
2011/06/28 11:11
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:道楽猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
久々にわくわくハラハラドキドキする本に出会った。
タイトルとカバー絵を見て、もっと静かなお話かと思っていたのだが、さにあらず。
まるでジェットコースターのように話が展開しまくる、「巻き込まれ」系の物語であった。
とにかく主人公の悠奈のキャラがとても良い。
いきなり誘拐されたりお嬢様のように扱われたり、かと思えば突然命を狙われたり、と作中では実に忙しい身の上なのだが、そんな中にあっても決して流されない強さをもっている。抗えない運命の中にあっても最初から最後までブレない。そういうところに非常に好感が持てた。
彼女は、決して自分のアイデンティティを求めて自ら火中の栗を拾いに行ったわけではないのだが、最後には自分のルーツや置かれている立場、父親の真実、そういうものをしっかりと受け止めて、自分の立ち位置を定めてゆく。
何より、どんな窮地にあっても「ことん」と眠れる。これはすごい。
人間、追い詰められてもどうしようもなくなっても、きっちり眠れる大胆さがあればなんとか生きられる。そういうもんだ。
さて、この物語の中では、"血"というものが大きなテーマとなるわけなのだが。
血統ってなんなのだろうなぁと時々思う。
実は私は、"自分の血を繋ぐ"ということに全く興味が持てない。
巷間よく聞く「自分の血を引く子がほしい」だの「彼の血を継ぐ子がほしかった」だのについてもぜぇんぜん理解できないのだ。子を持てば変わるかと思ったが、今のところ変化はない。
夫には「ほんとに女か?」と訝られる始末。
子どもたちにも「別にムリに結婚とかしなくていいよ」なんて言ってるぐらいなのだ。
それは、私が自分という存在が根本的に嫌いだからなのかもしれないが、たぶん自分の事が大好きだったとしても、同じように考えた気がする。
だって。
伝統だの血筋だのと大仰にかまえてみても、人類が滅べばそんなものなんの意味ももたないし、第一自分の死後のことなどはっきり言ってどうなろうと知ったことではない。
むしろ。
一人ひとりの遺伝子がばらばらなほうが、未来の変化が楽しいじゃないか。
同じような血を受け継いで繰り返してゆくより、どんどんどんどん新しい血を入れて多様性を持つほうが、明日の人類のためになる気が私はするのだな。
なので、この物語の中で、頑なに血統を守ろうとしたり、逆に絶やそうとする人たちの気持ちは、はっきり言って私には理解できない。
だれかを犠牲にしてまで守ろうとする伝統ってなんなのだろう。
でもまぁ、ほんとのところは、守りたかったのは伝統とか血筋じゃなく、利権だとか名誉だった気はするのだけども。
大人ってキタナイよね(笑)。
私は、できることなら、大したことない自分のナニモノかを守るために、自分の子や周囲を犠牲にするようなことはしたくないと思う。
エンディングは、ちょっと甘いけれど、それもまたいいな、とニヤリとした。
悠奈は、いったいどんな大人になるだろう。
願わくば、悠奈のような未来のある子が、周囲の思惑に歪められることなく、自分の思うまま真っ直ぐ生きていける世の中でありますように。
紙の本
巻き込まれすぎな主人公。サクサクっと読めてしまう一冊。
2011/08/17 21:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みす・れもん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「超巻き込まれ型、ドラマチックミステリー」と帯に書いている。確かに「超巻き込まれ」ている主人公。始めから終わりまでずーっと巻き込まれっぱなしだ。
ミステリ・・・とは言えないかな。謎解きの部分は皆無に等しいから。ドキドキを楽しむサスペンス。
5歳のときに火災事故に巻き込まれて死んでしまった父親。その死に何かの秘密があるらしいと感じている主人公・悠奈。だから非常勤でやってきた数学の教師と図書館で偶然父親の話ができたときは嬉しかった。でも、突然、学校を去ってしまった先生・・・。
先生を追って見知らぬ土地へ足を踏み入れた悠奈は、次から次へといろんなことに巻き込まれていく。もう抗うことも許されずに流されていく。誰かの意図で。誰の意図で?
誰が敵で誰が味方なのか。味方だと思った人が次の瞬間に敵になり、敵だと思った人が味方から守ってくれたりする。
読みやすい文体で、とてもテンポの良いストーリー。次々と起こる出来事についついページをめくる手が早くなってしまう。だけど、少し尻すぼみだったなという印象は拭えない。何かしらの着地点が欲しかったな。
ある村に伝わる神事と巫女の話が出てくる。「巫女」の舞を観てみたいと思った。神の降りる森で舞う美しい巫女。どれほど美しい風景だろう・・・。
登場人物のキャラクターも個性的で魅力的。
ミステリではなく、別の作品も読んでみたい。
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先生、本当のことを教えて。何で私の前に現れたの?研究者だった亡父の手帳を渡した直後、突然姿を消した先生。ほのかに想いを寄せていた高校2年の悠奈はたまらず後を追う。ところが再会したのは穏やかな先生とは別人のような鋭い眼差しの男。さらに悠奈の前に、「お迎えにあがりました」と謎の男たちが現れて―(「BOOK」データベースより)
『片耳うさぎ』や『ねずみ石』、『かがみのもり』なんかのジュブナイル向けっぽいミステリサスペンスをもうちょっと大人向けにした感じ。
結構どきどきしながら読みました。
浅草・深川・佃島トリオが好き♪
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ミステリかと思いきや民俗学だったけどミステリでした。
作者にドンパチ系のイメージがなかったので銃が出てきた時は結構驚きでした。
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先生、本当のことを教えて。何で私の前に現れたの?研究者だった亡父の手帳を渡した直後、突然姿を消した先生。ほのかに想いを寄せていた高校2年の悠奈はたまらず後を追う。ところが再会したのは穏やかな先生とは別人のような鋭い眼差しの男。さらに悠奈の前に、「お迎えにあがりました」と謎の男たちが現れて―。
『成風堂』、『出版社・営業マン』と、ともに本好きにはたまらないシリーズの著者の最新作。
ノンシリーズについては初読かな・・・
女子高生が、訳のわからぬままどんどん事件に巻き込まれ、
現れるたくさんの人々が、「敵か?見方か?」わからない。
それどころか、「さっきまでの敵が見方に、さらにその逆もあり」と、どんどん追い込まれていく。
実のところ、読んでるこっちまで、
「いったいどこへ向かっていくのか」、終焉の予測がつかぬまま、
それでも、先が気になる展開であっと言う間に読み終えてしまった。
主人公の悠奈をはじめ、なかなかに個性あるキャラも良いし、
スピード感あるストーリーも良い。
大人が読んでももちろんOKながら、
もっと若い世代向けなのかもしれないなぁ。
個人的には、先に挙げたシリーズものの方が、
断然好みだが、違った作風となる本作もなかなか。
他の作品も読んでみよう。
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初めて読む作家さんでタイトル買いした本。たまたまサイン本を手に入れた。
超巻き込まれ型のサスペンスで、高校生の女の子がどんどん事件に巻き込まれていく。
ミステリー色も強くて先が気になる展開で一気に読めた。
ただ、ミステリーというよりはサスペンスって感じでドラマ感のあるストーリーが読者を引き込ませる。
前にレビューを書いた上甲さんの「そのケータイは〜」と話の展開(宗教的要素、疑心暗鬼になる展開)が似ていて、それを凄く真面目にしたような感じ。
なかなか面白かったから、他の本も読んでみようかなと思う。
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一気読みしたくなるハラハラドキドキ展開で面白かった。ライトだけどチープではないと思う。先生だけはビジュアルの変わりようが想像できなかったけど特命係長只野仁みたいな感じか。
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ほのかな想いを抱いていた臨時教師が、ある日突然姿を消した。
とある疑問から彼の実家を訪ねると、辿り着いた先には別人のような男が。
誰が善で誰が悪か、何が真実で何が嘘か、スピード感最重視な作品なので、一気読みすればもっと面白かったかも。
人物描写が浅く、面白味のあるキャラが沢山出てるのに、活かしきれてなく残念。
【図書館・初読・6/13読了】
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「超巻き込まれ型、ドラマチックミステリー」と帯に書いている。確かに「超巻き込まれ」ている主人公。始めから終わりまでずーっと巻き込まれっぱなしだ。
ミステリ・・・とは言えないかな。謎解きの部分は皆無に等しいから。ドキドキを楽しむサスペンス。
5歳のときに火災事故に巻き込まれて死んでしまった父親。その死に何かの秘密があるらしいと感じている主人公・悠奈。だから非常勤でやってきた数学の教師と図書館で偶然父親の話ができたときは嬉しかった。でも、突然、学校を去ってしまった先生・・・。
先生を追って見知らぬ土地へ足を踏み入れた悠奈は、次から次へといろんなことに巻き込まれていく。もう抗うことも許されずに流されていく。誰かの意図で。誰の意図で?
誰が敵で誰が味方なのか。味方だと思った人が次の瞬間に敵になり、敵だと思った人が味方から守ってくれたりする。
読みやすい文体で、とてもテンポの良いストーリー。次々と起こる出来事についついページをめくる手が早くなってしまう。だけど、少し尻すぼみだったなという印象は拭えない。何かしらの着地点が欲しかったな。
ある村に伝わる神事と巫女の話が出てくる。「巫女」の舞を観てみたいと思った。神の降りる森で舞う美しい巫女。どれほど美しい風景だろう・・・。
登場人物のキャラクターも個性的で魅力的。
ミステリではなく、別の作品も読んでみたい。
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父親の話をしていた、臨時教師に会いに行っただけ。
それだけの事なのに、これほど大事になるとは…当然予測不可能、です。
一体誰が敵で、誰の言葉を信頼していいのか。
主人公も分からない状態の中、こちらも予測不能でさっぱりです。
ただ分かるのは、確実に信頼できるのが『先生』だけだという事。
誰も信用ならない状態で、この心の支えは非常に大切です。
逃げ切ったと思えば、別の人。
見知らぬ人に見知った人。
会う人会う人、疑い続けなければいけないのは疲れます。
それ故に、どうなるのか、どうするのか。
ページをめくる手が休まる事はなかったです。
そして最後…この2人どうなるのでしょう?
ものすごく想像を駆り立ててくれます!!w
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平凡な女子高生が亡き父親の謎を巡り次々に事件に巻き込まれていく。なんかはっきりしなかった。
2011.7.1
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本好きの大人しい女子高校生・悠奈のほんのり甘苦い恋のお話かな?と思って読んでたら、途中から、因習残る田舎町の神事を背景とする伝奇ものに!!
(帯にもきちんと「自分はきっと、来てはならなかったのだ」とか、超巻き込まれ型ドラマチックミステリーとか、書いてあったんだね。全部読み終わってから、というか、感想を書こうと思った今になってから読んだ私・・・。^_^;)
悠奈の父は12年前に縁もゆかりもない地のペンションで焼死。その時、他に死んだのは若い女性だった…。
伝奇ものとしてはあっさり感があったけど、それでも実は私の好きな分野なので、楽しんで読めました。巫女の舞いで森の中に神が降りてくる、なんて、ドキドキだったしね。
また、田舎町の中の実力者やその対抗勢力、没落した一族、なんて、横溝正史ばりの設定も面白くはあったし。
ただ、「超巻き込まれる」一つ一つが、なんか説得力がないように思われちゃったし、何より、悠奈が事件に巻き込まれるきっかけを作った数学の非常勤講師・津田先生のキャラ変更が、なんていうか、話しの展開のためだけになされている感じ??
図書館で悠奈に、地味ながら優しく古典について語ってくれてた先生だったのに、アレはなかろう!と。
うん、これは、「私が」津田先生を好ましく思ってたから、実は・・という持って行き方が寂しかったんだね、きっと。しかも、そっちの方も妙にカッコよかったしさ。
大崎さんは、この話のプロットを練る際、頭の中で映像化して考えられたんじゃないかなぁ。個性の違うイケメンたち三人とか、大公路家の手荒担当^_^;の佃島、深川、浅草とか、悠奈に親身な志摩さんとか、これは映画化すると役者の絵的に面白いぞ、というキャラが続々なんだもの。
前作のYA、「かがみのもり」でも神事を扱ってたし、その前の「ねずみ石」でも神社が出てきたし、ということで、大崎さんは神道ミステリーに邁進されてる最中なのかな?
神道って身近な割に意外と闇が多くて面白い題材だと思うから、もうちょっと練り込んだお話を今後期待したいですね。ゴメン、偉そうだけど。
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どんどん予想外の方向にストーリーが進んで、続きが気になって読み進めたけど、読み終わった感想としては、中途半端、かな。
最初の入り方からして淡い恋が軸なのかと思いきやそうでもなく…。
なんか物足りない読後感。
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(No.11-45) ミステリです。
『主人公水島悠奈(みずしま ゆうな)は私立高校2年生。お父さんは悠奈が小さい時に死に、仕事で出張が多いお母さんと二人暮らし。
最近来た数学の非常勤講師、津田先生が家の都合で辞めてしまったことを聞きショックを受ける。たまたま図書室で、悠奈がこの学校に入りたいと思ったきっかけを作った本を津田先生が手にしていたことから、時々話すようになり親しみを感じていたから。その万葉集に関する本はお父さんの遺作だった。お母さんともなぜかお父さんのことを話題にしにくい悠奈は、先生にお父さんのことを打ち明け、遺されたノートを見せたりした。
ショックを受けている悠奈をからかっていた友達も、悠奈の落ち込みぶりを見て先生の連絡先を探索。偶然に分かったその住所を知り、悠奈はさらに驚く。「その住所、私は知っている!」
試験休みとお母さんの出張が重なっているチャンスに先生に会いたいと、日帰りのつもりでその住所を訪ねた悠奈。悠奈の訪問は、そこの一族に大波乱をもたらし、わけが分からないうちに悠奈の争奪戦が始まった。』
巻き込まれ形のミステリですが、そもそもこの波乱を引き起こしたのは主人公の悠奈です。地方の名家、跡継ぎ、巫女の家系・・・、など横溝正史の世界か?という感じで最初は違和感があったのですが、読み進めていくうちにそういう所もあるかも、という気になりました。
状況はどんどん変わり、誰が嘘を言っているのか、本当は何があったのか、悠奈も読者も翻弄されます。
なんとなく、こうかな?と考えましたが、予想通りの真相でした。予想通りだと不満な時もありますが、まあ納得出来ました。
ちょっと残念に思ったのが、主人公の悠奈にあまり魅力を感じられなかったこと。先生を初めとしてかなり魅力的な男性が何人も出てきて、女性の悠奈の雰囲気が貧弱というか幼く感じられました。
主人公の悠奈は高校生ですが、小学生にしても良かったのではないかと思います。多分高校生の方が活動に自由度があるので、行動させやすかったでしょうが、小学生の女の子でも先生にあこがれますし、いざとなったら行動出来るのでそれほど不自然ではないでしょう。小学生なら男性陣との格差も気にならず、かえって魅力になったと思うのですが・・・。
そういう不満はありましたが、面白く読みました。
本屋さん関連のシリーズ小説が多い大崎さんですが、これは本屋さんは出なくて一冊で完結している話です。ちょっとだけ学校の図書室が出てきました。
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何故だか分からないけれど、書店員シリーズ以外の
作品が個人的にはハマらない大崎さんの新作。
やはり大崎らしい作品で、地方の街で起きる
自然、言い伝え、伝承などが基盤にある事件と
伸びやかで素直な少女が上手く溶け込んで
大崎さんらしいミステリになっています。
5歳の頃に、見知らぬ土地で火災事故にあって
返らぬ人となった父が書いた著書をきっかけに
短期赴任の臨時講師「津田」と出会う事になる
主人公の少女「悠奈」。仄かな恋心とともに
父親の思い出を語る事に出来る相手だった
「津田」がいきなり学校を去っていく事で
事件は急に動き出す。
「津田」を追った先で様々な人に出会い、
様々な事件に巻き込まれるのだが、あくまでも
父親が見知らぬ土地で、知らない若い女性と共に
事故死した真相を追う事。そしてなにより
胡散臭さを感じながらも「津田」を信頼する事で
事件を乗り越えていく姿が健気です。
こういった地方の学生の姿と、昔からの地方にある
伝承される言い伝えや文化を取り入れるスタイルは
他の作品でも見られますが上手いですね。
...
...
でも、やはり個人的には書店員シリーズの
新作が待ち遠しいなー。