「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
文章の自動生成装置を発明し、突飛な素材で自在に文章を生み出す叔父と、その姪の物語「これはペンです」(芥川賞候補作)。存在しない街を克明に幻視し、現実・夢・記憶の世界を行き来する父と、その息子を描く「良い夜を持っている」。書くこと、読むことの根源を照らし出し、言葉と人々を包み込む2つの物語。【「BOOK」データベースの商品解説】
文章の自動生成装置を発明し、突飛な素材で自在に文章を生み出す叔父とその姪を描いた表題作と、存在しない街で現実・夢・記憶の世界を行き来する父と息子の物語「良い夜を持っている」を収録。『新潮』掲載を書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
これはペンです | 5−92 | |
---|---|---|
良い夜を持っている | 93−173 |
著者紹介
円城 塔
- 略歴
- 〈円城塔〉1972年北海道生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2007年「オブ・ザ・ベースボール」で文學界新人賞、「烏有此譚」で野間文芸新人賞を受賞。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
ヘンな叔父さん♪
2011/12/03 17:46
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
「これはペンです」と「良い夜を持っている」の2編からなる。
どちらも少々、難儀な肉親を描こうとする物語。
「これはペンです」では姪が叔父を、「良い夜を持っている」は、その叔父が自分の父親について描いている。
ただし、描こうとしている当人の内面に迫ろう、としているのではなく、客観的に分析しようとしているかのようだ。
意地の悪い例えになってしまうかもしれないが、サルの群れの中の特定のサルの行動を追っているかのよう。
どちらの話でも具体的な人物の名前は出ず、「姪」「叔父」「父」「母」としか呼ばれない。
そういう点からも普通の小説、というより論文でも読んでいる感じがする。
「これはペンです」に出てくる叔父は、本の中の表現を借りれば「書く動機を欠き、書く方法だけを探し続ける」
(一見、意味があるようで、まるで意味がない)論文を自動生成するプログラムを作ったり、ケガをしたらしたで、自分の血をインク代わりに
手紙を書いたり、と捉えどころがない。
様々な手段で書く事により、それらの中に自分自身が現れてくるのでは、と信じているようだ。
そして、姪は、それより早く叔父を見出そうとしている。
やっていることからすると、この叔父は天才なのだが、自分の肉親にはいてほしくないタイプ。
離れた所から観察する分には面白いかもしれないが、近くにいると迷惑な気がする。
「良い夜を持っている」は「これはペンです」に出てきた叔父が主人公。
ある教授が父親の症候群を研究した結果をまとめた本を自分(叔父)なりに「翻訳」して、父親を描こうとしている。
叔父が描こうとしている父親は、異常な記憶力の持ち主。ただ、その記憶の方法は、一般人とはかなり異なっており、時系列がゴチャゴチャだったりする。
会社員として、普通の会社では仕事はできないが、子供の面倒を見たりなど、親として役割は(おおむねだが)果たす事はできる。
叔父は意図的に奇妙な行動をしているが、父親は自分にしてみれば、ごく当たり前の行動をしているだけで罪はないが、近くにいたら扱いにくいという点では変わらない。
この父親にして、この子供あり、というところだろうか。
紙の本
著者コメント
2011/09/29 21:01
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:円城 塔 - この投稿者のレビュー一覧を見る
■わりと本当のことを書いているのだけれど、信用がない。
■『これはペンです』は、変な叔父さんから手紙が届き続ける話で、すると当然、念頭には『行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙』があったりしたのだけれど、あまり似ていない。似てしまっても困る。
元ネタを思い出そうとしても、あちこちで耳に挟んだり、これといった特定が難しいものばかりの気がする。『みんなが手話で話した島』のヴィンヤード島の話はよく書いてしまう。
作中、DNAを出したりもしたが、正直なところ現代生物学の急速な進展にはついていけずにいる。『カラー図解アメリカ版大学生物学の教科書』第1巻、第2巻、第3巻あたりが、北米大学生の人文理数を問わない教養的教科書だそうだけれど、大変だ。
■併録の『良い夜を持っている』については多少ある。『レインマン』かと言われることが多いのだけれど、それよりは、『偉大な記憶力の物語 ある記憶術者の精神生活』、『忘れられない脳 記憶の檻に閉じ込められた私』の影響が大きい。
"父"の彷徨う記憶の街は、Gilles Trehinの『Urville』(Jessica Kingsley Pub)を参考にした。どこからみつけてきたかというと、これもまた別のネタ本、『天才が語るサヴァン、アスペルガー、共感覚の世界』に出てきたのである。『ぼくには数字が風景に見える』の著者でもあるタメット氏の著作は貴重だ。
超記憶力と記憶術、後者についてはとりあえず、『記憶術』や 『記憶術と書物 中世ヨーロッパの情報文化』も参照のこと。
"父"の使う、記号のかわいいAPLは、『言語設計者たちが考えること』などを。『情報理論』と多少混ぜたところもあるのだけれど、このテーマはまた機会があれば。
■両作を書いたあとに読んだ本だが、『パラドクシア・エピデミカ ルネサンスにおけるパラドックスの伝統』が、どうも自分の気質に近い気がする。
■と、当然本書は多数の本の結び目として浮かんでいて、せめても多くの本への入口になってくれればとまで。
紙の本
理解しきれないけれど好きです
2018/05/02 14:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
中編二つからなる作品。
「これはペンです」は円城塔氏のいくつかの作品で繰り返し語られる主題である文章の自動生成について。
「良い夜を持っている」は記憶と意識の物語と読みました。
学生の頃は記憶力の良い人に憧れていたけれど、この作品の主人公のように超記憶力を持っていて何事も忘れることができないと言うのも、想像以上に辛いことなのかもしれませんね。
円城塔氏は好きな作家さんですが、書かれていることの半分も自分が理解できているか自信はありません。
ただ、理解している、していないを超えて読んでいるとただただ心地良く感じるので、理屈ではなく感覚として好んでいるのだと思ってます。
紙の本
映像化不可能?
2012/01/24 09:21
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
「叔父は文字だ。」で始まる奇妙な物語。
姪による叔父探しの物語かと思って読んでいくと、裏切られます。
文章を生み出す叔父を、文章にするところが斬新な発想ですね。
2012年「道化師の蝶」で芥川賞をとった著者には、小説の新たな可能性を追求していってほしいです。
紙の本
言語実験小説
2015/08/22 19:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作には「これはペンです」と「良い夜を持っている」の中篇2作品が収録されています。中篇といえど、円城塔作品らしく言葉を使った実験的な文章で構成されているため難解です。
「これはペンです」に登場する「論文を自動生成するプログラム」や「自動生成された論文を判定するプログラム」にまつわるストーリーは、理系の読書はニヤニヤしながら読んでしまうと思います…(笑)
個人的には表題作の方が好みでしたが、収録されている2作品はつながりがあるので、続けて読むことをおススメします。