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忘れられる過去 (朝日文庫)
著者 荒川 洋治 (著)
鋭い批評精神とやわらかいユーモアの光る、傑作随筆全七四編。講談社エッセイ賞受賞作品。【「BOOK」データベースの商品解説】【講談社エッセイ賞(第20回)】【「TRC MA...
忘れられる過去 (朝日文庫)
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商品説明
鋭い批評精神とやわらかいユーモアの光る、傑作随筆全七四編。講談社エッセイ賞受賞作品。【「BOOK」データベースの商品解説】
【講談社エッセイ賞(第20回)】【「TRC MARC」の商品解説】
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そうだった、時間って、こういうふうに流れるものだった。
2012/03/13 13:44
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アヴォカド - この投稿者のレビュー一覧を見る
本についてや生活についての文章が多いけれど、しかし読んでいると、何よりも時間について思いを致すことになるような気がする。
解説で川上弘美さんも書いていたらしたが、例えば「芥川龍之介の外出」。芥川の年譜をもとに、人の家を訪ねた芥川が、その家の主にどれくらいの率で会えたかを、荒川さんは丁寧に調べる。
そうだよなあ、芥川の時代にはメールももちろん電話だって一般家庭にはないのだから、人に何か用があれば会いに行くわけだよなあということに今さらのように気付く。相手がいるかいないかは行ってみないとわからないのに、それでも行って、いなければいないで待たせてもらったり、一旦帰ってあらためたり。
人と話す、人に伝える、というのは、そういう情熱の必要な、濃密なものだったのだ。
メールや電話で繋がっている現在は、いつでも連絡がとれて便利なような、いつも繋がっているような錯覚を起こすけれど、連絡がとれる分、会わずに済んでしまう。
人と話すこと、伝えることに、芥川ほどの情熱は要らなくなった。
荒川さんの文章は全体に先を急がず、要点やあらすじにのみ重きを置いていない、と感じる。時間がゆったりとそしてしっかりと流れ、だから、時間ってこういうふうに流れるものだったよなあ、と考えてしまうのかもしれない。
「メール」という短い文章もよかった。
初めて、メールをやってみようという気になって、設定に取り組む。「さっぱり意味がわからない」「ちがう星のコトバかと思われた」「途中で何度も死にそうになった」とさんざん悪戦苦闘して、メールが出来るようになった時のこと。簡潔にして、苦労と喜びが伝わる。
気になるというより、いいなと思うことがいろいろあって、付箋をペタペタとたくさん貼った。よかった。