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紙の本
灯台守の話 (白水Uブックス 海外小説の誘惑)
著者 ジャネット・ウィンターソン (著),岸本 佐知子 (訳)
孤児となった少女シルバーは、不思議な盲目の老人ピューにひきとられ、灯台守の見習いとなる。夜ごとピューが語る、数奇な二重生活を送った牧師の物語に導かれ、やがてシルバーは真実...
灯台守の話 (白水Uブックス 海外小説の誘惑)
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商品説明
孤児となった少女シルバーは、不思議な盲目の老人ピューにひきとられ、灯台守の見習いとなる。夜ごとピューが語る、数奇な二重生活を送った牧師の物語に導かれ、やがてシルバーは真実の愛を求めて独り旅立つ—二つの孤独な魂の遍歴を描いた傑作長編。【「BOOK」データベースの商品解説】
孤児となった少女シルバーは、不思議な盲目の老人ピューにひきとられ、灯台守の見習いとなった。夜ごとピューが語る、数奇な二重生活を送った牧師の物語に導かれ、やがてシルバーは真実の愛を求めて独り旅立つ…。〔2007年刊の再刊〕【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ジャネット・ウィンターソン
- 略歴
- 〈ジャネット・ウィンターソン〉1959年イギリスのマンチェスターに孤児として生まれる。様々な職業を転々としながら生計を立て独学でオクスフォード大学に入学。「オレンジだけが果物じゃない」でウィットブレッド賞受賞。
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紙の本
時を超えてつながる物語―「すべての灯台には物語がある」いや「すべての灯台が物語だった」
2011/10/08 15:22
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る
シルバーは、崖の上に斜めに突き刺さって建っている家に
母さんと住んでいた。
家の玄関までたどり着くのにも、
登山のパートナーみたいに互いの体をロープでしっかりと結んだ。
一歩足を滑らせれば、一巻の終わりだから。
父さんはいない。
「海からやって来て、また海に帰っていった」という。
シルバーは、「あんたは他の子とちょっとちがうから、
もしこの世界でやっていけないなら、自分で自分の世界を作ってしまうことよ」と言われて育った。
でも、それが、「わたし」のことだけじゃなくて、
本当は母さん自身のことなのだとちゃんとわかっていた。
ある日、母さんが落ちた。
孤児になったシルバーは、犬のドッグ=ジムとともに、
ケープ・ラス(怒りの岬)の灯台守であるピューに引き取られる。
ピューの一族は、「生まれながらにケープ・ラスの灯台守」で、
ピューは盲目だった。
「灯台守見習い」となったシルバーは、
ピューから灯台の歴史やお話を聴いて育つ。
-----
「器械の使い方だったら、わしは―わしでなくとも誰だって―
いくらでもお前さんに教えてやれる。灯は今と変わらずきっかり四秒に一回光るだろう。
だがな、お前さんに本当に教えてやらねばならんのは、光を絶やさないようにすることだ。
どういう意味か、わかるか?」
わたしはかぶりを振った。
「物語だ。それをお前さんは覚えなきゃならん。わしが知っているのも、わしが知らないものも」
「ピューが知らないものを、どうやって覚えればいいの?」
「自分で話すのさ」
(p.50)
-----
この物語のもうひとりの主人公は、バベル・ダーク。
ケープ・ラスに灯台を建てさせたジョサイア・ダークの息子。
-----
ピュー、どうしてあたしの母さんは父さんと結婚しなかったの?
ヒマがなかったのさ。来たと思ったら行っちまったからな。
バベル・ダークはどうしてモリーと結婚しなかったの?
モリーを疑ったからだ。人間、何があっても愛する相手を疑っちゃならん。
でも、相手の人が嘘をついてるかもしれないよ。
関係ないさ。自分が相手に真実でいることだ。
どういう意味?
他人の真実になることは誰にもできないが、自分は自分の真実でいられるからな。
じゃあ、あたしは何て言えばいいの?
どんなときにだね?
誰かを愛したとき。
そのとおりに言えばいい。
(p.90)
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シルバーは、ピューとのちょっとした問答から
大切なことを吸収していっているように思う。
そんな日々も終わりを告げてしまう。
灯台が無人化されることになったのだ。
光はコンピュータ制御になるという。
灯台が無人化されるその日、ピューは姿を消してしまう。
シルバーも灯台を出ていくのだった。
まるごとシルバーが読者に語る話とも読める本書は、
ピューがシルバーに語った物語であり、
シルバーが語るシルバー自身の物語でもある。
「ジキル博士とハイド氏」や「トリスタンとイゾルデ」も象徴的に登場する。
チャールズ・ダーウィンやロバート・ルイス・スティーヴンソンも。
物語は、順番には語られない。
バベルの物語とシルバーの物語は、
別の時代の話であっても、どこかつながっているようにも見える。
バベルの苦悩は、愛を信じることができなかったことにあり、
一方、シルバーは、いろいろなことがあったけれど、
根っこのところで愛を信じることができたのではないか。
誰もが自分を主人公とする物語を生きているけれど、
もしかすると、「わたしの物語」は、
百年前の誰かの物語とつながっているのかもしれない。