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紙の本
まゆみのマーチ (新潮文庫 自選短編集)
著者 重松 清 (著)
まゆみは、歌が大好きな女の子だった。小学校の授業中も歌を口ずさむ娘を、母は決して叱らなかった。だが、担任教師の指導がきっかけで、まゆみは学校に通えなくなってしまう。そのと...
まゆみのマーチ (新潮文庫 自選短編集)
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商品説明
まゆみは、歌が大好きな女の子だった。小学校の授業中も歌を口ずさむ娘を、母は決して叱らなかった。だが、担任教師の指導がきっかけで、まゆみは学校に通えなくなってしまう。そのとき母が伝えたことは—表題作のほか、いじめに巻き込まれた少女の孤独な闘いを描く「ワニとハブとひょうたん池で」などを含む著者自身が選んだ重松清入門の一冊。新作「また次の春へ」を特別収録。【「BOOK」データベースの商品解説】
収録作品一覧
まゆみのマーチ | 7−100 | |
---|---|---|
ワニとハブとひょうたん池で | 101−161 | |
セッちゃん | 163−211 |
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紙の本
あきらめるわけにはいかない
2011/09/30 08:06
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
重松清さんの言葉でいえば、「東日本大震災がなければ生まれなかった」自選短編集の、これは「女子編」です。
「女子」というくらいですから、この自選集には過去の短編集から女の子を主人公にした物語が五編と、東日本大震災後に新たに書かれた短編「また次の春へ―おまじない」が収められています。
重松さんのファンだけでなく、重松さんの作品を読まれていない人には入門編となる一冊です。
重松さんは文庫巻末の「刊行にあたって」という文章のなかで「失われた風景を取り戻すには長い時間がかかるはずです」と書いています。
津波で流された家々、火災で燃え尽きた町々、失われた風景はそれだけではありません。昨日までともに生活していた人々がいなくなることも、失われた風景です。あるいは町や人にまつわる思い出も。
東日本大震災の時たくさんの思い出のアルバムが流されました。それらを一枚一枚ていねいに捜しつづける人々。思い出は心のなかにあるはずですが、やはり人はその縁(よすが)となるものを求めます。
先の文章につづけて重松さんは「でも、あきらめるわけにはいかない」と記しました。あきらめるわけにはいかない。東北の人たちがもっともそのことを感じているはずです。
失われたものをただ悲しんでいるわけにはいかない。あきらめるわけにはいかない、と。
本書に収められた、東日本大震災のあとに書かれて短編「また次の春へ―おまじない」は、かつてたった一年間だけ被災にあった海岸沿いの町が海に呑み込まれたことを目にしたマチコさんが被災地を訪ねる物語です。
四〇年近く前の、しかもたった一年間だけ過ごした町。さらに津波で風景が一変した町で、マチコさんはかつてそこで生きた証を見つけようとします。何もかも失われた町で、それでもきっと残っているものがあるはず。マチコさんはあきらめるわけにはいかないのです。
なぜなら、今そこに彼女は生きているから。
そして、彼女は見つけます。失われた町から、失われた思い出から、彼女がまちがいなくそこに生きた証を。
津波は多くのものを連れ去りました。しかし、人の心にあるものだけは連れ去ることはできませんでした。
だから、私たちは強く思います。
あきらめるわけにはいかない、と。
紙の本
重松清さんの自選短編集は昔のお話の主人公たちに勇気をもらって編んだ短編集です。
2011/10/08 15:51
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る
未曾有の東日本大震災から七ヶ月が経とうとしています。
誰もが自分の人生を見つめ直し、自分にできることを探し続けた七ヶ月間でした。
重松清さんは9月に二冊の自選短編集を出版されました。
二冊の著者印税を全額、あしなが育英会に寄付されることを知り、ひとりの読者として賛同し、また本を読むことでその趣旨に参加できる、と思いました。
女子編『まゆみのマーチ』は既成の短編から5編、大震災から生まれた1編からなる短編集で作家・重松清さんならではの温かさを感じる作品ばかりでした。
そのなかの2編は既に読んだ作品でしたが、選ばれて良かったね、と作品に話しかけながら読みました。
母の危篤を知り、飛行機の最終便に飛び乗った僕は病院に駆けつけますが、母のいる病室に入れず、夜間の外来のロビーの長椅子に座ってしまうところから始まる『まゆみのマーチ』は逸品です。
勉強も出来、先生に信頼されている小学校の僕は普通の子と違う5歳違いの妹・まゆみを可愛いけれど疎い、そう思ってしまう複雑な感情を母のせいにする息子のいらだちが故郷をさらに遠くにさせてしまった。そんな息子も家庭を持ち、また自分の息子の不登校に悩んでいます。
母の病室に泊まり込む兄と妹の風景と会話は、重松清さんの真骨頂を発揮するシーンでした。
彼は読む者に何らかの気づきを与えてくれる作家です。
彼は「刊行にあたって」のなかで
「ページをめくるごとに新しい物語の風景が登場することが、僕にとっての短編集の醍醐味です。」と語っています。
男子編『卒業ホームラン』、どんな風景が登場するか、楽しみです。
紙の本
短編集
2024/04/07 19:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Sota - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んだ記憶がある話もあるな、と思ったら、既刊の再編集だったのですね。
いつもながら、重松さんの話は号泣させられます。
この中では、タイトル作品が一番印象に残りました。
集団生活からはみ出してしまう子供を、個性を大事に育てたお母さんは素晴らしい!とても感動しました。
紙の本
重松作品の真髄(1)
2015/12/30 01:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tomo - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者自らが選んだ短編集ですので当然かもしれませんが、とても心に残る作品ばかりです。
表題作「まゆみのマーチ」はあまりにもつらくて、苦しくて、温かくて、バス停でバスを待ちながら読んでいたのですが、恥ずかしながら涙してしまいました。自宅で読むべきでした。心に、つきささります。
どの作品にも社会で生きていくことの苦しみが描かれているのに、何故か鋭さを感じません。読後感はほんのりと温かく、未来へのかすかな希望が感じられます。
そこが、好きです。
重松作品を読んだ事がない方に、是非おすすめします。
紙の本
あとがきも印象的でした。
2015/09/28 22:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:eri - この投稿者のレビュー一覧を見る
良かったです。読んだことのあるお話もありましたが、変わらず新鮮に感じました。最後のおまじないのお話も素敵だと思いました。