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投稿者:なのはな - この投稿者のレビュー一覧を見る
多田さんの本を読んだのは二冊目ですが、この本もとても分かりやすいです。素粒子物理学が専門なので、流石に細かいところまで解説されていますが、時折混えるユーモアのセンスもよく、例え話も面白いです。高校生向けの講座ということで、専門用語を少なめに分かりやすく書いてあります。特にニュートリノの検出については、実際の実験をもとにかなり詳細に述べられていて、なるほどなあと感心することが多かったです。それにしてもこういう実験は、本当に根気のいる作業だなあと感じました。今は基礎理論のレベルですが、ニュートリノの利用の実用化がいつか実現するといいなあと思いました。
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著者がその実験設備の一部を設計したカミオカンデの素粒子実験について、高校生相手に四度にわたって行った講義を収めたもの。学生向けなのでわかりやすく、かといって何かを省略してしまうわけでもなく、とてもよくできた解説本になっている。加速器の実験には大量の電気が必要で、年間50億円くらいかかっているので電気代が高い夏場は実験を中止しているというような小ネタもちょくちょく挟んで飽きさせない。学生からの質問への回答も、次の講義の内容にうまくつなげる形に使ったり、さらなる理解を助けるために使ったりと意図がみられてうまい。クォークや電磁気力/強い力/弱い力の説明もしているが、自分にとってはこれまでのどの説明よりもわかりやすかった。
カミオカンデの素粒子実験では、2002年の小柴さんに続き、2015年に梶田さんがニュートリノ振動の検出によってニュートリノに質量があることを示したことによりノーベル賞を受賞した。本書は、ノーベル賞受賞が決まる前に出版されているが、受賞理由となったニュートリノ振動と質量の証明の関係をわかりやすく解説している。また、ニュートリノビームの生成や1秒間に1000兆個のニュートリノを作ることができる J-PARCの加速器がなぜ世界最強なのかも丁寧に上手く学生の興味を引くように説明している。
著者は、学生からの「ニュートリノの利用法とは、どのようなものですか?」という質問に対して、「何も思いつかない」と回答する。ノーベル賞を受賞した梶田氏がテレビで同じような質問に同じように「私にも分からない」と答えていた。著者は自分たちの関わる素粒子研究について、「科学の棚を埋めるためにやっている」のだと答える。その棚を見た他の誰かが、何か役に立つことに活用するかもしれないし、何かを発展させてまたその棚を広げて埋めてくれるかもしれない。科学とはそういうもので、そういうことをやっていかないといけないと高校生に説く。素晴らしい。高校生のときの俺にも言ってほしかった。
「成功した技術など、お金を出せばいくらでも買うことができます。しかし、失敗した経験は、どんなにお金を積んでも手に入れることができない、実際にやった者だけが手にすることができる、貴重な財産なのです」 - この言葉に、著者を含めた彼らのチームが新しい分野を切り開いてきたという強い自負がにじみ出ている。著者の言葉を信じると、ニュートリノ研究において日本は世界の最先端を行っており、カミオカンデ級の検出器はあと10年経っても日本以外では現れないだろうという。
著者近影が金髪長髪で驚いたが、もちろんそんなことは関係なくお薦め。素粒子論など興味がないという人にまでお薦めしてもいいかなというくらいよい本だと思う。
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なお、この本では素敵な絵や写真がたくさんあるが、Kindle Fire HD8.9で読んでいるとそのままだと小さくて読めないので、いちいち長押し選択して拡大して見る必要がある。仕様だと思うが、読書の質を落としてしまうので、何とかしてほしい → Amazonさん。
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なんておもしろい本だろう。KEK助教の方が語る素粒子物理実験。普段から日常的に素粒子をいじっている、素粒子とお友達な人ならではの手に取るような素粒子物理の解説。物理学の入門書としてもとても良いと思います。
”クォークは重いエネルギーのスープに浮かんでいる”といったイメージを喚起するわかりやすい説明が多数。中性子の重さは940Mev。一方、中性子を構成するアップクォーク1つとダウンクォークを2つ足しても15Mevにしかならない。その差分はエネルギーである。クォークは強い力というバネに引っ張られながらも振動している...おもしろい。陽子や中性子ってほとんどがエネルギーなんですね。
こういう話を聞くと、素粒子物理なんてまだないような時代にe=mc^2を導き、こうしたエネルギーと質量の等価性を述べたアインシュタインって天才だな、と改めて思います。
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日本物理学会の金髪の異端児による、
世界最先端のニュートリノ実験の解説。
高校生向けのレクチャーなので、数式などは一切用いず、イメージだけですべてを解説してみせている。
高校生向けのレクチャー4回分をまとめた本。
・何をしているのか。素粒子物理学のシンプルなまとめ。
・どんなに素晴らしく、困難で、ロマンがあるのか。
・「どんな役に立つか分からない実験を、お金をかけてする意味」とは・
レクチャーの動画 Ustreamより
http://www.ustream.tv/recorded/16784354
自ら設計した世界最強パワーの素粒子加速装置「J-PARC」の説明から始まる。
J-PARC
http://j-parc.jp/public/Acc/ja/index.html
■J-PARCについて
東海村にあるJ-PARCからスーパーカミオカンデに向かってニュートリノを発射する。装置の部品ごとに分かりやすく解説。
なんであんなに巨大なのか。人間はピップエレキバンの10倍~20倍の磁力しか作れないから。
夏場は電気代が高いので、実験施設はお休みする。
■スーパーカミオカンデについて
なんであんなに巨大なのか。ニュートリノが小さいから。
スーパーカミオカンデがニュートリノを検出する仕組み。ニュートリノが水中で中性子に衝突して電子を発生させ、チェレンコフ光を発するのを検出する。
■何を発見しようとしているのか
ミューニュートリノが、電子ニュートリノに変化することを実証する。
■素粒子について
素粒子の分類(クォークやレプトン)
4つの力(重力、弱い力、電磁力、強い力)
■ニュートリノについて
ニュートリノはどうやって発生するのか。
ニュートリノ発見のストーリー
太陽で生まれたニュートリノが地球に降り注ぐけど、ほとんどすり抜けること。
「太陽ニュートリノ問題」と「大気ニュートリノ問題」とは。
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ニュートリノのことが知りたくて、ブックオフでこれなら読めるかと手にとった一冊。
池谷さんの『単純な脳〜』みたく高校生の授業をもとに書かれてて読みやすく、難しい数式はことごとく省かれてるけど、3章のクォークまでくるとやっぱりだんだんわからなくなってきた…
ニュートリノは波でもあるし粒子でもある⁉︎
光はエネルギーで、温度もエネルギーのことで、粒子にもなる⁉︎
なかなかイメージがつかない。
ただ、極大の宇宙物理学から極小の素粒子物理学の世界が垣間見えた気がして、面白かった!
なぜこの世の中に物質が存在するのか。
反物質はどこにいっちゃったのか。
おばあちゃんになるまでにわかるかしら。
世の中の仕組みをちょっとずつ解明することで、ただ面白いだけでなく、今の便利な世の中に繋がってるというまえがきとあとがきも、なんか元気をもらった。
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いわゆる歴史的な有名実験の紹介かと思えば、日本の素粒子研究の最新事情で、これが高校生向けということも相まって実にわかりやすい。
孫引きしたような表現のよくある入門書と違い、自分の言葉で語っているので頭にすいすい入ってくる。プレゼンできる科学者がようやくまた一人。著者にはぜひ仕分けの壇上でプレゼンしてほしかった。
科学技術研究は、今すぐ役に立たなくてもなぜ必要なのか、ラストの締めは素晴らしく一読の価値あり。
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東海村の加速器 J-PARCからスーパーカミオカンデにニュートリノを打ち込む実験を高校生を相手にレクチャーしたもの.その背景となる素粒子物理の基礎も講義している.実際に実験にかかわっている著者の解説の力量がすごい.数式をほとんど使わずになんとなくわかった気にさせる.すばらしい.
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お友達から「とてもわかりやすい本ですよ」と聞いて読んでみました。素粒子物理学の話でしたが,確かに〈たとえ〉がうまくて,しかも話し言葉で書かれているので,これまで読んできた本よりもとっつきやすかったと思います。この文章は,高校生を対象として4回にわたり講演した内容がもとになっているので,それくらいの知識があればなんとか分かるでしょう。
ニュートリノやクオークという粒子(波)の話,カミオカンデやJ-PARCという超大型実験施設の話など,飽きずに教えてくれます。
著者が最後に語った「これらの実験って何の役に立つの?」という問いに関する答えがステキです。
科学の世界っていうのは,まずいきなり,この携帯電話を作ろうと思って,その技術を開発しようとしても無理なんです。非常に複雑な機械ですからね。だからまずは各々の学者なり技術者が自分の専門の何かを研究します。そして,「それが何の役に立つか?」は,とりあえず置いといて,その研究成果を発表するわけです。この「研究成果を発表する」ということが,すなわち,「ハンズの棚に商品を並べること」なんです。いろんな学者が,棚にどんどん並べていくわけです。
そしたら,次の世代の学者がハンズにやって来て,棚を見て,自分の役に立つものをピックアップしていきます。そうして作り上げたもの―それがこの携帯電話なんです。(本書p.315)
あとがきの次の部分もステキです。
成功した技術など,お金を出せばいくらでも買うことができます。しかし,失敗した経験は,どんなにお金を積んでも手に入れることができない,実際にやった者だけが手にすることができる,貴重な財産なのです。(p.320)
もちろん,成功したことがあるからこんなことを言えるのだろうけれども,最初のカミオカンデでの実験の失敗があったからこそ,ノーベル賞につながるニュートリノの発見があったのですからね。
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KEK の研究者である著者が、高校生に対して素粒子物理を四回で講義した記録。とてもわかりやすい。
J-PARC からスーパーカミオカンデへ膨大なニュートリノを撃ちこむ T2K 実験を中心とした説明だが、この本に書いてあることはほとんど理解できた気になった。
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「高校生にもわかる素粒子物理の最前線」というサブタイトルのとおり、とっても読みやすくて面白い! ニュートリノとは何か、といった知識に加えて、研究というものに対する心意気というか、根っこの部分までも伝えてくれる。
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非常に面白い本。素粒子物理やニュートリノ、ビックバンなど言葉は聞いたことあるけどよくわからない世界をこれでもかというくらい噛み砕いてくれるので専門的な知識がなくてもすんなり頭に入ってくる。
高校生への授業という形で話した内容を本にしたものなのでライブ感もあり、読んでいるだけでわくわくしてきます。
ぜひ食わず嫌いせずに色々な人に読んでもらいたい名著だと思います。
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すごい宇宙講義の後に読んでいる。
わかりやすい。けどやっぱり難しい。
とりあえず第2章まで読了。
挫折するかも・・・
私にはもっと宇宙よりの話のほうが興味を持続できるのかも。
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KEKの研究者による高校生相手の講義を書籍化。特に冒頭の加速器の話がわかりやすく面白かった。このまま実験中心で展開するのかと思いきや後半は理論よりの話に。聴衆に合わせてわかった気にさせるプレゼンテーションという意味でも参考になる。
いつかはKEKの一般公開行きたい。CERNではLHCの上は通ったけど、実物見たかったな。
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これを読んでいたタイミングで梶田隆章先生がノーベル物理学賞を取られたので、関連知識をニュースで得られたのは良かった。
ニュートリノ実験の苦労と歴史、また得られた知識が素粒子物理や宇宙論にどう繋がっていくかを丁寧に説明されている。自分も高校の時にこんな授業があれば受けて見たかった。
本書ではスーパーカミオカンデまでの紹介だったが、次のノーベル賞に向けてハイパーカミオカンデの稼働と成果が待ち遠しい。
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面白い!図書館で借りた後、おもわず買ってしまいました。小難しい最先端の素粒子物理学を、本当に分かり易く説明してくれています。しかし、日本の技術って凄いンですね。欧・米に負けるな!