紙の本
思わず手に取ってしまう独自の切り口
2011/12/23 10:18
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Genpyon - この投稿者のレビュー一覧を見る
「世界の教科書でよむ宗教」というタイトルの本著。タイトルだけで「なるほど、そう来たか」と思わされ、思わず手に取って読みたくなってしまう。
読者に手に取ってもらうために編集者がどうにかこうにかひねりだしたタイトルの著書も多い中で、内容を素直に表現しただけで読みたくなってしまう本著は、著作においては切り口こそが重要であると教えてくれる。
もっとも、本著は、文部省予算で行われた共同研究の成果の一部ということで、この研究の独自性が、本著の切り口の独自性を担保している、とは言えるかもしれない。
本著では、米・英・仏・独・トルコ・タイ・インドネシア・フィリピン・韓国の教科書が取り上げられ、当然、一般の読者にとっては、初めて知ることがほとんどとなる。一部に文部省予算研究であることによる予定調和的結論のようなものが感じられないではないのだが、それでも、各国の教科書それぞれの特徴が上手く捉えられ、興味深く紹介されている。
新書一冊にこれだけの内容を詰め込んでいるため、それぞれ、軽く紹介する程度になっていて、もちろん、これは文量の点から仕方がないことだとは思うが、切り口があまりに独自すぎるためか、さらに知りたいと思う読者が次に進むべき道が示されておらず、その辺りがもどかしく感じられる。
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世界の教科書に〈宗教〉はどのように書かれているのか。宗教的な説明というのではなく、教科書という媒体を使用し、世界各国では〈宗教〉をどのように捉えているのか、という点に重きを置いているようです。アプローチが新鮮で興味深く読ませていただきました。日本とは異なる価値観を見れて面白かったです。
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宗教間の対立は過去の歴史を振り返るまでもなく、今も世界の各地で紛争の火種になっている。人間の幸福への希求が宗教を生み出したというのに、そのために心を悩ませている人々が世界には多い。
しかし、自分たちが信じる宗教について深めるのはもちろんのこと、他宗教への理解を深めようとする試みが、世界各国の教科書から読み取れる。本書はそんな国々の中から、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、トルコ、タイ、インドネシア、フィリピン、日本という9つの国を選び出し、その国の学校での宗教教育を垣間見せてくれる。
面白かったのは、日本の大乗仏教と、タイの上座部仏教(小乗仏教というのは蔑称とのこと)の違い。元は同じ仏教なのに、その教えの違いの大きさと言ったら!違うものだからといって、「日本の仏教は間違いだ!」などとタイの教科書には書かれてはいない。日本の仏教の教義についても触れていて、まあそれもありだよねというスタンスだ。
仏教とキリスト教に偏っている日本の教科書だが、(もちろん宗教科目はないので、歴史や倫理や地理の科目から)、世界に目を向けると、そこにイスラム教、ユダヤ教、その土地の土着の宗教に、キリスト教だって、カトリックとプロテスタントもあるし。ヨーロッパなんかはこれまでの歴史からの反省で、他の宗教も認めようと頑張っている。もちろん他宗教を認めることで矛盾が生じる場合には、やんわりとぼかしてあったり、その国々の努力や隠したいところが見え隠れするのが興味深かった。
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日本人は無宗教の人が多い。そもそも子供の頃から宗教自体を学んでいないので、無宗教というより宗教に関する知識が無いということなのだろう。本書では、世界の教科書を通して、宗教教育を紹介している。キリスト教とイスラム教は決して敵対しているわけではなく、お互いを尊重するような教育が行われていることが分かる。日本では、宗教に対してネガティブなイメージがあるが、アジアだけをみても、韓国、タイ、インドネシア、フィリピン、など全て異なる宗教を信仰しているというのは興味深い。
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宗教がどう教えられているか、九つの国を取り上げて紹介。国民の大半の信仰を集める宗教もあるなかで、そのほかの宗教はどう教えているか。
教科書に載ってる宗教ってある意味最も根本的で、最もデリケートな多文化理解、異文化交流。こうあるべき、みたいなもんを規定せず、各国の試行錯誤をバイアスをかけずに紹介している印象。
単にこういうこと学校で教えるんだーってだけでも面白い。
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学校で、宗教について勉強した記憶がない。
社会科全般を毛嫌いしていたので、記憶にないだけかもしれないんだけど。
なので、信仰について学ぶ為の宗教の授業とか、義務教育で信仰について学ばせるという発想にびっくり。目からウロコ。
この本は、高校生あたりを狙った新書のシリーズなので、わかりやすいというか、ツッコミ具合が物足りない気もするが、各国の取り組み方の角度の違いなどがとても面白い。
移民を受け入れているヨーロッパの多民族国家よりも、単一民族である韓国の方が、信仰の比率にバラツキがあるのが興味深い。
あと、フランスのスカーフ禁止法についても、非常に考えさせられる。
タイの教科書に書かれているらしい、
「日本人はせっかちなので、早く悟りが開ける禅宗か流行っている」というフレーズに、なるほど、と思ったり(笑)
ひととおり読んで、日本の「臭いものには蓋をしろ」体質はやはり世界レベルでは通用しないんだろうなと思った。
宗教を、臭いもの扱いしてるんだろうなという事も。
信仰を持つべきとは言えないが、宗教をいかがわしいものとひとくくりに考えているうちは、信仰を持っている人たちと対等にはなれないだろう。
信仰だけでなく、微妙なテーマにたいしてきちんと考えを持ち、伝えられないことは、判断出来ないことと同じで、ほんとマズイと思う。
自分も含めて。
そういう本ではないはずなのに、何故か反省した。
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日本人の宗教に対する姿勢がいかに特殊かというのが よく分かる
確かに 日本人の事勿れ精神から宗教には腫れ物に触るようにしているのかもしれないが、その事勿れの裏側が無知であってはいけないとよくよく感じた
それから、日本人がこんなにも宗教と聞いて身構えてしまうのはなぜなのかが気になったので、日本における宗教について調べてみたい
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九カ国の宗教に関する教科書を実例として、それぞれの国の宗教感や教育の実態を浮き彫りにする。宗教を国作りの基本とする場合や宗教と教育を明確に分離して、それぞれの宗教に配慮している場合など、実例が示されると実に興味深い。
日本の曖昧さに、むしろ違和感を感じてしまう。
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レビューはブログにて
http://ameblo.jp/w92-3/entry-11049085950.html
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九つの国における教育の入口、教科書を比較し、世界における宗教の捉え方を知ろうとする本。
しかし比較というよりは並べているだけといった印象。それでもそうしたものを見る・知る機会がないので十分に新鮮だったが。
多くの国で宗教を学ぶ時間が「道徳」の時間だったのが印象的。わたしたちは道徳の時間に何を学んだのだろうか。人としての在り方?日本人としての考え方?宗教を学んでいる感覚はなかったがそういうところにひっそりとあるのが宗教なのかもしれないと感じた。
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教科書での紹介の仕方だけでも、その宗教に持ちうる印象ってだいぶ変わっているのだなと意識させてくれる素敵な本。
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はじめに、おわりにを読んだ後、自分の興味ある章を読む方が良かったと思った。各国教育における宗教の捉え方、そしてそれらの比較については勉強になった。
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9か国の教科書を題材に、学校教育の現場でどのように宗教を教えているのか、をレポートした本。日本の学生をターゲットに書かれている。
ポイントは、序文にあるとおり、以下の2点か。
「各国の公教育は宗教対立を防ごうとしているのか、それともあおっているのか」
「世界の宗教の姿を、各国の現地の人たちの目を通して理解する」
ごく一部を要約すると
アメリカ:テロにより一部宗教への偏見、圧力が強まる社会に対し、教科書では偏見が深まらないようにバランスを取って扱う努力がみられる。(キリスト教は十字軍の兵士、日本は鎌倉武士を紹介するのに対し、イスラムは学者を対比させている、など)
フランス:「自由・平等・博愛」による旧体制の克服、という自国の精神に立脚し、宗教を客観的に理解しようとする姿勢を身に着けさせる。歴史上の文献資料を提示し、考えさせるスタンス
ドイツ:ユダヤ教の欠点をキリスト教が克服した、という意識を持たせないような配慮
著者の言うとおり、日本では、宗教が「いつどのように発祥したか」や「教義のポイント」を紹介しているが、現在を生きるそれらの宗教、信者とどう向き合うか、については何も語っていなかったように思う。
現代の宗教対立の焦点である、イスラエル/イラン/南北スーダンの教科書を押さえてほしかった。
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日本では否定的に受け取られがちだという宗教を主要9カ国(米英仏独、トルコ、タイ、インドネシア、フィリピン、韓国)の教科書がどう説明しているかを大変分かりやすく紹介しています。深みをもって分析しているわけではないものの、各国とも非常に客観的な立場から価値判断をすることなく記述していることに、日本と異なりいろいろな宗教背景の人たちがいることへの配慮があることを知らされます。著者が言うように日本が一番、キリスト教に肯定的な書き方をしているということは頷けることで非常に興味深いところです。
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一番宗教に不寛容なのは、無宗教を自称する日本なのかもしれない。少なくとも教科書の上では、キリスト教もイスラム教も、他宗教に対する偏見をなくして理解しようと努めている。