紙の本
イーガンの宇宙
2012/05/29 00:27
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:峰形 五介 - この投稿者のレビュー一覧を見る
SFは好きでも理系(に限ったことじゃないけど)の知識は皆無な私のような読者からすれば、グレッグ・イーガンは「面白いけど難しい」という作家だ。五冊目の日本オリジナル短編集である本書もあいかわらず難しい(『グローリー』の最初の数ページなんかもう……)。ただ、巻末の解説では「五冊中もっともハードSF色が強い」とあるが、前作『ひとりっ子』に比べると、判りやすい話が多いような気がする。
七本の収録作の中で一番のお勧めは『ワンの絨毯』。もっとも、これは長編『ディアスポラ』に組み込まれているので、オチを知っている人も多いだろう。
次点は表題作の『プランク・ダイヴ』。自分のコピーをブラックホールに突入させるという実験を描いた作品。コピーはブラックホールを内部から観察して様々な発見をするかもしれないが、最終的には押し潰されてしまう。もちろん、ブラックホールの中で発見したことを外側に伝えることもできない。自分しか知り得ず、他者には決して伝えられないこと――そんなものを求める行為に意味はあるのか? 舞台や道具立てはSFならではのものだが、このテーマは普遍的なものかもしれない。
イーガン版『フェッセンデンの宇宙』とも言える『クリスタルの夜』も良かった。人工知能を扱うことの倫理的問題についての作品だ。イーガンはロジカルな思考をする作家だが(いや、ロジカルな思考をするからこそ、か?)、人工知能の「命」をもてあそぶことは倫理に反すると考えているらしい。ちょっと意外だった。
紙の本
最先端のハードSF
2017/04/29 15:21
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投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る
「祈りの海」の次に読んだイーガンの短編集。
「祈りの海」に収録されている作品(『祈りの海』を除く)よりも個々の作品はページ数が多いですが、収録されている作品数が少ないので、一冊の総ページ数よりも少なくなっています。
イーガンの作品に読み慣れている方はあっという間に読めてしまうかもしれません。
しかし、個々の作品の内容は「祈りの海」よりかは難しくなっている(科学的に)ので、初めてイーガンの作品を読む方は面食らうかもしれません。
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「暗黒整数」は、他で読んだ記憶がある。
「プランク・ダイブ」はまったくわからんかったw
一番面白かったのは「クリスタルの夜」かな。
人工知能の創造と結末だったが、実にイーガンらしいと思った。
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まず人類が肉体をもっているか
持っているなら分かる(分かり易い)
そして何をしたいかは、大体分かる。
肉体を持っていない場合、どんな存在なのか想像するために
筆者の世界に追いつくためにアタマを使う。
で!何が起こっているのか。これを理解するのに骨が折れる。
そして理解ができない。
しかし、数学、理屈、専門用語に置き去りにされても
なんとなく飛ばしても発想と物語に結び付けられた世界には
「なんだか」すごい、未来の世界が鮮やかに映る。
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お待ちかね、イーガンの新作。うーん、なんともハード。最初の短編集「祈りの海」でイーガンファンとなった文系人間にはちょっと(かなり)つらい。「祈りの海」は、ガチガチのSFファンからは「どこがSF?」という声もあったらしいが、私にとってはこれぞSF、繰り返し読み返して全く飽きない。
本作は極めつけのハードSFがずらっと並んでいる。表題作はあまり理解できなかった。第二短編集「ひとりっ子」所収の数学SF「ルミナス」の続編に当たる「暗黒整数」(なんて魅惑的なタイトル!)に至ってはほとんどわからなかった。それでもやっぱり、立ち上る知的でクールな雰囲気がいいんだな。
なんといっても素晴らしいのが「ワンの絨毯」だ。SFマガジンに載ったとき読んで、「何これ!よくわからんけど、なんかすごい!」と虜になった。この短篇を核にして書かれた長編「ディアスポラ」を苦労して苦労して読み通し、そのあまりに壮大なビジョンに心底恐れ入ってしまった。今回短篇バージョンをあらためて読んで、やっぱりこの世界は空前絶後だと思う。人間存在というものを根本から考えさせる一編。これからもきっと繰り返し読むことだろう。
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クリスタルの中で進化を恣意的に歪められた生命のエクソダス。『結晶星団』じゃないよ、この本収録の『クリスタルの夜』。
解説で大野万紀氏が「小松作品と共通する方向性がイーガンにある」と書いているので、こう説明してみました。
でも、一番小松作品に近いのは、表題作の『プランク・ダイヴ』だと思います。
『グローリー』や『伝播』は小松SFより星野之宣が思い浮かんだ。
相変わらず数学や物理の部分はほぼ理解できない……3回読んで(Googleさんの多大な助力をいただき)やっとイメージができる私は思いっきり文系。
イカックという人名が出てきたので「イカ娘」を思い浮かべたのは内緒だ。
しかも「出身はオルフェイス、得意なのはオルタナティブ数学でゲソ! 」と腰に手を当ててレモンのテーブルの上で高らかに宣言する姿まで想像したとあっては……(゚∀゚)
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冒頭の2編は余裕で楽しめたが、どうやら「暗黒整数」で調子を崩されたらしく、後はガタガタ(いや作品がではなく、こちらが)。凄いんだろうなあ、と指を咥えつつ、文字の羅列を目で追っていくのみの状態に。出直してまいります。
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「クリスタルの夜」「エキストラ」「暗黒整数」「ワンの絨毯」「プランク・ダイヴ」が良かった。「グローリー」「伝播」以外が良かったと言えば早いな。感想書くには疲れたぞ。頭いっぱい使った。
大野万紀さんの手による、京フェス2011レポート「プランク・ダイヴを語る部屋」の項の読み方が非常に参考になった。メモとして記す
http://www.asahi-net.or.jp/~li7m-oon/thatta01/that282/kyofesu.htm
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非常に難解なSF。短編集だが、1編毎にクローンであったり、地球外生命であったり色々なストーリーが展開される。どれも難しいため読むのに苦労するが、面白い。ただ読むのに時間がかかった。
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少し苦手なイーガン作品。今回は特にハードなSFが7編。「クリスタルの夜、エキストラ、暗黒整数、グローリー、ワンの絨毯、プランク・ダイヴ、伝播」だ。ハードSFが好きな私だが、やはり難解だ。
難解の理由は科学的知識による部分が大きいが、やはり日本語訳の困難さにもよるだろう。訳者が悪いわけではないのだが、やはり訳がピンとこないのである。
じっくりと読めば理解できるのかもしれないが、通勤電車の合間に読むとやはり遅々として進まない。時間がある時にでも再読することにして今回は終わることにした。
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短編7編が収められている。
イーガンの理屈っぽいSFは好きではあるが、本作はちょっと歯ごたえがありすぎ。恒星間旅行のために、生体情報を全てデジタル化して光速に近い速度で飛ばし、現地で再アセンブルする技術などについての説明っぽい部分がものすごく多くて、小説としての部分が少なめ。これまでの短編集のようなつもりで読み始めるとちょっと骨が折れる。
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既読の『宇宙消失』と積読の『万物理論』、そして本書が今の処、私にとってイーガンの全てである。量子論的ハードボイルドとも言える前作も目眩く物語であったが、題名に反し宇宙が舞台でなかったのが玉に瑕。今回は宇宙満載で大満足!前提知識がなければ読めないガチなハードSFは文学ではないとする向きもあるが、歴史小説であれ詩や哲学であれ、そのジャンルの言葉の上に築かれるのは同じこと。但、表題作『プランク・ダイヴ』は要再挑戦。いくら内容が良くても読了即ブックオフ行きの本もあるが、本書は手元に置いておくべき類のものであろう。
個々の作品については別途呟いています。^^
旧正連休読書第二弾!帯にある「SFの最先端の、その先へ!」煽り文句の通り、ガチガチのハードSF。読むのに体力がいりそうなので休日読書に最適か?^^;
第1編『クリスタルの夜』読了。AI生命と世界創造に宇宙論を絡ませた話で、なかなか面白い。これから段々難解になって行くのだろうか?
第2編『エキストラ』 脳だけが意識の源泉かという古いテーマを扱った作品。予想に反して今のところ非常に読みやすい。
第3話『暗黒整数』。数学SFの『ルミナス』の続編。本編だけでも充分楽しめるが10年前の事件が何度も言及され凄く気になる。最新の宇宙論ではあらゆる数理的構造に対応した宇宙が存在しそこでは物理法則までが宇宙によって異なるという。勿論あちらの世界のサムが電話を掛けて来たりはしないが^^
第4話『グローリー』。反物質と恒星、惑星を工場代わり使って11年もかけ多数のナノマシンを作ると言う壮大かつ何がなんだか分らない幕開け。しかも、これが本編にあんまり関係がない。007のオープニングみたいなものと思えばよい。内容も今一ピンと来なかった。^^;
第5話『ワンの絨毯』これは面白い。著者本全巻読破したくなった。やっぱりハードSFの王道は地球外生命探査。「宇宙が人間に適しているのは、そうでなければ人間は宇宙を観測し得ないから」という宇宙論の中で最も不可解な人間原理がテーマになっている。因みに私は主人公達と同様に物質宇宙重視派。
第6話 表題作『プランク・ダイヴ』。難解だ!難解だ!と言われるけど結構わかるじゃんと思ってここまで読んできたけど、これは難しい。出だしは量子の詩だと思って楽しんだがダイブ後のブルクホール内での議論は珍粉漢粉...+_+ 真理の探究の為、帰らざる橋を渡るって設定は大好きなんだけど。
最終話『伝播』諦観と希望がない交ぜになったなった透明な読後感。人間の意識をソフトウェア化する話が出てくる。SFにはよく出てくる話題ではあるが脳機能を完全にコピーできたとして、果たしてそこに意識が宿るのであろうか?大金を投じ自分のクローンを作ろうとする大金持ちの話を聞くたびに思う。
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イーガンのSFはそもそもが「ハード」だけど、この短篇集は、そのハードな題材を読者が既に何冊か読んでいる事を前提に、それらの内容をさらに拡張した「続編物」が殆どなので、もしイーガンの本で初めて手に取ったのがこれだったら多分殆どチンプンカンプンだろう。
例えば、表題作の「プランク・ダイヴ」では、自分のアイデンティティを電子化してコンピュータ上で動作するソフトウェアとなった人間達が、ブラックホールへ落ち込む物質が「経験」すると思われる無限の時間を活用するために、ブラックホールへ「ソフトウェアの自我」を撃ち込むことで、そこでの時間と経験を元に宇宙の最終構造を明らかにする・・・なんて話だが、まあたぶん普通は意味が分からないだろう。
中には比較的分かりやすい話もあるけど、大体がこんな感じ。
しかしそのあたりは何作かイーガンの本を読んでいれば、ああこのネタの再利用か、みたいな感じで読み進めて行ける。そして、そこで本当に伝えようとしているテーマについて思い巡らせる余裕ができると、すごく深い作品ばかりでなんとも言えないロマンのような余韻を感じられる秀作ばかりだと思う。
特に最後の「伝播」は、短篇集の終わりという位置づけも良い配置で、「フロンティアを失った唯一の世代」である現代人が意識しているにしろしていないにしろ、渇望している「未開の地」という夢を思い出させてくれる。
作品も最近になってだんだん円熟味を増してきた気がする。
やっぱり好きだなあ。イーガンのSFは。
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レビュー書き忘れていました。
現代SF業界ではナンバーワンのグレッグイーガンの短編集。
恥ずかしながら、きちんと彼の作品を読んだのは初めてでした。
確かに、緻密な設定と奇想天外なアイデアで、魅力的な作品が多かった。ハードSF好きならば高評価になるであろう。私も楽しく読めたが、作品によってはあまりにもサイエンスの部分が難解でついていけないところも。皆さん、ついていけているのだろうか?私も、宇宙物理学的なところになると厳しいのだけど、皆さんはどうなのだろうか?
この手の作品は、現在での厳然たる科学と、それを逸脱したそれらしいホラが、一体となってとんでもない事件を巻き起こすところが一番面白い。この境界線が見えなくなっちゃうと、面白さも半減してしまうのだと思う。
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やはり、難しいイーガン。
基本的には、人間の存在について問いかけてるのだが、科学的事象についての記述が難解なので、
すんなりと頭に入って来ない…。
その為、ストーリーがどうしても薄れてしまう印象にあるが、それでもそれぞれの短編は面白い。
特に、クリスタルの夜、暗黒整数、ワンの絨毯は
オススメ。