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商品説明
呑んだ、愛した、闘った!九州大牟田・三池炭鉱。故郷を深く愛する一人の警官の人生を軸に、昭和三十五年から現在に至る、熱き男たちの生き様を描ききる。【「BOOK」データベースの商品解説】
【吉川英治文学新人賞(第33回)】【日本冒険小説協会大賞(第30回)】呑んだ、愛した、闘った! 九州大牟田・三池炭鉱。故郷を深く愛するひとりの警官の人生を軸に、昭和35年から現在に至る熱き男たちの生き様を描く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
西村 健
- 略歴
- 〈西村健〉1965年福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。労働省に入省の後、フリーライターに。96年「ビンゴ」で作家デビュー。「劫火」「残火」で日本冒険小説協会大賞を受賞。
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紙の本
炭鉱の町で起こったこと、生きること
2012/03/21 16:32
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
三井三池炭鉱の戦後史をなぞりながら
そこで働く人々、町の人々を
警官である猿渡鉄男を通して描く。
863ページ二段組みの超大作。
戦後、日本復興のエネルギー源として
あるいは戦前の負の遺産として
様々な大事故を起こし人々を苦しめる働き場として
あるいは貴重な収入源として、
炭鉱の担ってきた歴史をひしひしと感じる。
しかし、本書の大筋は炭鉱史ではなく
三池の警官鉄男が様々な事件を解決し
そこで触れ合う町の人々、
また小学生のころからの友人・白川、菅、
櫟園(いちぞの)を克明に活写する。
新人刑事として、数年後、若手のホープとして、
そして離婚、左遷と人生の山坂を越えながら
実は一本、父親の謎の死に迫る軸をとらえる。
二つの労働組合が反目する炭鉱の町で
鉄男の父親はどちらの組合人にも平等に接し
温情で持っていざこざを収めてきた。
若くして死し、その息子が警官になると
その生前の徳によって、鉄男は何度も助けられる。
そして彼自身の警官になった理由、
負っている何かが徐々に明らかになる。
この理由が今ひとつ納得しがたいものではあり
それが大きな不満であり
ラストの大きな謎の解決には驚きもしたし
この一家は何なんだろうと首をひねった。
父親がただのいい人だったというよりもいいけれど。
でも炭鉱事故でCO中毒となった気の毒な人々、
とりわけ江藤のおっちゃん、
そして流れ者のヒカっしゃんなど
歴史の表舞台にも出ず、主人公にもならない人々が忘れがたい。
彼らと接する鉄男の人生もまた、悪くないと思えてくる。
余談だが、出てくるバーの趣味がどれもいい。
また炭鉱、有明海、田舎の人々の蜜な繋がり、
幼馴染との絆。
社会的な問題点や人情物語をはらみ
一筋縄ではくくれない。
長編にしなくてはならない理由がよくわかる。