紙の本
前へ!―ドラマな実話
2012/02/02 15:19
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
コシノヒロコ、ジュンコ、ミチコといえば、今や世界に名を轟かせるファッション・デザイナー三姉妹である。意識しなくてもたまたま買ったものが彼女たちのブランドだったりする。
この三姉妹の母親の綾子さんがまた、とんでもない女傑なのだった。
その一代記をドラマにしたのが、NHK朝ドラ『カーネーション』である。
これが面白い。
ふだんはあまり関心がないのに、録画して全部見ている。
渡辺あやさんの脚本もいいし、主演の尾野真千子さんはじめ、役者の演技もいい。
あんまり面白いので、どこまで実話なのか、もともとの小篠綾子さんはどんな人なのか、知りたくなった。
で、本を探してみるとたくさんある。
私が知らなかっただけで、その筋では既に有名な人らしく、
2006年に92歳でなくなったが、テレビのインタビューなどにもけっこう出ていたらしい。
私が選んだこの1冊は、総合的に人生を振り返っている本で、
前に書かかれた『やんちゃくれ』を88歳のときに再編集したものだとか。
プロのライターではないから、文章に特別の味わいがあるとかいうわけではないが、
なかなかどうして巧みな表現力で、しっかり自分の考えを伝えられる人である。読みやすい。
しかし何といっても驚くべきは、その内容であろう。
事実は小説より奇なりとはよくいったもので、綾子さんの人生はそのままドラマである。
ここに書いてある内容は、多少の演出は加えられているにしても、ほとんどそのままドラマに使われている。
自分の好きな道をみつけて突進する少女時代、戦中戦後の苦しい時代、恋と子育て。波乱万丈である。
この時代を生き抜いた人生には、人に知られなくてもドラマチックなものが少なくないという気がするが、
その中でもこれだけ力強い生き方はそうあるものではあるまい。
それが娘たちの華やかな活躍のおかげで広く世に知られるようになったのは、我々読者の僥倖でもあろう。
何しろ強烈な個性の軌跡だから、誰もが読んで喜ぶというわけにはいかないかもしれないが、
ひとつの興味深い人生の記録であることは否定しようがない。
何よりも、好きなことをやる、それもとことんやるという徹底ぶり、
常に、前へ、上へ、と向かうエネルギーがすごい。
それは娘たちにも受け継がれていくわけで、その辺を描いた結末部は感動的である。
気持ちよく読み終えることができた。
紙の本
面白かったです
2022/04/01 12:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:iha - この投稿者のレビュー一覧を見る
NHK連続テレビ小説カーネーションを見ていなければ、この本を手に取る事は無かっただろうと思います。ひとつひとつのエピソードがドラマの内容と重なりました。
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『カーネーション』、スタート!
ヒロコ、ジュンコ、ミチコの三姉妹デザイナーの母・綾子による自伝。
…とはいえ、恐らく聞き取りをライターが起こしただけと思われ、痛快な人生の魅力に惹かれてグイグイ読んではしまうものの、文章自体は平板で奥行きは期待できません。
その逆に、この『カーネーション』からいよいよ朝の連ドラにもフィルム撮影が採用されたようで、ドラマの方は(朝っぱらからムダなほど)グンと奥行きが増しています。
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次女を妊娠中にNHKのこだわり人物伝で知り、一目(?)でファンになった女性。
気になってはいたが、頭の中に留めるのみで、伝記等に触れることはなかった。
今月のある日、今放送中の連続テレビ小説「カーネーション」のモデルが彼女であることを知り、びっくり。彼女への好奇心に火がついた。
結果、amazonで早速注文した次第。
周囲がなんといおうと、自分の思うとおりに生き、恋をし、働き、遊んだ女性。
男尊女卑の風潮がまだまだ強い昭和の空気の中、今でいうワーキングウーマン、ワーキングマザーの道をひたすら突っ走る。
父との関係、夫とのこと、恋の話・・どれも興味深いが、私の興味をもっとも引いたのは子育てに関することだった。
彼女の3人の娘は、いずれも世界的なデザイナーになったが、そのための特別な教育は一切しなかった。
ただひたすら生活と遊びのためにミシンを踏み、接客をし、商品を売り、再び仕入れる毎日。
別の雑誌で目にしたことだが、めざし一本ポンと焼いて、あとは自分で勝手に食べなさい、という場面も珍しくなかったらしい。
生まれたばかりの子供を早々に父母や叔父に預けたり、
不倫相手との同棲生活のために子供と居を別にしたり・・と、
教育評論家が目くじらたてそうな事実の連続だが、
「子供には何もしれやれなかった」という彼女が唯一、誰よりも優れていたのが「子供を尊重し、信じること」であった。
長女ヒロコが進路に迷い、次女ジュンコが周囲の反発にうちひしがれ、三女ミチコが留学先のロンドンで貧窮しても、一切口も手も出さない。
ただただひたすら、見守るだけだった。
なぜなら「この子の人生だから、この子が決めてどうにかするもの」。
そして「この子ならできると信じていた」。
将来のためにはあれがいい、これがいい・・と盛んに育児論・教育論が騒がれる昨今だが、肝心要の「子を尊重し、信じること」をどれだけの親ができていることだろうか。
母親神話や三歳児神話など全部ぶっとばしてわが道を進むその豪快な人生に、私は親として一番見落としがちでもっとも大事なことを教わったように感じた。
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2012.3.1~7 読了
パッチ屋修行、父から突き放された独り立ち、父の揮発油火傷事件と旅先での死などTVドラマはほぼ原作に忠実なことがわかる。ミチコは本当に軟式庭球で日本一になったんだ!さすがにTVでは不倫内容などはぼかしているが・・・女性がおかれていた時代背景を考えれば破天荒というか、世間や常識に惑わされずに我が道を貫いたエネルギーは凄まじい。こういう人がもっと現れていれば日本社会ももっと違ったものになってたはずだ。
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「カーネーション」にはまり、気になって読み始めた小篠綾子の自伝。
裁縫に出会い、ミシンに出会い、洋服づくりへと一直線に突き進んでいく姿はドラマ同様に痛快。そして、再確認したのは父の娘への、愛情ゆえの厳しさ。まるで、女版「巨人の星」のようだ。
父は、「薄情も情のうち」と言っていたそうだが、それも
大きな愛あっての薄情。子どもの可能性を信じる、子ども自身の力を引き出すためにも、こんな大きな愛で子どもを育てていかなくてはいけないと思った。
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ドラマ「カーネーション」を毎日楽しみに見ています。
主人公・糸子は実在の人物をモデルにしてると知って、読んでみることにしました。
結婚して男性のために尽くすことが一番の幸せとされていた時代に、男の人と同じように仕事をして「女にしか出来ないことをする!」という思いで洋装店を立ち上げ、三人の娘も世界的に有名なデザイナーになりました。
小篠さんの才能・センス・服が好きという気持ちを感じるエピソードがたくさんありました。
仕事も恋愛も子育てもやるときは徹底する、という考え方。
本には書かれていない苦労もたくさんあったんだろうなぁと思います。
これからドラマの方で「糸ちゃんの人生」をどう描いていくのかも楽しみです。
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朝ドラ「カーネーション」に興味を持ち、本書を手に取りました。
その人生は本当に波乱万丈というか、あの厳しい状況下でよくぞ
自分の意思を曲げることなく、思う通りの道を突き進めたものだと
感心しました。
肝っ玉かあちゃんという言葉が正にピッタリの人でした。
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NHK朝ドラの『カーネーション』にハマッてる人も多いのではないでしょうか。
男の自分にはあまりピンとこなかったというか知らなかったコシノ3姉妹。
3人が3人とも服のデザイナーで超有名な方らしいですね。
で、そのためなのかさ3姉妹の母でこの本の著者の小篠綾子さんは『どうやってあんなに育てたの?』とたびたび人に聞かれるみたいですね。
育てたなんて言えたもんじゃないですよ、むしろ母親としては失格くらいで、
“ただ親である私の生き様を見せただけさ”
みたいなカッコよくて本当にパワフルな方です。
もうお亡くなりになられたらしいのですがこの時代の女性にはまずありえないでしょう。この小篠綾子さんて女性・・・すさまじいエネルギー持ってます。
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カーネーションにはまって、読んでみた。
カーネーションの印象がものすごくあるところから読んだので、あ、ここはドラマと違うんだなとか、そういう見方になってしまって本単品の評価はできないけど、ドラマを先に見ていたからこそお父ちゃんとのやりとりの部分とかはその映像が思い浮かんで、ついのめりこんで読んでしまった。
ドラマを見ていても思うことだけど、本を読んで改めて感じたのは、自分の人生に対する自分の責任っていうものがあって、それは子供とか大人とかは関係なくて多分人としてみんながそれを負っているんだなということ。
だから「やりたいことを決めるのは親じゃなくて自分自身」とか、「決めたんやったらやりきり」とか、そういうところがすごく響いた。で、始終そういう考えで一貫されているところが気持ちよく感じた。
ドラマの中で一番響いてるのは、優子が進路に悩んでるときに糸子が「自分で考え」って突き放すところ。ドラマはドラマ、この本はこの本で状況とかは若干違ってたけど、本の中にもやっぱりこの考えが根本にある感じがして、よかった。
またドラマを改めて一から見たくなりました。
ちなみにドラマはフィクションになってたからまだ見やすくなっていたけど、実際は結構ドロドロな感じなこともあったんですね…。
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カーネーションが面白すぎて買ってみた。戦後を生き抜いた世代の人はパワフルだが、その一つ上の世代の人は本当に苦難だらけの人生だった気がする。「4姉妹」を支えていた周りの人はえらいなあと思っていつもドラマを見ているのですが、その辺がこの本にはどう出てくるのか。。
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巷でカーネーションがえらく好評のようなので、読んでみた。
なるほど、パワーにあふれた女性だったのだなぁと。面白かったです。
が、まあまあ当然の事ながら文章はイマイチだよね。(小説では無いと分かってはいるのだけど...味わいが足りないと思ってしまった。)
それにつけても、ミチコロンドンの苦労がどんなもんだったか!!逆に子供達の物語も興味出てきちゃった。
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父親とのエピソードのほうが、娘たちとのそれより数倍おもしろい。男兄弟がいなかったとはいえ、この時代に、父親にここまで期待させてしまう娘ってすごい。先に「カーネーション」を見ていたので、「へー、あのエピソードは実話だったんだ!」というふうに楽しめました。
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毎朝これを楽しみに起きていた、NHK朝の連続テレビ小説の「カーネーション」。
内容から、ほぼこちらが原作と言ってよいと思います。
テレビでは、NHKの朝の番組としては、不倫の関係をつまびらかにできなかったのか、周防さんと北村さんという男性が、なんとなくそれを表現している感じでしたが、原作を読んで納得。
これを読むと、テレビでの表現はよく頑張ったと思う。
テレビはディーテールを楽しめましたが、本は小篠綾子という女性の生き方、考え方の本質を感じることが出来ました。
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「小篠さん、電報!」
という声が柱時計の音とともに飛び込んで来ました。
それは父の危篤の知らせでした。父は列車の中で急に元気になり、一緒に行った人たちを驚かせていたのですが、調子に乗ってお酒を飲んでいるうちに急に倒れたらしいのです。
私はともかく、父と仲のよかったタバコ屋の大塚さんにそのことを知らせようと走って行きました。大塚さんの家は早朝にもかかわらず、玄関の戸が開いていました。
「おっちゃん、えらいことですねん。ちょっとこれ見て下さい」
と電報を見せようとすると、娘のみっちゃんが顔を出して、
「あっ、綾ちゃん。おっちゃん迎えにきたん。おっちゃんなら今帰らはったよ」
「何言うてるの。お父ちゃんは今危篤なんよ」
「そんなことあらへん」
と彼女は笑い出しました。
「その戸、開いていたやろ。うち、今、おっちゃんを送って行ったところやもん。おっちゃんな、朝一番の列車で温泉から戻ってきたところやなんて。綾子にこんな純毛ずくめの服着せられて、楽しかったと喜んではったわ。それに別れしなに、綾子を頼みまっさ、綾子を頼みまっさと何べんも言うてはった」
私は狐に包まれた思いで、国民服に酒の入った水筒を肩にかけた父が、 まだその辺りをうろうろしているような気がして探し回りましたが、出会うことはありませんでした。(160p)
朝ドラ「カーネーション」が終わってずいぶんとたった。原作本のこれは、実は二月には読み終わっていたのであるが、車の隅に隠れてしまってこれまで感想を書けないでいた。
読んで驚いた。
流石本人綾子さんが自ら「私を朝ドラのヒロインに」と、主張していただけはある。よくできているなあと思っていたエピソードのあれもこれも、実際にあった(或は本人が思っている)ことだったのである。一番ビックリしたのが冒頭に書き写したエピソードである。国民服もお酒の水筒も、父の幽霊も、ホントにあったのだ。と同時に、渡辺あやの見事な脚色にも唸った。
渡辺あやは微妙に原作の中味を変えている。綾子さんにとり、父親の存在がいかに大きかったか、というのは、大きく膨らませ、「Tさん」(周防さんのこと)との恋の部分は細かな設定を変えている。そもそも原作は関西弁を喋っている。私が「TVドラマ向きだ」と想像していた三女ミチコがロンドンに行ったときのエピソードはバッサリ省かれてしまった。後に綾子さんがロンドンへ十七個もの荷物を持って励ましに行ったときに、本当はミチコは気持が潰れかけていたが、素知らぬ顔で帰国したという。「このときの経験があったから頑張れた」とのちにミチコは語っている。
父親に顔を殴られて「これが男の力だ」と言われたのは、実際にあったが、散髪屋のおばちゃんから「今の勘助にあんたの図太さは毒や」と云われたエピソードは、その息子のことを含めて脚本家の創作だった。Tさんをめぐる家族会議でヒロコがハッキリ「お母ちゃんは悪くない」と味方したのは事実だけど、北村は創作上の人物。
女だけれども、女しか出来ない「だんじり」を担ぎ、一家の大黒柱として生き、親の背中を見て子は育つを��践し、岸和田でいい女振りで生き抜いた一生は、この本からも十分伝わって来ました。