紙の本
経済学の目的をまなぶ
2021/07/26 17:10
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投稿者:dsukesan - この投稿者のレビュー一覧を見る
効率と衡平のバランスをいかに取るのか。
福祉指標としての、消費・労働情報、機能の情報に基づく比較と、比較の順序としての選好順序、評価順序があること、パレート効率性、マキシミン原理などの考え方を知り、経済学、社会的選択理論やメカニズムデザイン等を紹介し、福祉の向上という観点から経済システムや公共政策を評価し立案する力を磨いていくことを示唆する。
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本書は一橋大学経済学部教授で厚生経済学や社会選択理論を専門としている蓼沼宏一氏の書いた本である。
内容は、効率と公平(本書では“衡平”という言葉で言い表している)を鑑みて、最善の経済のあり方について模索する際に考慮に入れるべき様々な考えを、主に厚生経済学の視点から提供したものである。
多くの人に取ってこの本は興味深いものだと思う。なぜならサンデルのハーバード熱血教室で議論している正義の話と本質的には一緒であるからだ。サンデルは政治哲学の観点からだったのに対し、本書はそれを経済学の視点で説明・考察したものと言ってよい。
このような、いわゆる「正義」に対する考察を、経済学の視点からこれほど明瞭にまとめたものは今までないのではないだろうか。確かに厚生経済学の教科書はたくさんある。しかし最近人々の興味関心のある、効率と公平にフォーカスをあてて、小難しい厚生経済学をまとめあげたという点で、経済学をやっていない人にとってもとっつきやすい内容であると思う。
とはいえ、内容自体そもそも難しいから、いくら簡潔に書かれているとはいえ、難しい事に変わりはない。おそらく一回では完全に理解できないだろう。
また、説明が所々わかりにくい部分があることも確かである。これは経済学をやっていないと理解しにくい部分もあれば、経済学をやっている人にとって逆にわかりにくくなってしまっている部分というのも存在することを意味する。
しかしながら、総合的な評価としては、とても内容の優れた本と言う他ないのではないだろうか。なにより重要なのは、正義の議論をする際に政治哲学のみならず、厚生経済学からの視点もはずすことはできないことを印象づけていることである。経済分析の強みは、言葉では説明しにくいものを経済学独自の方法で説明を可能にする点である。そういう意味で、政治哲学では説明しきれないところを説明しているという点で、厚生経済学の視点から著した本書は価値あるものだと思う。
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我が恩師、蓼沼先生の本。
「福祉(well-being)を高めるためにはどのような社会経済システムが望ましいのか」についてさまざまな視点・観点を紹介している。ジャンルで言えば、厚生経済学とか社会選択理論になるのだろう。個人的に一番わかりやすい表現で言えば、ゼミの内容そのまんま。
中高生に経済学への興味を抱いてもらおうという主旨のようなのだが、若干論理的過ぎてきっと世のマトモナ高校生は読まないと思われる。そこがまた蓼沼先生らしくてよかった。久しぶりにメールをしてみよう。
旅先の紀伊国屋鹿児島店で購入。ポイントカードは全国共通だった。
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経済システムは人の福祉を高めることを第一の目的としている視点に立ち、主に「衡平性」について経済学の言葉で解説した本。最近、はやっているサンデルの議論「正義をめぐる議論」にもつながる。
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中高生を対象とした、厚生経済学の初歩の解説本だと思って、舐めてかかったら、想像以上に内容が濃い本。アマルティア・センが提唱した「機能(functioning)」、無羨望配分、平等等価といった、公共経済学の入門書で必ずしも明示的に扱われることが少ない概念に触れることが出来て、なかなか新鮮な体験だった。
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一般にモノが不足していたら、お金を出してモノを買う。これは経済学的にいえば、需要と供給の原則でもある。もっと俯瞰してみると、社会の中のメカニズムとして、モノやサービスを潤滑に「効率的に」回すのが経済の役割でもあるのだ。ここに福祉という概念を導入すると、障害や生活困難者に対し、不足分を社会が補うという「衝平性」という概念が生まれる。正義という概念が入る「公平」とは違い、感情を抜きにしているのが「衝平」という概念なのだ。
本著ではこうした福祉メカニズムを経済学の初歩を紐解きながら解明していく。題名の柔らかさとは違い、経済学の本を読むというスタンスでないと結構読み切るのに骨がいる。面白いのはやはり福祉サービスをどのように「衝平」に分配するかというところだろう。この人はこういう障害があり、どういうモノやサービスを供給すれば他の人と同じような満足感を得られるのか、第三者では得られる情報が限られる。こうした情報の不一致が福祉経済の難しいところでもあるのだろう。
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【幸せになるための経済の考え方を説く】
ある雑誌で取り上げられていて購入した本。途中までは読めたのですが、その後は経済の難しさに「?」が発生。とりあえず、「スティグリッツ経済学」を再度読んでから、又読もう。
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経済とは何か?平等とな何か?幸せとは何か? 難しいテーマに挑むジュニア新書。相当じっくり読まないと理解できないが良書である。
経済学の役割 「経済は人々の福祉を高めるためにある」
福祉とは?幸せのこと。
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これはめっちゃ面白かった!
厚生経済学と呼ばれる初歩的な領域に触れられる良書!
経済学に使う基本的な数学の知識があればオススメ。
6章までは一般的な経済学の説明ともとれるが、その土壌の上で展開する7章が新古典派経済学に慣れきった一般的な経済学徒の脳に電撃を放つ。
そして8章から最終章に到るまで、哲学(倫理学)的でもあり数学的でもある経済学が平易な言葉で説明されており、求めていた経済学ここにアリ!という感想。
これは経済学を既に学んでいる人に是非とも読んでほしい一冊。
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「ジュニア文庫」なんですが、内容は結構難しい。「経済とは人々の福祉を高めるためにある」という定義のもとで、最善の状態を想定しながらそこに向けて現状を改善していくのが経済の本質であると述べ、具体的な事例について掘り下げています。
全体を通じて、きちんと内容を理解しようと思ったらじっくり腰を据えて向き合わないと理解しにくい本だと思います。万人向けではないですが、頭をしっかり回転させて経済に関する本を読みたいと思っている方なら「ジュニア」という括りに捉われずにチャレンジしてみても好いかと思います。
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厚生経済学の入門書ということだが、経済学というもの自体に疎い私には相当難しかった。
効率と衡平という視点と経済システムは人々の福祉を高めるためにあるというのは新鮮でおもしろかった
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非常に大事なことを論じているのはわかるし、洞察も深いと思う。良書と言える。
でも、本書が本来伝えたい相手、つまり中高生に、この内容が届くのかな?
もうちょっとわかりやすくならんかったんか、という気が。
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経済学の入門的な本で、「効率」と「衡平」をキーワードに、ひとの福祉とは何か、人々の福祉を高めるために望ましい社会経済システムとはどのようなものなのか、興味深く読めた。
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中高生向けの本にありがちな難しさ。2章までは一般常識で理解できることをあえて教科書的に書き、眠くさせておいて、3章目以降はちゃんと理解したいのに、学生の丸暗記向けというのか、ふつうの大人に分かるような書き方になっていない。。まあ私の予備知識がなさすぎるのだけど。途中で図書館に返してしまった。
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「ー」
これが中高生向けなのに驚く。内容は極めて高度だが、書き方は読みやすい。中高生の学習意欲を刺激するだろう。
PS福祉指標は初めて聞いた概念だった。が、日本とブータンの幸福の違いを表すのに使えそうだ。とても面白い考え方。
”効率”はパレート効率で無くてはならず、誰かが損をするのでは意味がない。それこそまさに最大多数の最大幸福だ。著者はそれを否定する。